壮年期 24

「おいおい…こんなところで喧嘩なんてやめてくれよ。周りに迷惑がかかるだろうが」


「…旦那様に免じてこの場は引き下がるが、あたしはあの卑怯で卑劣なやり方を許しはしないからね」



分身の俺は呆れながら仲裁に入るが分身の女性は睨むように恨み言を言い…



「そういうのはコッチみたいに私に勝ってから言う事だよ。じゃないとただの負け惜しみで負け犬の遠吠えでしかない」


「煽るな煽るな」



女の子が分身の俺を指差しながら煽るので分身の俺が制止するように物理的に両者の間に入る。



「この状況で良くヘレネーを煽れますね…貴女、今の状況が三対一なの理解してます?」


「え?俺も頭数に入ってんの?」


「旦那頼りでマウント取るとかダサッ。自分の力じゃ何も出来ないクセに良くそんな強気になれるもんだ…あーやだやだ」



何故か分身のお姉さんも分身の女性を庇うように煽り始め、分身の俺が驚きながら否定的に言うと女の子は切り捨てるように言ってため息を吐いて煽り返す。



「なら試してみるかい?あたし達は旦那様と違って甘くないし容赦はしないよ」


「あはは、ただの人間に私が負けるはずないじゃん。井の中の蛙って見てて滑稽だなぁ…」


「…そんなに強いんですか?そうは見えないですけど…」



分身の女性の好戦的な申し出に女の子が余裕の態度で笑って馬鹿にすると分身のお姉さんは怪訝そうな顔で分身の俺に確認してきた。



「殺し有りならまず間違いなく世界最強クラスと断言できる。あの魔女のおねーさんとも渡り合えるよ、生存競争における『殺し合い』なら…ね」


「「えっ!!?」」



女の子の持つスナイパーライフルでの先手必勝の長距離ヘッドショット狙撃なら俺以外に耐えられる人間は存在しないかもしれないので、それを含めた評価を話すと分身の二人が驚愕する。



「逆に殺しがダメな一騎打ち勝負だと…まあ高確率でお姉さんが勝つだろうね。ゴム弾や小口径じゃ当たらないし、もし当たってもその程度じゃ大したダメージにならないから」


「…そこまで強化魔法の練度が高いの…?女なのに?」



分身の俺が普通の正々堂々の試合として戦った場合の結果を予想すると今度は女の子が驚きながら分身の女性を見た。



「近接戦ならかなり強いよ。ソッチみたいな自衛程度じゃ経験の差でまあ勝てないと思う」


「って事は遠距離を得意とした属性魔法の使い手なのか…」


「殺し合いなら多分距離関係無く勝てない。殺傷力に特化した人類の叡智、文明の利器をフル活用してるし」



女の子に女性の強みを話すと分身の女性が女の子の戦い方を予想するように呟き、分身の俺は限定的な状況下じゃないと女性ではどうやっても勝ち目が無い事を再度告げる。



「…あの『厄災の魔女』と世界中から恐れられていたメイディア様よりも強いというのはちょっと…いくらなんでも信じられません」


「お互いにオーバーキルな火力持ちだから先手を取った方が勝つ感じになる。…けど、あの魔女のおねーさんは自分の実力に自信があり過ぎて油断して先手を譲って死ぬよ。確実に」


「…なるほど。それならありえそうです。実際に戦った坊ちゃんの評価ですし」



怪訝そうな顔のまま女の子を見て否定的に言う分身のお姉さんに分身の俺が予想と想定を話すと、分身のお姉さんは納得したような反応をした。



「そもそも変化魔法を使わないと耐久力的に小口径でも危ういし、コイツ相手じゃ様子見で手を抜く可能性がめちゃくちゃ高いから速攻で決着つくと思う」


「なるほど」


「…なんか馬鹿にしてない?」


「ソッチが勝つ状況を予想して話しただけで罵倒になるとか被害妄想じゃね?」



分身の俺が女の子を指差しながら女が負ける想定を告げると女の子が不満そうな顔で返し、分身の俺は弄るように言う。



「いやいや、あんま良くは聞こえなかったけど絶対に褒めては無かったよね?なんか雰囲気的に馬鹿にされてる感じだったんだけど」


「まあソッチは先手必勝の一撃必殺が強いだけで総合的には、なぁ…あの魔女のおねーさんが最初から殺る気だったらどう足掻いても絶対に勝てないだろうし」


「いや、その『魔女のおねーさん』ってだれ?」



反発するように返す女の子に不意打ち気味にならないマトモな勝負での結果を予想して話すと、呆れたように尋ねてくる。



「100年以上前に、戦う相手欲しさに世界中に喧嘩売った頭おかしい女。世界中に被害与えた結果、戦う相手を求めて封印を選んで時を渡ったんだと」


「…は?」



分身の俺が厄災の魔女と呼ばれてた女について説明すると女の子は理解出来ないような反応をして間抜けな声を出す。



「めちゃくちゃ強かった。俺でさえ右腕とか飛ばされたり、結構欠損しまくったし」


「…は?え、まって。どういう…」


「…坊ちゃん。流石にこんなところでは…」


「おっと、そうだ。まあそんなわけで続きを聞きたけりゃ後から遊びに来てくれ。じゃな」


「ええー!!いやいやいや!嘘でしょ!ええっ!?」



分身の俺の話を聞いて女の子は困惑したように呟き、分身のお姉さんも困ったように止めてくるので話を切り上げると女の子が驚きながら声を上げた。

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