青年期 347
…その翌日。
ラグィーズ領にある町の治安維持を担っている裏社会の組織から手紙が届いた。
なんでも『外国から来たならず者達が外から仲間を呼んで居座ろうとしていて、追い出すには大規模な抗争に発展するかもしれない』とのこと。
『今までのように周りに被害を拡大させず秘密裏に処理するのは難しい案件になってしまった』らしいので…
事態の解決を図るために分身の俺が直々にその町へと出向く事に。
「…辺境伯、ですか?」
…町の役所的な建物の応接室で組織の代表者を待っていると…ドアがノックされ、厳つい顔でゴリマッチョな外見の男が部屋に入って来て下手に出ながら確認してくる。
「やーやー、初めまして?いつもお仕事ご苦労さん。君達の働きのおかげで領内の治安が維持出来てるみたいだね」
「いえいえ!そんな…!これも辺境伯の支援があればこそで…!」
分身の俺が挨拶して労いの言葉をかけて褒めると男は外見とは裏腹に下手に出たまま謙遜しながら返す。
「そりゃ君達には重要な仕事を任せてるんだからそれぐらいはしないと。でも教育はちゃんとしてね?世代交代に失敗して規則を破られるとお互いに困るし」
「はい!新入りにはしっかりと教育を叩き込んでいるので心配要りません!」
分身の俺の釘刺しに男は自信満々で答えた。
「で、よそ者が好き勝手やらかそうとしてるんだって?」
「…奴らには何度も注意、警告して交渉を重ねたのですが…一向に取り合わず、脅迫しても我々が表立って派手に動けないのを良い事に逆に脅し返される始末で…」
分身の俺が本題を聞くと男は手紙には書いてなかったこれまでの経緯を話し始める。
「…治安部隊はまだ動かせない?」
「奴ら、意外と頭を使って治安部隊に目を付けられない規模で分散して動いてます」
「なるほど。少数に逃げられて闇討ちとかされると面倒だ…」
分身の俺の問いに男が困ったように説明し、分身の俺はごろつきのような外道の手段を取られないようにしてるのか…と納得して呟く。
「…正直、奴らをただ片付けるだけなら簡単だ。俺達だけでも、治安部隊を動かしても解決できる。だけど、そうするとそれなりの騒動に発展するだろうから周りへの被害が少なからず出ると思う」
「ん、正しい判断だ。そういう時は俺がなんとかする」
男は手段を選ばず周りを気にしなければ早期に問題を解決出来る事を告げ、ソレをしない理由を言うので…
分身の俺が褒めるように返し、領主として問題を解決させるために動く事を伝えた。
「お願いします!」
「ここらで一発、よそ者達には君達の組織の後ろ盾には俺や猟兵隊が居る…って事を教えてあげなきゃね。まあ今回は俺一人で十分だけど」
「はい!」
男の頭を下げての委任するかのような言葉に分身の俺はニヤリと笑ってまだ見ぬよそ者達に向けて脅しをかけると男が笑顔で返事する。
「とりあえずよそ者のリーダー格がどこにいるか分かる?」
「はい。奴らの根城は既に掴んでおります」
「じゃあ案内お願い」
「分かりました」
分身の俺の確認に男が肯定し、分身の俺が指示を出すと男は了承して先導するように退室した。
そして男は外に出ると表通りから離れて路地裏に入り、人気の無い場所へと進んで行く。
「…この廃屋が奴らのアジトの一つです」
「…元から廃屋なの?」
「いえ。去年空き家になり、修繕しようとしていた所に奴らが勝手に住み着き…半年もしない内にここまで荒れました」
「ふーん…困ったもんだ」
男が案内した先の結構ボロボロになってる平屋を見て分身の俺が確認すると男は廃屋になった経緯を話し、分身の俺は迷惑だな…と思いながら廃屋の中に入る。
「誰だ!」
「…無断でココに入って来た以上ただでは返さんぞ」
すると見張りのような柄の悪い男達に見つかった。
「君達のリーダーに会わせてくれる?話し合いできるならソレが一番なんだけど」
「チッ、大して金持ってなさそうだ」
「今すぐ金を出して帰るか、金を奪われて痛い目見るか選べ」
「…なるほど。コレは話が通じないわ」
分身の俺の提案に男達は言葉は通じてるはずなのに無視して自分の都合だけを話し、分身の俺は諦めたように呟く。
「どうやら痛い目を見たいようだな」
「安心しろ。死なない程度には済ませてやる」
「あ、そう」
「っ…!」
「いっ…!!」
男達が殴りかかって来たが分身の俺は一人目にはカウンターで顎を殴り、二人目のパンチを受け止めるように掴んでそのまま腕を捻りあげる。
「このまま腕がねじ折られるのと大人しく案内するのどっちが良い?」
「ぐっ…!舐めるな!」
「お。でも無駄」
男の一人はまさかの自分で肩を外して殴りかかって来るが分身の俺は足払いして倒し、側頭部に膝蹴りを当てて気絶させた。
「流石に喧嘩慣れしてますね。こんな下っ端だと相手にすらならないなんて」
「そりゃコッチは戦場で命をかけて戦ってるんだからね。経験の差が違うよ」
「…そうでした」
その様子を見ていた厳つい顔の男が驚いたように褒めてくるが分身の俺は当たり前だろ…と内心呆れるが顔には出さずに適当な感じで返す。
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