青年期 334
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「…ふう。やはりゼルハイト卿の料理を食べた後は満足感や充実感が素晴らしい」
「全くです」
「ありがとうございます」
デザートのみたらし団子や大判焼きを食べた後におっさんが紅茶を飲んで一息吐いて褒めてくると青年も同意し、俺は相槌を打つようにお礼を言う。
「さて。腹も膨れたし良い機会だ、中立であるゼルハイト卿が居る今ならお互いに冷静になれるだろう…そちらの派閥はなぜ第二王子を支持しているのか、その意見を聞きたい」
「ミャルマー王子は国防を重要視しています。我々のように国境を守る立場としては支持するのも当然かと」
「そうか。しかし国防は重要だが、より重要なのは国内を安定させる事だろう。国民がみな協力すれば外敵の排除は容易くなり、ひいては国防にも繋がる」
おっさんが話し合いを求めると青年は簡単な感じで答え、おっさんも理解を示しつつ第一王子を支持する理由を話した。
「…お言葉ですがファルフー王子は国をまとめ上げて統治する事に考えが行きすぎ、あまり国防の重要性を本当の意味では理解してないように思えます。文字や口頭での報告、そして損得の計算でしか見てない節があります」
「…確かに国防はココに居る我らに任せておけば問題無い、と思っているかもしれん」
「我々の意見を尊重して支援を惜しまないのであれば王子の信頼に応えるために頑張れましょうが…おそらく、現場を知らないが故の失敗を何回か繰り返して手遅れになるような気がします」
「…うむ」
青年の反論におっさんは俺を見ながら微妙な顔で返し、青年が個人的な意見を述べるとおっさんも思い当たる節があるのか受け入れるような反応をする。
「しかしミャルマー王子は国防に考えが行きすぎていて、国内をまとめ上げる器量については…」
「力づくで抑えれば良いと思っている節があるが、武力支配での統治など国民から反発を招いて治安が悪化するだけだ」
「おっしゃる通りです」
青年は何故か自分が支持してる王子の問題点を呟き、おっさんの警告のような指摘に賛同するように返した。
「…二人で協力してくれれば国は良い方に傾くと思うのだが…」
「それは難しいかと。今我々の意見が割れているように、必ず二択を迫られる時が来ます」
「うむ…お互いに重要視してるものが違う。いざという時にはお互い譲らないだろう」
おっさんがため息を吐いて呟くと青年も微妙な顔をしながら否定し、おっさんは二人体制で国を運営した場合の最悪の事態を想定して言う。
「…おっと、そうだ。ゼルハイト卿、あの大判焼きをお土産として貰えないだろうか?」
「あ、はい。いくつですか?」
「おっとそうだった。実は私も妻に頼まれてな…あの魔物素材で作ったパンをくれないか?」
話は終わったのか青年の思い出したような確認に俺が了承して個数を尋ねるとおっさんも思い出したように確認してくる。
…翌日。
「いやー、大変な事になったねぇ…まさかちょうど滞在中にこんな事が起きるなんて…」
「『共和国』が『帝国』にシフトした時よりかはまだインパクト薄いだろ」
「あー、まあ」
拠点に遊びに来た帝国の女の子の面白がっての発言に俺が比較するように返すと思い出すような感じで肯定した。
「ってか今思いついたが、故郷の共和国が帝国になるわ、他国へと滞在中に国王への反乱が起きるわ、そして王様の退位を知るわ…なんかソッチ中心に物語が動いてる感じがしない?」
「そう?…もしかしたら私主人公かもしれない」
「それかトラブルメーカーだな」
俺がふと思いついた事を言うと女の子は不思議そうに軽く首を傾げた後に冗談やボケを言うようにドヤ顔で言うので、俺は物語の主人公にありがちな属性を予想する。
「なにその人が疫病神みたいな言い方」
「さっさと国から出てってくれ。キングに進化して手がつけられなくなる前に」
「なんだと!お前の物件や土地を好き勝手に売り払ってやろうか!」
女の子の不満そうな言い方に俺がボケて返すと女の子は乗っかるように妨害行為を口にした。
「あ、そういやソッチから教えて貰った肉の巻き寿司、アレかなり好評だったぞ」
「え、マジ?ってか魔物の肉使えば料理法関係無くなんでも好評なんじゃ?」
俺が話題を変えるように料理の感想を教えると女の子は意外そうに返しながらも微妙な顔をする。
「海苔があればなお良かったんだが…どこを探しても取り扱ってないから全く手に入らんな」
「いやいや、海苔って日本人しか食べられないらしいよ」
「え、マジ?」
「うん。なんか外人は消化できないとか…あとは見た目が嫌とかだったはず」
「…マジか…」
本来の巻き寿司を作るには材料が足りない事に不満を感じながら言うと女の子は否定するように豆知識を話し…
俺が意外に思って確認すると肯定して理由を教えてくれたので俺は驚きながら呟いた。
「…じゃあ俺らも食べれなくね?」
「食べられはするんじゃない?多分消化出来ないからそのまま出てくるだけで」
「でも『あおさ』は売ってたぞ?乾燥してるやつだったけど」
「マジ?じゃあ中国とかそこらへんの大陸に近いトコから流れてきたとか?」
今の俺らの身体は明らかに日本人では無いので疑問に思って確認すると女の子は適当な予想を告げ、俺の思い出しての発言に意外そうに若干驚いたような反応をする。
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