青年期 301
「…ふー、お腹いっぱい。じゃあ行こうか」
「ん」
およそ200gのステーキを三枚ペロリと平らげた女の子が満足そうに言って行動の再開を促し、分身の俺はそこらにあったシャベルを取って焚き火に砂をかけて消す。
そしてゴミ袋に使用済みの紙皿や木製のフォークを入れて片付け、二人で周りにゴミが落ちてないかを確認してから休憩室を離れる。
ーーーーー
「あ。ワーウルフってコッチでも出るんだ…もしかしてベオウルフも?」
第七階層に降りた後に女の子が魔物を発見すると意外そうに呟いて確認してきた。
「いるぞ。このダンジョンには出ないがな」
「へー…良かった。ベオウルフって学習能力高いから最初の一発で仕留められないとガンガン避けられてめっちゃ面倒だし」
分身の俺の肯定に女の子は安心したように返して理由を話す。
「今のソッチならアラジカと同じ対応で余裕だろ。流石に猟銃で一発、は動きを覚えてタイミングに慣れないと厳しいと思うけど」
「先読みの置き弾かぁ…まあ脚を先に潰すのは素早い魔物相手の対策としては定石だし」
魔物の威嚇のタイミングを狙って猟銃の一発で仕留めた女の子に分身の俺がアドバイスを送ると、女の子は考えるように呟いて素直に受け入れる。
「結局一発で倒せるんならソレに越した事はないから『動きが読めたら』狙うのも有りだな」
「…まあ本物のニュータイプでもない限り本番で一発成功は無理だよね」
「ソッチならサッサと決めようとせずにちゃんと観察すれば一発で成功すると思うが」
「え、そう?」
分身の俺が一部強調しながら難易度が高い方の技術の習得を勧めると女の子は適当な感じで返し…
分身の俺は女の子の実力と経験からの予想を話すと女の子が嬉しそうに確認した。
「…ワーウルフも人型だから肉落とさないんだよね?」
「落とさんな」
「ココから先で落とす魔物とかいる?」
「…運次第で、最下層のバイソンぐらいかな」
分身の俺が心臓潰しで魔物を倒した後に落ちた魔物素材を見ながら女の子が確認し、分身の俺の肯定に女の子は疑問を尋ねて来るので分身の俺は少し考えて答える。
「運次第かぁ…」
「本来ならこのダンジョンには居ないはずだし」
「まあダンジョンの最下層ってたまによく分からん魔物が湧いて出てくる事もあるからねぇ…」
「多分魔素の関係だろうよ。ダンジョンコアに近いから濃度的な問題で魔物の発生にバグみたいな挙動が起きてんじゃね?」
女の子の呟きにそう返すと不思議そうに呟くので分身の俺は適当な予想と想定を告げた。
「あー…そっか。降魔の時期と似たような現象が起きてる可能性があるのか」
「まあ俺の仮説でしかないから実際あってるかは知らんけど」
「大体あってるんじゃない?そう言われたら納得するし」
女の子が納得して理解したように呟き、分身の俺が予防線を張るように返すと女の子は適当な感じで肯定する。
「そういえばコッチの国ではダンジョンコアを壊すとかやらかした人いる?」
「俺がハンターになってからは聞いた事が無い。ただ…この国の歴史上では何人か居たみたいだが」
「普通そうだよね。普通はやらかす奴なんて見た事無いよね」
「ソッチの帝国でも無いだろ?」
女の子のふと思いついたような確認に分身の俺が否定して補足するように返すと女の子はどこか引っかかる言い方をするので分身の俺は確認し返す。
「ウチは居たよ」
「マジで!?」
女の子が意外な返答をするので分身の俺は驚きのあまり足が止まって聞き返した。
「まだ帝国になる前で士官学校の頃だったから…7、8年ぐらい前かな?」
「…流石に国の管理下のダンジョンじゃないよな?」
「それがねー、管理下のダンジョンなんだ。しかも初心者用のFクラスダンジョン」
「…マジか…」
女の子の思い出すような発言に分身の俺が微妙な顔をしながら確認すると女の子は呆れたように話し、分身の俺も呆れながら呟く。
「なんか貴族のお坊ちゃんが力を示すためにやったらしいけど…」
「いやー…下流貴族なら死刑でお家取り潰しだろ。上流でもそんな事やらかしたら最悪お家取り潰しだし、没落は絶対に免れんぞ」
「たとえ王族でも権利剥奪の上、国外追放処分だもんね」
女の子がやらかした理由を話し、分身の俺がヤバ…と若干ヒきながら返すと女の子も事の重大さを示すように告げる。
「で?ソイツはどうなったんだ?」
「かなり薄いけど一応王族の血が入ってる、っ事で追放処分で済んだ。代わりにお家取り潰しになったけど」
「めちゃくちゃ甘い対応だな。あの帝国にしては意外だ」
「まだその時は共和国だったし。まあソレを機に色々あって今の帝国になったんだけど」
分身の俺の問いに女の子はやらかした貴族のその後を教えてくれ、分身の俺が意外に思いながら言うと女の子が適当な感じで返す。
「ふーん…貴族の子息だったとはいえ一人のやらかしで国が変わるってのもバタフライエフェクトにしては凄い事だな」
「まあ、あそこでやらかさなくてもいずれの話だし…結局、早いか遅いかの違いでしかなかったと思うよ」
分身の俺が適当な感じで言うと女の子は微妙な顔でそう返した。
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