壮年期 25

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「…で?さっきの話って本当なの?」



一旦別れた後、女の子が泊まってる宿屋の部屋に更に分身した俺が入ると女の子は挨拶もせずに飲み物を用意しながら直ぐさま確認してきた。



「マジマジ」


「ってか奥さん達を放って置いてこんなトコに来ていいの?勘違いされるんじゃ?」


「影武者と一緒に観光してるからへーきへーき。どうせ本人か偽物かどうかなんて周りからは気付かんからな」



分身の俺の肯定に女の子は心配するように聞くが分身の俺は楽観的に嘘を吐いてごまかす。



「ええ…」


「それにあの二人も側室なんだから浮気だろうが嫁がもう一人増えようが気にしないと思うぞ。まあソッチとは仲良くなれるかどうか分からんし…もしかしたら関わらないかもしれんが」


「ええー…まるで大奥とか後宮とか、一夫多妻制の外国の世界じゃん。確かラスタでも一夫一妻制度じゃないの?」



若干ヒいたように呟く女の子に分身の俺が軽い感じで夫婦事情を話すと困惑しながら返し、宗教制度的な確認をする。



「法的には一応一夫一妻だな。でも守ってる貴族なんてほとんどいないから表向きの名目だけになってる感じだけど」


「…やっぱり後継ぎが早死にするから?」


「そういう事。大人になっても戦争やら内戦やら政争による暗殺やら…で、いつ死ぬか分からんし」


「…どこの国も一緒なんだ…もしかしたら私一生独身で終わるかも…」



分身の俺の返答に女の子は理由を予想するように聞き、分身の俺が肯定すると…



女の子は現代的な価値観を持っているからソレを受け入れられないのか、ため息を吐いて将来を心配するように呟く。



「別に結婚しなくても種だけ貰って一人で子供育てるとか、養子取るとか孤児院経営するとか…独り身を回避する方法は色々あるだろ」


「…確かに。金をいっぱい貯めてシングルマザーって手もある…」



分身の俺が否定するように結婚以外で家族と暮らす方法を話すと女の子が納得しながら呟いた。



「…ソッチはなんかめちゃくちゃ順応してるけど、良く嫌悪感とか無いね?」


「…うーん…なんだろなぁ?あんまり『結婚してる』って感覚が無いんだよ。付き合ってるとか交際の延長線上って感じ?」


「うわ、めっちゃ現代っ子的価値観じゃん。じゃあなに?同棲の延長で結婚に至った、的な?」



女の子は不思議そうな感じで尋ね、分身の俺は男女差じゃね?と思いながらも一応考えながら答えると…女の子が弄るように返して笑いながら確認してくる。



「まあそんな感じ。あくまで貴族としての義務や役割として結婚して子作りして…だからなんてーか意思が希薄的?って感覚かな?」


「…ソレ、さっきの奥さん達には知られないようにしないと。せっかく結婚したのにそんなん言われたらたまったもんじゃないよ」



分身の俺の肯定しての感覚的な返答に女の子は急に呆れたような顔になって注意した。



「いや、最初に既に伝えてある。隠したままだと相手に失礼だからな」


「…ソッチさぁ…反応に困る真面目さだよね…そんな変なところではちゃんと対応するとか、本当に反応に困る」


「んな事言われてもな」



分身の俺が否定して教えると女の子はため息を吐いて意味不明な事を言うので流すように返し、飲み物を飲んだ。



「…まあそれはさておき、さっき言ってた世界中に喧嘩売った女ってのは?」


「さっき話した通りよ。んで、元魔法協会の代表者だった」



女の子は飲み物を飲んで一息つくとようやく本題を切り出し、分身の俺は適当な感じで言う。



「え。もしかしてあの女の子?」


「今の代表者は『現』代表者だろ」


「あ…」


「聞いた話では100年ぐらい前に代表者だったんだと」



女の子の勘違いしながらの驚いたような確認に分身の俺が訂正するように返すと誤解が解けたような反応になり、女が代表者だった年代を大雑把に教える。



「100年…」


「その時代には戦う相手が居なかったらしいが、まあ『そりゃそうだ』って納得のいく強さだった」


「…どういう事?話の流れが全くみえないんだけど…なんでそんなのと戦う事になったの?」



微妙な感じで呟く女の子に分身の俺が女の強さを評価して話すと女の子は困惑したように聞く。



「流れで言えば魔法協会の本部だか総本山だったかのトコでたまたま会って…その後に俺がマスタークラスの強者だ、って調べたらしく拠点まで喧嘩売りに来てた」


「たまたま会って…?」


「代表者が言うのには封印を施してる担当者が危機感の欠如でやらかして封印が解けたんだと」


「ええ…」



分身の俺のおおまかな経緯を聞いて女の子は信じられなさそうな反応になり、補足を言うとヒいたように呟いた。



「…でも昔の人でしょ?その時代の頂点に立ってた、って言われてもなぁ…」


「死ぬほど強かったぞ。ガチで」


「…そういやソッチに攻撃通ったんだっけ?欠損したとかなんとか…」



女の子が微妙な感じで舐めたように呟くので分身の俺は注意も込めて誇張無しで返すと女の子は思い出すように尋ねる。



「正直マトモに戦ったらソッチでは手も足も出ないし、一切歯が立たないって断言出来る。一応先手必勝一撃必殺の長距離ヘッドショットを対物ライフルでかませば逆に余裕で殺せるだろうけど」


「…不意打ちじゃないと勝てない系?」


「まあ油断してる内に先手取ってヤらないと勝ち目無いからな。耐久力は人並みだが火力的な強さでは間違いなくマスタークラスで、今の俺と同じ段階かちょっと上かもしれん」


「普通に化物じゃん…」



分身の俺の想定を聞いて女の子は確認するように聞き、肯定して分かりやすくハンターなら…で例えると驚きながら呟く。

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