壮年期 22

「…確かに。失礼ながら兵の数…貴殿の戦力を尋ねてもよろしいだろうか?」


「今ココに居る俺を含めた三人」


「…は?」



男が封筒の中身を確認した後に尋ねてくるので分身の俺が答えると男はまたしても理解出来ないかのような反応をした。



「最近国内でちょっと面倒な事が起きて。で、その後始末を任せてるからココには連れて来れなかった」


「…たった三人…しかもその内二人が女性ときた…もしかして、からかっているのか?」


「いやいや。こう見えて指揮は執れるからそちらの兵さえ貸してもらえれば三人でも十分過ぎる。本来なら俺一人でも問題無いぐらいだし」



分身の俺の返答に男が怪訝そうな顔で呟いて少し不快そうな感じを出して聞き、分身の俺は否定してこの人数で来た理由を話す。



「…それは冗談なのか?本気なのか?我が国の兵をアテにしているとは…」


「本気だよ。この国の兵の質は高いって聞くから…自国の兵を連れて来るよりも疲労が無い分、戦果を上げる事が出来るはず」


「…評価してくれるのはありがたいが…貴殿に兵権を与えるのは難しいだろう。いくら同盟国とはいえ他国の人間に簡単に指揮権を譲渡するなど常識的に考えてあり得ない事だ。なので周りを納得させる事が出来ぬ」



男は分身の俺の真意を測りかねてるのか困惑したように返し、分身の俺がスムーズに事を進めるために適当な嘘で褒めるも拒否って理由を説明する。



「まあ確かに。俺も同じ状況なら同じ判断をするだろうし」


「すまないな。だが貴殿の要求に応えるためとりあえず話は通して説得を試みてはみるが…期待はしないでくれ」


「あ、じゃあお願いします」



分身の俺が同意すると男は謝罪した後に一応動いてくれる事を告げ、分身の俺は意外に思いながら返す。



「とりあえず二、三日はココに滞在してから前線へと移動するつもりなので…もし進展があればご連絡下さい」


「承知した。部屋の準備をさせるのでしばらくの間ココでお待ちいただきたい」


「あ、大丈夫です。宿に泊まる予定なので」


「宿に…?」



分身の俺は予定を告げてお願いすると男性が了承した後に立ち上がりながら部屋に留まるよう言い、分身の俺が断ると少し驚いたような顔になった。



「わざわざ宿を探さずともこの城に三人分の部屋を用意しますが…」


「街中で色々と情報を集めたいので。前線やその周りの雰囲気を知る事が出来れば戦術にも幅が出ますし」


「…なるほど…ではコレを」



男の微妙な感じでの提案に『観光したい』という考えをごまかすようなそれっぽい理由を話すと男が意外そうに納得してバッジを渡してくる。



「コレは?バッジのようですが…」


「後から兵に貴殿達の宿代や生活費といった滞在費用を全額こちらで負担する証明書を届けさせます。その時にそのバッジをお返し下さい」


「おお。感謝申し上げます」



分身の俺が不思議に思いながら受け取ると男がとてもありがたい事を言ってくれるので、分身の俺は意外に思いながらも嬉しくなってお礼を言う。



「いえ、当然の事ですので。ではこれで失礼します」



男は流すように返すと軽く会釈して部屋から出て行く。



「んじゃ、やる事やったし…俺らも観光…情報収集に行こうか」


「そうだね」


「そうしましょう」



分身の俺が立ち上がって提案すると分身の女性と分身のお姉さんも立ち上がって賛同し、早速観光へと行く事にした。





ーーー





「なんか良い感じの食材は無いものか…ん?」



分身の俺は市場で食材を物色しながら歩いて回り、青果店のような屋台でスイカのような果物を発見。



「コレは?」


「コレ?スイーターの事かい?」


「『スイーター』?なにそれ」


「見るのは初めてかい?…ほら、こんな感じで赤くて水分が多いのが特徴さ」


「へー」



分身の俺の問いに店主っぽいおばさんが不思議そうにモノを指差して確認し、分身の俺が尋ねると一つ取って包丁で真っ二つに切って中身を見せて説明してくれる。



「一口どうだい?」


「いただく。ありがとう」



おばさんは果物を切り分けて皿に移すと差し出して来るので一切れつまんで味見する事に。



「…水分が多いな」



味はまんまスイカだったがまだ熟しきって無いのか甘さの方はまあまあイマイチだった。



「どうだい甘いだろ?」


「ん。いくか買って行こうかな」


「どれにする?」



おばさんの確認に分身の俺は思った事を言わずに肯定してちゃんと熟すれば甘くなるだろう…という考えで購入する事を決める。



…スイカがあるのなら同じ瓜科であるメロンも…と市場を探すとビンゴ。



流石に値段は結構張る高級品としての扱いだったが、とりあえず12個中10個を選別して購入した。



「…ん?あ」


「…ん?…もしや…」



その後も何か無いかと市場を歩いていると帝国の兵…



しかも転生者である女の子の部下を見かけたので分身の俺が思わず短く声を出すと、アッチも分身の俺に気づく。



「意外だね。まだ帝国に帰ってなかったんだ」


「実は隣のヴェルヘルムより飛行船を乗り継いで帰る予定だったのですが、戦時中のため国境が封鎖されてまして…足止め状態になってしまいました」


「あー、そりゃ大変だ。で、どうせなら都市部で時間を潰そうと戻って来たの?」


「その通りです」



分身の俺が話しかけると帝国兵は困ったように笑いながら経緯を話し、分身の俺の同情した後の確認に肯定する。

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