子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても大丈夫！

壮年期 35

「…おっ！やったぜ！」

…最下層のボスのフロアへと行くと分身の俺が最初に予想していた目的の魔物の姿が見え、分身の俺は喜びながらガッツポーズする。

「…アレが『ジェネラル』か…確かに身に纏っている鎧や兜といった防具から雰囲気から…明らかに今までのヤツとは格が違う」

「ヘレネー、コッチへ。私達は部屋の隅に居ないと、この距離じゃ巻き込まれてしまうので」

分身の女性が魔物を見て緊張した様子で呟くと分身のお姉さんが気を利かせ、直ぐに安全な場所へと移動しようと分身の女性を手招きしながら呼ぶ。

「…この距離でかい？」

「はい。見てたら嫌でも分かります。坊ちゃんの邪魔にならないよう避難しましょう」

「…分かった」

分身の女性は不思議そうに確認するも分身のお姉さんの返答に肯定して部屋の隅へと移動した。

「さて、俺も引きつけないとな」

分身の俺は魔物の間合いに入らないよう一定の距離を測りながら分身の二人が見える位置に移動して魔物に近づき、魔物が威嚇の体勢を取ったところで一旦後ろに下がる。

「…あんなに離れる必要が？」

「見てれば直ぐに分かります…と言いたいところですが、あの魔物は召喚技を使うんですよ」

「召喚技…」

分身の女性は分身の俺の行動を見て怪訝そうな顔で尋ね、分身のお姉さんが理由を話すも分身の女性は考えるように呟く。

「あの身の丈ほどの大きな大剣を上に掲げる、あるいは地面に突き刺すと地面からスケルトン達が湧き出てきます。なのでこれぐらい距離を取らないと私達も取り巻きの魔物達の標的になってしまいます」

「…なるほど」

分身のお姉さんが魔物の行動と召喚技、そして距離を取って理由を話すと分身の女性は納得したような反応を見せた。

「オオォォ…！」

「ほお。早速か」

魔物が大剣を高々と掲げるように上げると地面から10体ほどの骨の兵士達が湧き出て来る。

「！なるほど…！」

分身の俺が一気に魔物達に囲まれると、その様子を見ていた分身の女性がようやく理解したような反応をした。

「ちなみに、ですが…あの呼び出された魔物達…今まではただのスケルトンだと思われていましたが実はちょっと違います」

「え？そうなのかい？見た目はただのスケルトンにしか見えないけど」

分身のお姉さんの豆知識を披露するような情報に分身の女性は分身の俺の周りにいる魔物を遠目で見ながら不思議そうに返す。

「剣を持っているのが『スケルトンソルジャー』…いわゆるいつもの、通常のスケルトンですね」

「剣？……あ。良く見たら持ってる武器が違うのが混じってる…？」

分身のお姉さんが説明を始めると分身の女性は目を細めながら分身の俺を四方八方から袋叩きにしている魔物達を観察して細かい違いに気付く。

「坊ちゃんが名付けましたが、斧を持っているのが『スケルトンファイター』。戦士型だそうです」

「へぇ」

「メイスを持っているのが『スケルトンウォーリア』。戦士とほぼ同じ意味を持つ闘士型だとか」

「『闘士』か。まあ説明が面倒になったんだろうね…」

分身の女性は分身のお姉さんの説明を興味深そうに聞きながら相槌を打つ。

「盾を持っているのが『スケルトンガード』。敵の攻撃を受け止めたり、複数で動きを止めにかかる防衛型だと言ってました」

「なるほど。あたしらハンターのパーティみたいだ」

「坊ちゃんから離れた位置で弓を持ち、矢を射っているのが『スケルトンアーチャー』。杖を持って魔法弾を放っているのが『スケルトンメイジ』です」

「…結構、種類が豊富なんだね…意外だ」

分身のお姉さんが説明を続けていくと分身の女性は微妙な顔になって呟く。

「実は今説明した魔物達は他のダンジョンには一切出現しません。坊ちゃんもあれから一度も見た事無い、と言ってたので多分本当に出ないです」

「…え？」

「今のところ存在が確認されているのがジェネラルの召喚による出現のみなので、図鑑にも載せていない…載っていない情報になります」

「…確かに……なるほど、現れるのが限定的だから情報を載せる必要が無いって事か…」

分身のお姉さんの発言に分身の女性は虚を突かれたような反応をするも、分身のお姉さんがそう告げると少し考えて直ぐに納得した。

「そして…なんと、上級者向けのダンジョンからは召喚されるスケルトンの質が上がります」

「…え？それは、どういう…？」

「坊ちゃんは『上級職』と言ってましたが…『ソードマスター』『ガーディアン』『アークウィザード』『ハイプリーステス』『マジックアーチャー』などの強くなったスケルトンが出てくるそうです」

「よ、よく分からないけどなんだか強そうなのは伝わった気がする…」

分身のお姉さんが更に豆知識的な情報を話すと分身の女性は若干困惑したように聞き、分身の俺が意地悪で言った前世の記憶による知識の用語をそのまま分身の女性に伝えるとやっぱり困惑しながら呟いた。

「あと…これはまだ未確定ですが、魔石の質もスケルトンの種類によって違う可能性もありまして…」

「…なるほど…そうだね。ここまで差が出るんだ、魔石の質にも差が出てもおかしくない」

「まあ今回で分かると思います。坊ちゃんが確認用に魔石をいっぱい取ってくれるでしょうし」

…分身のお姉さんはまるで内緒話でもするような感じで言うが…別に声の大きさは落としていないので、当然分身の俺にも全部聞こえている。