青年期 300

「…うー…当たんない…!」



女の子は魔物の脚を狙って自動小銃を撃つも軽やかなステップで鮮やかに避けられ、翻弄されるように無駄弾を使わされて焦りながら呟く。



「もっと動きを良く見ろ。避けた瞬間じゃなくて避ける瞬間にアラジカが来るであろう場所に置くように撃つんだよ」


「そんなニュータイプみたいな事出来るわけないじゃん!あ、できた。なーんだ簡単じゃーん」



分身の俺がアドバイスをすると女の子は逆ギレするように返すも直ぐに実践して成功し、急に調子に乗り始める。



「私実はニュータイプかもしんない」


「ただの実戦経験から来る先読みだろ。本当にニュータイプってんなら猟銃で同じ事して一発で仕留めてみろよ」


「分かった、やってみる」


「いや、無理だろ…」



女の子の自慢して自称するような発言に分身の俺がツッコミを入れて無茶振りをすると女の子はやる気になり、分身の俺は否定的に呟く。




「…そこっ!」


「おー、惜しい。掠っただけだが中々のダメージだ」


「ちぇっ…」



魔物を見つけ、女の子が声を出して発砲すると魔物は回避しようとするも胴体に少し当たって倒れ…



分身の俺が感想を告げると女の子は残念そうに呟いて魔物が立ち上がる前に頭を拳銃で二発撃ち抜いた。



「一発で倒せなかったから次で倒せてもニュータイプのなり損ないだな」


「なり損ないでもニュータイプはニュータイプだから別にいいよ」


「…よく考えたら流石に三度目は経験による修正だから才能ってよりも努力の結果だし、ニュータイプって言っても強化人間の方が近くね?」


「『強化人間』かぁ…まあ強化魔法使ってるからあながち間違いじゃないからなぁ…」



分身の俺の弄るような発言に女の子は強がりのような事を言い、分身の俺が別の例えを挙げて確認すると女の子が満更でもなさそうな感じで呟く。



「…そこっ!」


「おおー、凄い。今のは完璧にドンピシャのタイミングだったな」



…三度目の正直で女の子は猟銃の一発で魔物を仕留め、分身の俺は拍手をしながら褒める。



「ってかソッチのアドバイス的確過ぎない?今魔物の動きが手に取るように分かったんだけど」


「ははは、これでも俺変化魔法の使い手だぞ?魔物の動きを観察するのが基礎で基本だし、何が出来て何が出来ないかなんて実際に変身して全て把握済みよ」



女の子の驚きながらの言葉に分身の俺は笑って返す。



「まあでも実際にモノに出来るかどうかは別だから…直ぐに吸収出来たのはソッチの実力が高かった、って事だろ」


「えー、そお?ま、私もこれでA級だからね。中級の魔物ぐらいは余裕で倒せないと」



分身の俺が謙遜して手柄を譲るように言うと女の子は全く謙遜せずに自分の実力を誇るように得意気になった。




「…うーん…流石にお腹空いて来たなぁ…」


「今何時だ?二時ぐらいか?」


「…ん。二時少し回ったぐらい」



…第七階層に向かって進んでいると女の子がお腹に手を当てて空腹を訴えてくるので分身の俺が時間を予想すると、女の子は時計を取り出して肯定する。



「じゃあ一旦昼飯にするか。今は焼肉しか作れんが」


「賛成!どっか小部屋探さないと…」


「確かコッチの方に…」



分身の俺の提案に女の子が賛同して休憩出来る場所を探すように周りを見渡し、分身の俺は案内するように歩く。



「おっ、ちょうど休憩スペースじゃん」



フロアの一画にある小部屋のような場所に着くと、どうやら魔物が寄り付かない休憩室だったらしく女の子が嬉しそうに言う。



「…焚き火が消されてそんな時間経ってないから誰か居たんだろうな、入れ違いになったか」


「でも来る時誰か見た?」


「違うルートで帰ったか進んだんだろ」


「あー…」



分身の俺が軽く周りを調べてから告げると女の子は不思議そうに聞き、分身の俺の予想に納得して呟いた。



「…ナイフ貸して」


「はい」



分身の俺は女の子からナイフを受け取った後にグリーズベアーの肉を切り、焚き火で熱したフライパンに乗せる。



「…なんでナイフは持ってないのに紙皿とかフライパンは持ってるの?」


「ソッチがナイフを持ってなければ剣で切るからナイフは別に無くても問題無いし」


「なるほど」



女の子の疑問に適当な感じで返すと簡単に納得した。



「…よく考えたらダンジョン内で料理ってすっげー久しぶりだな…」


「そうなの?なんかめっちゃ手慣れてるけど」


「いつも持ってるポーチには大量の食べ物が入ってるから食べ物に困って作る事が無い」


「あー…私も材料ならいっぱい持ってるけどそのままじゃ食べられない…事も無いけど美味しくないからなぁ…」



分身の俺が魔物の肉を焼きながら思い出すように呟くと女の子は意外そうに聞き、理由を話すと女の子は理解したように呟く。



「…はいよ」


「ありがと」


「ソッチはステーキソースとか持ってる?」


「一応持ってる。使う?」


「おう。ありがと」



分身の俺は焼いた肉を紙皿に移して女の子に渡しながら尋ねると、女の子が容器を取り出して確認するので分身の俺はありがたく使わせてもらう事に。



「うまっ!」


「うまっ。このソース美味いな」


「そりゃこの私の手作りだからね」



女の子が先に食べて感想を言い、分身の俺は自分の分にソースをかけて食べて褒めると女の子は嬉しそうに返す。

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