青年期 348
「…おっ。もしかしてあんたらがよそ者のリーダー達?」
「…誰だ?」
「どうやってここまで入り込んで来た?」
廃屋のリビングのようなちょっと広い空間に4人ほどの男がソファに座って喋っていて…
分身の俺が尋ねると男達は直ぐに警戒した様子になって立ち上がる。
「俺はねぇ、『辺境伯』っていうここら一帯の領土を治める貴族」
「辺境伯…!?」
「貴族、だと!?」
「…良く見ると隣に立ってる奴は…!」
分身の俺の立場を強調するような軽い自己紹介に男達が逃げ腰になりながら驚愕した。
「ちなみに俺、猟兵隊の団長でもあるからこう見えて結構強いよ?」
「く、クライン辺境伯…!!」
「な、なんでそんな大物がこんな所に…!」
「まさか既に猟兵隊に周りを包囲されているのか…!?」
分身の俺が脅しをかけると男達は狼狽え始める。
「ちょっと君達派手に暴れ過ぎたね。大人しく俺の領土から去って国に帰るか、それとも俺に挑んで捕まるか…どっちが良い?」
「じょ、冗談じゃない!あの戦闘狂の貴族に挑むなんて命がいくつあっても足りるわけが…!」
「お、俺は抜けるぞ!話が違う!」
「俺だって貴族が直接出向くなんて話は聞いてない!」
分身の俺は選択を迫るも男達は仲間割れでもするように騒ぎ出した。
「一応組織に入って下手な事を考えずに大人しく従う…ってんなら別に出ていかなくても良いけど」
「「「なんだって!?」」」
「ただ…今回はまだ初回だから更生のチャンスを与えるけど、もし規則を破ると次は見逃さないからそのつもりで」
分身の俺が温情のある提案をすると男達はまたしても驚き、分身の俺は保険として脅しをかける。
「…分かった。死ぬよりはマシだ」
「…失敗したと分かればどんな罰を受けるか…国に帰るよりはまだ安全かもな」
「…そうだな」
「じゃあ後は任せても良い?」
「はい!ありがとうございます!決められた規則を破らぬよう、辺境伯の手を煩わせずに済むようしっかりと教育いたします!」
男達が諦めて裏組織の傘下に入るような事を言うので分身の俺が尋ねると、厳つい顔の男は頭を下げてお礼を言った後に責任を持って面倒を見るかのような事を告げた。
「まあほどほどにね。あんまり厳しくし過ぎて使いものにならなくなったら困るし」
「もちろんです!ご心配には及びません!」
「そう?じゃあ行こうか。ついて来て」
「「「はい」」」
分身の俺の釘刺しに男は肯定しながら返し、分身の俺は念の為に男達を裏組織の本部まで連れて行く事に。
…それから三日後。
「団長。団長の知り合いだ、って女が来てるんだが…」
「…んん?候補が多過ぎる…誰だ?」
自室で報告書を読んでいるとドアがノックされ、団員が報告してくるが俺は思い当たる節が多過ぎて不思議に思いながら呟く。
「なんでも魔法協会に所属してるらしいが、ソレを証明出来る物を持ってないみたいでな」
「あー…分かったかも。多分のマジで俺の知り合いだと思うから俺が行くよ」
「分かった」
団員の更なる報告に俺があの魔女の末裔か?と当たりを付けて指示を出すと団員は部屋から出て行く。
「…一体何の用なんだかな…」
俺は不思議に思いながらも椅子から立ち上がって女性を迎えに行く事にした。
「…やーやー、遠い所はるばるご苦労さん。わざわざこんな小国になんの用?」
「わざわざ本人が出迎えてくれるとは手間が省けた。私と戦え」
「なに?喧嘩売りにきたの?」
「そう。あなた、結構やるみたいじゃない?」
俺が用件を問うと女がいきなり戦いを申し入れてくるので確認すると女は肯定した後にニヤリと笑う。
「まあいいけど…場所変えない?あと準備させて」
「分かった。あなたが来るまでココで待ってるから」
俺の了承しながらの提案に女が受け入れて脅すかのような事を言う。
「5分あれば十分だって」
俺はそんな時間がかからない事を告げて走って本部の建物へと戻り、変化魔法を使って分身して女の下へと戻らせる。
「…待たせたね」
「もういいの?」
「直ぐに終わるって言ったじゃん」
「そう?じゃあ移動する前に待ってる間にお腹空いたからなにか食べる物ない?」
分身の俺が座り込んでいた女に声をかけると驚いたように確認され、そう返すと女は立ち上がった後に食べ物を要求してきた。
「待ってる間って…5分も経ってないと思うんだけど」
「それでもお腹空いたんだからしょうがないじゃない」
「ったく…今はお菓子しか持ってないよ」
「食べられるのならなんでも良い」
分身の俺の呆れながらの言葉に女はシレッとした感じで返し、呆れたまま空間魔法の施されたポーチからクッキーの入った容器を取り出すと女が嬉しそうに手を出す。
「…!美味しい!なにこのお菓子!脆い上に口の中で溶けて無くなる!」
「はい、飲み物。とりあえず食べながらで良いから場所移動するよ」
「分かった」
女がクッキーを一枚食べて驚くと二枚三枚と一気に食べ、喉に詰まらないよう水筒を渡しながら歩くと女は水筒に入ってる紅茶を飲みながら大人しく後ろからついて来る。
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