青年期 339

「…そういや魔物への並行変化は何回まで有効なんだろう?」


「坊ちゃんは魔法の並行使用を三回まで出来るんでしたっけ?」


「今のところはまだ四回」


「…ただ二回の並行使用を出来る人ですら世界に何人も居ないのに『まだ』って…」



分身の俺のふとした疑問に分身のお姉さんが思い出すように確認し、訂正して返すと分身のお姉さんは微妙な顔になって呆れながら返す。



「まあ俺の技術は並行使用が前提なところがあるからね」


「それはそうですが…」


「とりあえずやってみるか。結果次第では下級の魔物の組み合わせで魔石の質が面白い事になるかもしれないし」


「…そうですね」



分身の俺が適当な感じで返すと分身のお姉さんは納得いかなそうな感じで呟くが分身の俺は気にせずに実際に試して結果を確認してみる事に。



「…お、いた。さーて…ベースはゴブリンにして、スライム…いや、コボルトとハーピー混ぜてみるか」


「そういえばスライムに並行変化かけたら最大5回混ぜる事になりません?」



…歩いていると魔物を発見し、早速実験するために変化魔法の極技その2を使って考えながら呟くと分身のお姉さんが訂正するように尋ねてくる。



「何言ってんの?魔物化してからが一回だから、変化魔法がかかってない状態の魔物はゼロだよ?」


「え?でも………あっ。…勘違いしてました」



分身の俺が否定しながら説明すると分身のお姉さんは困惑して反論するように呟いて考えると自分の間違いを認めた。



「まあしょうがない。俺の使い方が特殊過ぎるからなぁ…」



分身の俺はフォローするように返してゴブリン、コボルト、ハーピーの並行変化をかけて魔物をキメラ化させる。



「…なんか見た目はカッコよくなったな。翼の生えた獣人ってトコか」


「どことなくワーウルフに似てますね。ワーウルフは武器は使いませんが」



三種のキメラ化した魔物の外見を見て分身の俺が意外に思いながら言うと、分身のお姉さんは別の魔物と比較して槍を持ってる魔物を見ながら違いを挙げた。



「ウォー!」



魔物は犬と鳥の鳴き声を足して割ったような声で鳴くと普通のゴブリンやコボルトよりも素早い動きで分身の俺に向かって手にした槍を突いてくる。



「…身体能力がちょっと上がってる…並行変化の分バフがかかってソレに倍率とかが乗ってんのか…?分からん」



本来なら魔物化や完全に変身した場合はその魔物自体になるので身体能力はその魔物のまま…で変わらないはずなのだが、並行変化でのキメラ化のバグなのか目の前の魔物は明らかに中級レベルの強さになっていた。



「ウォファ」


「おおっと。マジか!」



魔物はバク宙するように後ろ向きに回転したと思ったら分身の俺の腹めがけて槍で突き、ジャンプしたと思えば天井に足をついて飛び込むように槍を突いて来た。



「すっげ、変幻自在で自由自在な三次元的なこの動き…コボルトの武器術にゴブリンの狡賢さとハーピーの飛行術か。こりゃさっさと決めないとヤバいな」


「ウ…!」



普通の魔物なら絶対にしないし出来ないであろうトリッキーな動きに分身の俺は感心して嬉しくなり、楽しく思いながらもこれ以上強くなる前に魔石抜きで倒す。



「…凄い動きでしたね」


「全くだ。まだまだ成長段階だろうし、時間を置けば使う武器の質によっては上級まで届くかも」


「…確かに。あの動きが洗練されれば並のハンターでは太刀打ち出来ないかもしれません」



分身のお姉さんが驚いたように言い、分身の俺は同意しながら感想を告げると分身のお姉さんも賛同する。



「しかし魔石も変わった形だな…三角錐とは」


「…こんな形の魔石は初めて見ました」


「初心者向けの下級でも三種類混ぜたら中級レベルって事は…四種類混ぜたら中級上位か上級下位まで届きそうだ」



手に持ってる魔石を見ながら呟くと分身のお姉さんも受け取りながら不思議そうな顔で同意し、分身の俺は実験の結果から予想を話す。



「…やっぱり強さも並行変化の回数分増してるんですか?」


「そうみたい。本来ならそうはならんだろ、と思うけど今回のは特殊で異常だから結果をそのまま受け入れるしかないね」



分身のお姉さんの少し考えたような確認に分身の俺が肯定しながら適当な感じで返すと…



「…過去の術師達も坊ちゃんみたいな事を試した人が居たんでしょうか?」


「流石に全盛期なら俺レベルなんてそこかしらかに居たんじゃないの?なんせ闇の精霊に歴史からごっそりと消されるレベルだし」


「…確かに…坊ちゃんレベルの人達がいっぱいいて、更に暗躍してるんならもはやそこまでしないと収拾つかなそうですもんね…」



分身のお姉さんは昔の事を考えるように聞き、分身の俺が肯定的に返したら納得しながらも微妙な顔で呟く。



「んじゃ次は四種類の並行変化で最後だ」


「どんな魔物を混ぜるんですか?」


「今度はグールとスケルトン、スパイダーと…グレムリン…いや、やっぱハーピーでいこう」


「…どんな外見になるかさっぱり検討すらつきませんが、魔石の形が楽しみです!」



分身の俺が魔物の探索を再開しながら言うと分身のお姉さんが尋ね、考えながら答えると分身のお姉さんは楽しそうに返す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る