壮年期 34
「…次はあたしの番だね」
…先に進んで魔物を発見すると分身の女性が剣を抜いて魔物に近付く。
「ヒュッ!」
「ふっ!」
魔物が包帯を伸ばすと分身の女性は剣で包帯を斬り裂いて一気に距離を詰める。
「はっ!」
分身の女性は魔物を袈裟斬りにするもグルグル巻きにされた包帯に阻まれて中身までは届かなかったようだ。
「チッ、踏み込みが浅かったか…」
「ヒュオッ!」
分身の女性が舌打ちして一旦距離を取ろうと後ろに下がるとまたしても魔物が右腕の包帯を伸ばす。
「ふっ!」
「ヒュッ!」
分身の女性の斬り払いに魔物は左腕の包帯を伸ばし、鞭のように振るって分身の女性に叩きつけようとした。
「くっ!」
分身の女性が咄嗟に転がるように避けると魔物は更に右腕の包帯も伸ばして鞭のように振るい…
「うーん…マミーもなかなか強いものだ。威力はそこそこだけど攻撃は速いし、なにより拘束技が厄介だな」
「腕や足が包帯で絡め取られると不利になりますからね」
なんとか避け続けている分身の女性の様子を見ながら魔物を評価するように告げると分身のお姉さんも賛同するように返す。
「…見切った!そこだ!」
魔物の周りを回るように避け続けていた分身の女性は攻撃に慣れたのか…
右腕の包帯による叩きつけを避けながら魔物との距離を詰め、続く左腕の包帯による叩きつけは剣で包帯を斬り裂いて避けると魔物の胸に剣を思いっきり突き刺した。
「おおー、ピンポイントで核を狙って一撃か。流石に上手いものだね」
「あんたの魔石抜きのおかげで核の場所を知る事が出来たからね」
分身の俺が意外に思いながら褒めると分身の女性は謙遜するように言う。
「…にしても包帯の鎧ってのは思いのほか厄介なものだ。一回切った場所と同じ場所を狙おうとした時には既に跡が無かった」
「サラシとかでも上手くいけば刃物から身を守れるらしいし…そりゃ全身包帯まみれでグルグル巻きなら剣ぐらい防げても不思議じゃないと思う」
分身の女性は剣を腰の鞘に納めながら感想を告げるので分身の俺はつい前世の記憶による知識で返してしまった。
「「サラシ?」」
「あ、包帯のことね」
「へぇ、そんな呼び方もあるんだ」
不思議そうにハモった分身の二人に分身の俺が適当に誤魔化すとあっさりと信じてくれる。
「とりあえず先に進もうか。また珍しい魔物がいるかもしれないし」
「そうですね」
「そうだね」
分身の俺は話を逸らすように目の前を指差して進行を促すと分身の二人は普通に賛同してくれ、先に進む事に。
「…お」
「…ミイラとマミーって見た目似てると思いましたが、揃ってるのを見ると結構違うので直ぐに分かりますね」
「…確かに。大きさだけじゃなく身に纏ってる包帯も全然違う」
少し進むと一体のマミーと…その周りに二体のミイラが居るのを発見し、分身のお姉さんが認識を改めるかのように言うと分身の女性も同意した。
ーーーー
「うーん…珍しい魔物は居なかったかぁ…」
「そうですね」
「あたしはベオウルフなんて初めて見たよ」
ダンジョンの最下層を歩きながら分身の俺が呟くと分身のお姉さんも同意し、分身の女性は初見の魔物が居た事を告げる。
「でもベオウルフなんて特に珍しくも無いよ?色んなダンジョンに居るし」
「まああたしはあんたと一緒の時じゃないと最下層まで来れないからね…いつもは中層か下層に入ったぐらいで戻ってる」
「最下層まで来れる人って限られてますからね…パーティだとしても中級者向けのダンジョンからは数えられる程度の名の売れた実力者の集まったパーティだけですし」
分身の俺の軽い感じでの発言に分身の女性は微妙な顔をしながら呟いて普段の事を話し、分身のお姉さんは何故か世間一般に広く知られているハンターの常識を話し出した。
「とりあえずボス倒して帰ろうか。もしかしたらアンデッド系の魔物が多いからジェネラルがボスの可能性もあるし」
「『ジェネラル』?将軍?」
「『骸骨将軍』という魔物です。『スカルジェネラル』『スケルトンジェネラル』『ジェネラルボーン』…図鑑の説明では国によって呼び名が異なるらしく、唯一共通している『ジェネラル』呼びになってます」
「ああ…そういやそういう魔物がいる、って図鑑で見た事があるね」
分身の俺の期待しながらの予想に分身の女性が不思議そうな顔で聞き返すも、分身のお姉さんの説明を聞いて思い出したかのような反応をする。
「ボスの中でも結構強いよ。まだ二回しか戦った事無いけど」
「…どうせ降魔の時期だろう?その時ならどんな魔物だって強く感じるさ。実際に強くなってるんだから」
分身の俺が感想を告げると分身の女性は呆れたように返す。
「まあソレもあるんだけど…っていうかまだボスがその魔物って確定してるわけじゃないんだからここらでやめとこうか。期待して違ったら余計ガッカリするだけだし」
「…そうだね」
「ですね」
分身の俺は魔物についての情報を話そうとしたところで嫌な予感が頭をよぎり、悲しい想定をしつつもその対策として話を打ち切ると分身の二人も賛同した。
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