青年期 291
ーーー
「…なんか、ソッチの戦い方見てて思うんだけど…やっぱ握力ヤバくない?どんだけ強化魔法のバフかけてんの?」
第一階層のゴブリン達を倒しながら進んでいると、第二階層の階段が見えてきたところで4体目のゴブリンを倒した後に女の子が確認するように聞いてきた。
「今は強化魔法どころか何もしてないぞ」
「え!?嘘でしょ?」
「マジマジ。まあ今はこんな見た目だけど本来の俺は筋肉ダルマだからな」
「…どゆこと?」
分身の俺の否定に女の子が驚いて確認し、理由を話すように返すと女の子は理解出来なかったらしく不思議そうに首を傾げる。
「俺は相手を油断させるために昔から変化魔法で見た目を抑えてるわけよ」
「…変化魔法ってそんなことも出来んの?そんなん一切聞いた事無いけど」
「まあ出来てるから出来るんだろ。他の奴が出来るかどうかは知らんけど」
分身の俺が軽く説明すると女の子は驚きながら疑うように聞き、分身の俺は適当な感じで肯定的に返す。
「ええ…そんな適当な…」
「ちなみに本来の俺の今の基礎スペックで言えば身長は199ぐらいで230キロぐらいだから…握力は420ぐらいかな?大体そんな感じ」
「…マジ?」
女の子の呆れたような呟きに分身の俺が予想を教えると疑うような顔で確認してきた。
「ゴブリンの頭を握り潰すのを実際に見ても信じられないんならもう俺が何言っても無駄じゃん」
「それは…そうだけど…」
分身の俺が投げやりに言うと女の子は納得いかない感じで呟く。
「まあでも今は170の50だから外見からは信じられないのも無理は無いけど」
「細っ!170で50ってめっちゃガリガリじゃん!ほぼ骨と皮だよ!」
「だからみんな油断してくれんだよ。ソッチみたいに。ありがたい事だ」
分身の俺はフォローするように一定の理解を示して言うと女の子が驚きながらツッコむように指摘するので、皮肉混じりにソレが効果的である事を告げる。
「ってかソッチの言う事が本当なら約230kgの筋肉量と筋力を50kgの体重で発揮してる事になるんだけど…」
「俺だけ重力が1/5の世界になってるみたいなもんだな」
「うわ、めちゃくちゃインチキ。そりゃそんな状況下なら確かに強いわ」
女の子の確認に分身の俺が分かりやすく例えを挙げて肯定すると女の子は羨ましがるように返す。
「…だったらあなたのその硬さって筋肉で弾いてるから?」
「いや、普通に部位鍛錬で鍛えたから骨や皮が単純に強くなってるだけ」
「…力が強くて身体が硬いって単純な強みだけど、そこまでいくともはや異能の域でしょ。強化魔法も必要無いわけだ」
女の子がふとした疑問を聞くので否定して答えると微妙な顔をしながら何故か呆れたように納得した。
「そう考えたら素でもヤバいのにソコから強化魔法なんて使ったらバフで手がつけられなくなるんじゃない?」
「ん~…人間相手には使った事無いし、ダンジョンでも…基本的に変化魔法で事足りるから、厄災の龍ぐらいかな?強化魔法を使った事がある魔物ってなると」
「…やっぱり人類を滅亡させる事の出来るレベルの魔物は別格だなぁ…」
女の子はふと思いついたような疑問を尋ね、分身の俺が考えながら答えると何故か俺の強さを基準に厄災の龍の危険度を再認識するかのように呟く。
「…お、いた。スライムだ」
「げ。スライムかぁ…」
…そんなこんな雑談しながら第二階層に降りると魔物を発見したので分身の俺が報告するように言うと女の子は嫌そうな顔をする。
「スライムは一撃で倒すとなると貫通用の弾丸を使わないといけないからコスパが悪いんだよなぁ…」
女の子は嫌そうな顔をしたまま理由を告げると拳銃を構えて魔物に発砲し…
弾丸がピンポイントでスライムの被膜を掠るように当たるとソコから体液がドロッと流れ出た。
「…あー、めんど」
そしてスライムの核が剥き出しになると女の子が地面の体液を避けるように近付いて核を踏み砕く。
「アレなら放って置いても良かったんじゃね?」
「でもたまに復活する時あるじゃん?帰り道に襲われたらヤだし」
分身の俺の発言に女の子はわざわざトドメを刺した理由を告げる。
「あー…なるほど。俺はまだ経験無いが、核だけの状態から復活したら凶暴になるんだっけ?」
「そうそう。昔一回帰りに襲われた事があってね…ちょうど弾切れしてて焦ってたから剣が一本ダメになった」
まあ安物だったから別に良かったんだけど…と、女の子は分身の俺の納得しながらの確認に肯定して経験談を話した。
「ま、戦う必要が無ければ無駄に相手せずスルーするのが一番だな」
「そうだね。あ、いた」
分身の俺が適当な感じで対策を告げると女の子は同意して次の魔物を発見する。
「流石にスライムも素手ってわけには…いくんかい」
「貫手で核を刺せば一発よ」
「いや普通腕が溶けるでしょ。なのになんで当たり前のように無傷なのさ、流石におかしくない?」
女の子は分身の俺の戦いを観察するように呟くとその様子を見てツッコミを入れ、分身の俺が楽観的な感じで適当に返すと女の子がまたしてもツッコミを入れながら疑問を尋ねてきた。
「部位鍛錬で慣れてるからな」
「…そういえば火に包まれても平気なんだっけ?めちゃくちゃ凄いけど、そうなるまでが正気の沙汰じゃなさ過ぎて全然羨ましくないやつ…」
分身の俺の返答に女の子は微妙な顔で思い出すように確認すると過程を想像したのか、ドン引きした様子で呟く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます