青年期 349
そして拠点から移動する事、20分後。
「…ココなら街道からも離れてるし、周りへの被害を気にする必要は無いよ。まあ範囲にもよるけど」
王都からも街道からもダンジョンからも離れていて人があまり通りそうにない平原で分身の俺は足を止めて到着した事を告げた。
「なら遠慮しなくて良いって事だ」
「しっかし最初に選んだ相手が俺とはなぁ…まあ俺も強者と戦うのは好きだから『類は友を呼ぶ』ってやつかな」
「あなたも変化魔法を使うと聞いたが…実際に使ってるところを見た事がある人はいない、とも聞いた。どっちのタイプなんだ?」
嬉しそうにニヤリと笑う女に分身の俺が意外に思いながら呟いて自己完結で納得すると女が疑問を尋ねてくる。
「俺が変化魔法を使うと意図せず相手を殺しちゃうからね。そもそも対人戦ならば強化魔法だけで大体は事足りるし」
「なるほど。そういうタイプか…今の時代では変化魔法を扱える者の数が少ないと聞く、なぜそのような時代にわざわざ変化魔法を?」
分身の俺の返答に女は納得した後にまたしても疑問を聞いてきた。
「楽に強くなれるから」
「…そうか。ありがとう、では始めようか」
分身の俺が理由を話すと女は頷いてお礼を言った後に雰囲気と表情を変えて威圧感を放ちながら合図を出す。
「…一つ、先に言っておく事がある」
「なに?」
「今の時代の腑抜けた奴らとは比べものにならんぞ。私は『厄災の魔女』と世界中から恐れられた、つまりは誰も私を止める事はできなかった」
ゆめゆめ油断せぬ事だ。と、威圧感を緩めた女は対等に戦いたいからか断りを入れるように自分の強さを軽く話して警告する。
「へー、そりゃ楽しみだ」
「私も楽しませてくれ。『理外者』よ」
分身の俺が余裕を見せて返すと女がフッと笑って魔法協会内での俺の呼び名の一つを言うと…
女の見た目が変わってドラゴンになった。
「…へー!まさか俺と同じく変化魔法の使い手だったとは」
「くっく…ははははは!『同じく』?使う魔法が同じでも練度が違う、技術が異なる。まともな技術も無く稚拙な技しか使えぬ面汚し共と比較されては困るな」
分身の俺の意外に思いながらの発言に女は高笑いした後にめちゃくちゃディスり始めるとまたしても姿が変わり…
ドラゴンの姿のまま2mほどの人型…竜人?のような姿になる。
「ええー!なにそれ!?マジ!?」
「形態変化すらも使えんひよっこ共しか居ないとは…質の低下は底まで落ちたか」
「うおっ!」
分身の俺が初見の思いもよらなかった技術を見て驚愕すると女は呆れを通り越して哀れむように呟き…
一気に距離を詰めて分身の俺の懐に入って貫手のように爪で突くが分身の俺は速さに驚きながらもなんとか身体を捻って避けた。
「…おわっ!」
「それで避けたつもりだったのか?」
女が伸ばした腕で薙ぎ払うように横に振り、しゃがんで避けるも急に火が吹き出し…
分身の俺がモロに火に包まれると女は得意気に煽ってくる。
「おおー、すげー。ドラゴンの技をここまで使いこなすかぁ…」
…普通のドラゴンならばブレスでしか吐かないはずの炎をまるで属性魔法を使うかのような気軽さで…
それも小手調べとして火力をあえて下げた火として使った女の技術力に、分身の俺は消火するように転がって離れた後に感嘆しながら呟いた。
「ははっ!面白い!」
分身の俺の余裕な態度を見て女は楽しそう笑い、背中の翼を少し動かして少し浮いたかと思えば低空飛行するように高速で分身の俺めがけて弾丸のごとく突っ込んで来る。
「…おうっ」
「避けた!?今のを!?」
突っ込んで来る女にカウンターを合わせて殴ろうとしたが女は当たる直前で空中で身体を翻して避けながら尻尾で逆に顔を狙ったカウンター返しを仕掛け、分身の俺が上半身を仰け反らせてかわすと女が驚く。
「これなら!」
「そうか…尻尾での攻撃もあるのか…ちょっと手数が多くて多彩でえぐいわ…」
「…ははっ!」
女は直ぐに態勢を立て直してブレスとして炎を吐いたが分身の俺が腕を回して炎を拡散させるような動作で凌ぎながら情報を整理して呟くと女が嬉しそうに笑う。
「いい、良い!予想以上!ここまでとは…!もう手加減しなくても…!」
「あ、一応様子見だったんだ」
「はあああ!!はっ!」
「なにっ!?」
女の楽しそうな様子での独り言に分身の俺が返してあげると女は少し距離を取って離れた後に力を溜めるように右の拳を力一杯に握り、地面を殴りつけると衝撃波と炎が地面を削りながら分身の俺へと一直線に向かってきた。
「まあ避けるだけなら余裕…げっ」
速度はあまり速く無いので分身の俺が軽く左側に避けると女は待ってましたと言わんばかりの笑顔でビー玉のような火球を5個飛ばしてくる。
「くっ…!」
「甘い!」
更に左に大きく転がって避けようとするも女が左側から低空飛行からのタックルをかまし、流石にソレは避けられず…
さっきの場所に押し戻されるような感じになると後ろから戻って来た火球が分身の俺に全弾命中して大爆発を起こした。
「…もしかしてもう終わり?まさかこの程度じゃないでしょ?私はまだ実力の半分も出してないんだけど」
「…マジで?この火球一発で普通なら大怪我、二発くらえばほぼ死ぬぐらいの威力があるのに?」
「…流石に無傷は想定して無かった。やっぱり少しはやるようね」
爆発による煙や埃が立ち込める中で女が挑発するように言うので分身の俺は手で煙や埃を払いながら聞くと女は驚いたように呟いて笑う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます