青年期 340
「…お、いた」
少し歩いただけで魔物を発見したので分身の俺は早速変化魔法の極技その2を使って魔物に並行変化をかける。
「…なんか凄い外見になったな…」
…上半身はグールだが、下半身がアルケニーのような蜘蛛…かと思いきや脚は全て骨になっており、背中に付いてる羽も骨の状態になっていてとても飛べそうに無い。
「…お、速っ!」
鈍重そうな見た目とは裏腹に骨の多脚を活かして予想外のスピードで接近して来ると蜘蛛の下の部分にある大きな口を開けて噛みついてきた。
「…そんなトコに大きな口があるなんて生物としてはおかしいが…まあそんなもんか」
分身の俺はキメラ化してる魔物の身体の造りにツッコミつつも、ある種の人造の括りになるので納得して呟く。
「…おっと」
蜘蛛の尻の部分から発射された糸を避けると魔物はカサカサと素早く壁を歩いて天井に移動し、分身の俺の真上に来た瞬間に大口を開けてボディプレスしてくる。
「…ゲームのモンスターみたいな動きをしてくんな…ってか上半身のグールの部分いる…?」
分身の俺は軽く避けて魔物の動きを見ながら全く動かず人形のようになってる上半身に不思議に思って呟いた。
「…ってか魔石どこだ?上半身のグールの部分か?それとも蜘蛛の部分か…?」
そろそろ魔石抜きして終わらせるか…と思って分身の俺は魔物と向き合い、良く見ると核となる部分に見当がつかずに呟く。
「…あ、マジか…頭!?頭の部分に魔石!?」
魔物に部分変化をかけて核となる魔石がある部分を探り出した後にあまりの予想外な場所に分身の俺は驚きながら回避行動を取る。
「…まあ良く考えたらスケルトンが頭だからな…」
分身の俺は納得しつつも結構高い位置にあるグールの頭を見ながらめんどくせぇ…と思ってため息を吐く。
「…よっ、と…」
「…強かったですね。坊ちゃんの予想通り上級下位ぐらいの強さだったのでは?」
魔物の動きを見て隙を突き、ジャンプしながら魔石抜きで倒すと分身のお姉さんが感想を言って確認してきた。
「…どうかな?時間を置けば分からないけど今ならまだ中級上位ぐらいだったと思う」
「攻撃が単調だったからですか?」
「ん。まあスケルトンの武器術が一切役に立ってない感じがするから当然と言えば当然か…せめてグールが盾と剣を持ってればまた違ったんだろうけど」
「だから『時間を置けば』なんですね」
分身の俺が否定的に返して評価を話すと分身のお姉さんは確認するように尋ね、肯定して予想を告げると分身のお姉さんが納得したように返す。
「…でも下級を混ぜてコレなら中級や上級で試すとヤバくなりそうだ。はい」
「…今回は五芒星の形なんですね…五角形とかではなく…」
「んじゃ、目的は達成したし帰ろうか。どうせ明日も来るし」
「…そうですね」
分身の俺は『魔物がキメラ化すると並行変化の回数だけ強さが増していく』という結果も分かったので帰る事にすると分身のお姉さんは少し考えて賛同する。
…翌日。
帝国の女の子にお土産として魚肉を渡すために分身の俺は王都に行って帝国から来た人達を探す。
「お、いたいた。おーい」
「ん?あ」
帝国の人なら誰でも良かったんだが、たまたま大通りを歩いている女の子を見つけたので声をかけた。
「来てたんだ」
「ちょっとソッチに用があってな。今大丈夫か?」
「別にこれといった用は無いけど…」
わざわざ駆け寄って来た女の子に用件を告げて尋ねると女の子は不思議そうな顔で呟く。
「立ち話もなんだし、拠点に来てくれ」
「えー、私の部屋で良くない?行き帰りの移動が面倒だし」
「まあソッチが良いんなら」
「じゃあコッチ」
分身の俺の誘いに女の子は面倒くさそうに断り、逆に自分が泊まってる宿屋の部屋に誘うので分身の俺が了承すると女の子が案内する。
「で。用ってなに?」
「ああ、実は昨日マーメイドの肉を手に入れてな」
「え!マジで!?」
「そうそう。大量に手に入れたから、せっかくだからソッチにもお裾分けしようと思って」
「やったー!!マジ!?マジで!?」
歩きながらの女の子の問いに分身の俺が報告すると女の子が足を止めて驚愕し…
用件の内容を伝えると女の子が両手を上げて喜びながら何度も確認してきた。
「じゃあ急いで戻ろう!」
「あ」
女の子は気が急いたのか急に走り出したが分身の俺は普通に歩いて追いかける。
「コッチコッチ!早く早く!」
「別にそんな急がなくても逃げねぇよ」
「『魚は足が速い』って言うでしょ!」
「それはただの例えだろ。空間魔法が施されてる収納グッズの中に入れとけば関係ないし」
女の子が途中で止まると振り返りながらジャンプして急かすように手招きし、分身の俺が急ぐ必要がない事を告げるも女の子は前世の知識を話すので分身の俺は呆れながら返す。
「それでも!早く早く!」
「はいはい…」
女の子の催促に分身の俺はため息を吐きながら少し早足になってまたしても走り出した女の子を追いかけた。
「コッチ!この宿屋の二階!」
「中心地から結構離れてんな…まあその方が安いからか」
案内された先の宿屋に着いて分身の俺は周りを見ながら呟き、金銭的な問題で選んだんだろう…と予想して女の子についていく。
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