青年期 333
…その後。
国王の演説も終わり、みんなで帰ろうとしたところで昼飯の話が持ち上がり…
侯爵のおっさん達の対応もしないといけないのに実家で昼食の料理対決をする事になってしまい、分身の俺と記憶共有した俺は急いで魔物の肉を半分に分けてもう一つの空間魔法が施されたポーチへと入れる。
そして家族には適当な理由を一旦離れて人目の無い場所で分身を解き、直ぐに変化魔法を使って分身して空間魔法の施されたポーチを持たせて急いで実家に行ってもらう。
「…団長。辺境伯と侯爵が同時に来てるが…」
「オッケー、分かった」
分身の俺が拠点から出て10分ほどでおっさんと青年がやって来たらしく、団員の報告に俺はギリギリセーフ…と内心安堵しながら出迎える事に。
「…いやー、最初に決めた事とはいえ、まさかあんな発表があるなんて…」
「…仕方あるまい」
「そうですね。ココは、ゼルハイト卿は中立なので言い争いは避ける方向でいければいいのですが…」
「…そうだな」
俺が本部の建物の前で二人を出迎えながら言い訳をかますとおっさんは青年を見ながら微妙な顔をしながらも受け入れるような事を言い…
青年はおっさんを見ながら余裕そうな態度で釘を刺すような事を返し、おっさんはため息を吐いて賛同する。
「さっき家族にも聞かれましたが、自分は中立なので国が良くなれば国王なんて誰でも良いと思ってます。逆に言えば国をこれ以上悪い方向に持っていこうとするなら敵対する事になってしまいます」
「…ふっ。そうか」
「ゼルハイト卿らしいな」
俺が自室に案内しながら多分聞かれるかもしれない事を先に話すとおっさんと青年は笑って返した。
「…さて、突き出しのリクエストはありますか?」
「そうだな…たまにはカルパッチョなんてどうだ?」
「そうですね」
自室に入った後に俺が昼飯について確認するとおっさんが少し考えて料理名を出し、青年も賛同する。
「…どうぞ」
「…レモンソースに、この肉は…バイスォンの燻製か」
「ソースのさっぱりとした味わいが肉と良く合い、このレシャスとも相性が良く、相変わらず素晴らしい…!」
目の前で紙皿に持って出すとおっさんは一口食べた後に魔物に肉の種類と加工品である事を見抜いて呟き、青年は食レポのように感想を言いながらパクパク食べ進めていく。
「…ゼルハイト卿の料理を食べるまでは料理など食べられればそれで良かったから味や材料、作り方など気にした事無かったが…最近ではシェフについ料理の手順を聞いてしまうな」
「自分はゼルハイト卿から工程や手順を聞いて知識が増えてしまった分、今では城の料理人が少しでも手を抜くと一口で直ぐに分かるほどに舌が肥えてしまいました」
…おっさんと青年の料理を食べながら笑い合っての話に俺は料理を作るシェフやコックといった料理人達に申し訳ない気持ちになりながらもスルーした。
「…どうぞ、酢豚…揚げ肉の炒め物になります」
「ほう?」
「初めて見る料理だ」
俺が作り終えた料理を出すと二人は不思議そうな顔をする。
「美味い。なるほど、揚げた肉の食感や味と炒めた野菜の食感と味が絶妙なものだ」
「『揚げて炒める』という点ではこの前食べたあの…なんだったか、ロースとかいう料理に似ているが全然違うものだな」
「チンジャオロースですか?」
「そう、それだ!」
「多分使ったソースの粘度の差で味や食感に違いが出てるんだと思います」
おっさんの感想に青年は別の料理を引き合いに出そうとして忘れたように呟くので俺が確認すると肯定し、俺は適当な感じで違いを話す。
「…コレも大陸の郷土料理か?」
「分かりますか」
「大陸の料理は揚げ物が多いと聞くからな」
おっさんがパクパク食べながら確認してきて、俺が驚きながら肯定するとおっさんは予想するに至った根拠を告げた。
「…では次はこちら、『大豆コロッケ』です。まあ分かりやすく言えばハッシュポテトの豆版ですね。コレは『揚げ焼き』なので厳密にはコロッケかどうかは微妙なところですが」
「ほう?また変わった調理法か…ポテトの代わりにビーンズとは」
「…美味い。まさか材料を代用してもこの味…ゼルハイト卿の発想力は凄まじいものだ」
「…ありがとうございます」
俺はちょっと健康に気をつかった料理を出して説明するとおっさんが意外そうに呟き、青年は一口食べた後に褒めてくるが…
俺の知識は料理の本や前世の知識ありきなので、そりゃ人類の叡智の賜物だからな…と微妙な気持ちになりながら返す。
「こちらもどうぞ」
「ミネストローネか。…あっさりとしていて飲みやすい」
「…野菜の旨みが凝縮されているようで美味いな」
俺が飲み物代わりにスープを出すとおっさんは直ぐに一口飲んで感想を言うと一気に飲み、青年も一気に飲んで感想を告げる。
「栄養バランスを考えると野菜も食べないといけないですから…こちらを」
「これは…つけものか」
「うむ。ハッシュポテトの油っこい味の後にはこのようなさわやかな酸味がちょうど良い」
俺はまたしても小鉢の一品になる事を言い訳するように言うが青年もおっさんも文句を言わずに美味しそうに食べてくれた。
「最後は『肉の巻き寿司』とでも言いましょうか…簡単に伝えるならおにぎりを細長くして輪切りにしたものです」
「…コレも初めて見るモノだ。マァイで肉を巻いているとは……っ!美味い!」
「なるほど!牛丼や焼肉の米付きに近い感じか!ソレよりも手軽に食べられる!」
最近開発した海苔を使わず米だけで肉を巻いた料理を出すとおっさんが不思議そうに見た後にフォークをブッ刺して一口で食べて感想に言い、青年は半分齧って何かに気づいたような反応をする。
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