青年期 328
ーーーーー
「…おーい!」
「…お」
「どうやら帰って来たみたいだね」
野営地の中で待つ事約二時間なるかならないかぐらいで遠くから声が聞こえて来た。
「見張りはどうしたー!また遊んでんのかー!」
おそらくこの少年達の仲間であろう声の主は少年達に向かって大声で叫びながら近づいてくる。
「おいおい誰か来たらどうす…っ!誰だ!?」
男は野営地の中に入って来ると分身の俺と分身のお姉さんを見て驚いた後に一気に警戒した様子を見せた。
「魔法協会に援軍を依頼されてね。まあ協会員はコッチのお姉さんで俺はただのおまけだけど」
「魔法協会…?」
「魔法協会だと…?」
分身の俺が余裕の態度で説明すると男達は警戒した様子のまま不思議そうに呟く。
「あんた達が厄介だから排除してくれ、って。まあ俺は平和主義者だから殺すつもりは無いけど…念のため最初に謝っとく、もし殺したらごめんね?」
「おっと。…お!ソレが本物の変化魔法かい」
分身の俺の余裕の態度のままの発言と謝罪に男達が目線でアイコンタクトを取ったかと思えば後ろから何者かに襲撃され…
分身の女性は軽く対応した後に襲いかかって来た奴がコボルトの姿になっているのを見て嬉しそうな反応をする。
「ちょっと待ってそれじゃ俺の…」
「いくぞ!」
「「おう!」」
分身の俺がツッコミを入れるように反論しようとするも直ぐに男達が魔物…コボルトの姿になって攻めかかって来た。
「…コボルト程度じゃなぁ…」
「全くだ。こんな雑魚じゃあたし達には勝てないよ」
三人…三体?の攻撃を余裕で避けながら微妙な顔で呟くと分身の女性は賛同してコボルト姿の相手を圧倒しながらこのままだと勝ち目が無い事を告げる。
「くっ…!こいつら、強いぞ…!」
「フェーズ2だ!移行するぞ!」
分身の女性の相手が苦戦するように呟くと分身の俺に攻めかかってる奴が指示や合図をするように叫ぶ。
すると男達は一旦元の人間の見た目へと戻るとオーガの姿に変身した。
「へぇ、『オーガ』か」
「必要無いと思うけど中級の魔物だから油断しないようにね」
「分かってる、よ!」
分身の女性が面白そうに笑って呟くので分身の俺が釘を刺すように普通の魔物とは勝手が違う事を注意すると、分身の女性は返事をして直ぐに剣で斬りかかる。
「ちぃ!なんだコイツは!」
「合わせろ!」
「おう!」
「残念」
オーガに変身した男三人…三体?の攻撃を余裕で避けていると、連携するかのように合図して前後から挟み潰すように突進するが…分身の俺は当たる直前に横に転がって避けた。
「…くっ…!」
「ははっ!オーガって守りを固めると意外と硬いもんだね。こりゃいつもの武器を持ってくるべきだったかな」
「そりゃ普通なら攻め一辺倒で皮膚や骨の硬さが守りの面を担ってるからね。力を入れて守りを固めればいつもより硬くもなるよ」
腕をクロスさせて守りを固める男に分身の女性はいつものように刃が通らないからか楽しそうに笑って若干悔やむような感じで言い、分身の俺は攻撃を避けながら理由を説明する。
「なるほど、魔物の特性や特徴を活かした立ち回りか…変化魔法ってのは厄介なもんだね」
「…なんだ?」
「交戦中か?」
「何があった!報告しろ!」
分身の女性が納得して理解したように笑うと野営地に男達がやって来て困惑したような様子を見せ、その中の一人が声を張り上げて分身の俺らと戦っている男達に命令した。
「敵二名と交戦中!目的不明!」
「よし!いくぞ!」
「おおっとぉ…囲まれるかもしれないけどいける?」
「…三人までなら」
分身の俺に攻めかかっていた一人が簡潔に報告すると隊長っぽい男が命令して男達が向かって来るので、分身の俺が確認すると分身の女性は一度に対応出来る数を告げる。
「オッケー」
「…なっ…!ぐっ…!」
分身の俺がカウンター気味に男の一人の顎に飛び膝蹴りを喰らわせた後に左手で角を掴んで脳天に右肘の振り下ろしを当てるも少しふらついただけだった。
「…流石に一発じゃ気絶しねぇか…」
そして直ぐに続けて二発目の肘打ちを同じ場所に当てると流石に気絶して変化魔法が解除され、元の人間の姿に戻って倒れる。
「なっ…!うおっ…!」
その様子を見て驚き、動きが一瞬止まった男の足を手で払うと倒れまいと右手を地面に着くが…
分身の俺はちょうど蹴りが届く高さにある頭の角を避けるように蹴って一発で気絶させた。
「…男の方を優先して囲め!女の方は…」
「あたしは場所移動するよ」
「はいよ」
「逃すか!」
「女の方を追います!」
隊長っぽい男の指揮に分身の女性が直ぐに逃げるようにその場を離れるとちょうど三人の男達が分身の女性を追って行く。
「…残ったのは5名か。って事は部隊の人数は指揮官含めて12名ってところかな」
「見習いを除いて10名だ」
「ほう?じゃああの少年達は見習いだから危険が及ばないように留守番させてたわけね」
分身の俺が周りを囲ってる人数を見て予想すると隊長っぽい男が否定するように訂正し、分身の俺は意外に思いながら返す。
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