青年期 290

「…うわ、マジで防具とか着けないんだ」



…ダンジョンの入口で女の子が武器や防具を取り出して軽く確認や点検をした後に防具を着けると…



ただ突っ立って見ながら待っていた分身の俺を見て女の子は若干ヒいた様子で言う。



「ソッチは修行や鍛錬をする時に今と同じ準備や格好をする?」


「…下手したら命を落とす危険があるダンジョンと命の安全が保障されてるトレーニングを同列に語る?普通」


「あ、俺の例えが悪かったかもしれん」


「いや、もう今のであなたがどう考えてどう捉えてるか十分に理解できたよ」



分身の俺が反論するように聞くと呆れたように聞き返され、自分の非を認めるように言うと女の子は微妙な顔をしながら返す。



「素で常在戦場の精神とか噂通りの戦闘狂過ぎて感動すら覚えるよ」


「ソレ良く言われるけど、俺一応平和主義者を目指してるつもりだから『戦闘狂』って言われると反射的に反論したくなるんだけど」


「…まあ確かに『平和主義者』ではあるよね。でも『戦闘狂』の一面も確実にあるから二重人格みたいになってるけど」


「…ぐぬぅ…否定できん…」



女の子の呆れながらの言葉に分身の俺が反発するように返すと女の子は微妙な顔のまま肯定するように言い、俺は反論出来ないので唸るように呟いた。




「…よし。じゃあ行こうか」



女の子はピストルのような拳銃の弾倉を確認して腰に巻いたホルスターに二丁納め、アサルトライフルみたいな自動小銃とショットガンのような猟銃を肩に掛けて出発の合図をする。



「へぇ、銃の種類も色々あるもんだな」


「近、中、遠距離のオールレンジ用で揃えて作るのめちゃくちゃ大変だった。パーツだって最近ようやく揃ったぐらいに作るのが難しいから量産出来なくてコレ全部実質私のワンオフだし」


「へー、しかし良く作れたもんだ。俺にもある程度の知識はあるが作るのは無理で不可能だって早々に諦めたのに」



分身の俺が意外に思いながら言うと女の子は今に至るまでの苦労を語り始め、分身の俺は感心して返した後に猟銃を掴んで確かめるように見ながら返した。



「あなたがずっと料理を勉強してたみたいに私も銃を作るために色々と試行錯誤を重ねて勉強してたからね」


「ふーん…それにしてもよく細かい構造や仕組みとかを分かってたもんだな」



ダンジョンに入りながら女の子がドヤ顔で得意気に話すので、分身の俺は猟銃を借りるように女の子の肩から取って片目を瞑って構えながら疑問を呟く。



「一時期FPSのゲームにハマって銃火器を調べてたことがあって」


「…女は一度ハマると結構どっぷりいくからな…ほい」


「ん。でも調べてもあんま意味無かったんだよね…武器の事を知って知識を深めたらゲームに有利になるかと思ったのに。なのに現実の銃はゲームの銃とだいぶ違ったし」


「そりゃそうだ。ゲームってのはあくまで楽しむためだからな、不要なリアリティは普通に削るだろ」



女の子は銃の構造を知ってた理由を話し、分身の俺が納得して呟きながら猟銃を返すと受け取って肩に掛け…



女の子が愚痴るようにため息混じりに言うので分身の俺は肯定して開発者側の思惑を予想する。



「…あ、ゴブリン」



女の子は魔物を発見すると即座にホルスターから拳銃を抜いて構えるや否や発砲し、弾丸が見事に魔物の頭に命中して倒れた。



「おお。一撃か…初めて見た時も思ったが、本当に良い腕してるな」


「そりゃ日々頑張って腕を磨いてるからね」



女の子の素早く正確で、かつ威力の高い射撃を褒めると女の子は嬉しそうな顔をする。



「…しかしゴブリンでも骨の硬さはただの一般人よりも硬いはずだがな…それでも一撃とは」


「一応コレでも実弾の中では一番威力が低いヤツだよ。低階層の雑魚ぐらいなら頭や心臓に当たれば一撃で殺せるけど」



分身の俺が落ちた爪を拾いながら呟くと女の子は地面に落ちた薬莢を拾って説明した。



「へー。やっぱり銃は反則級に強ぇな」


「…あなたがソレを言ってもただの嫌味にしかならないけどね。コレでもBB弾どころか豆鉄砲レベルって…」



分身の俺の感想に女の子は微妙な顔でツッコむように返して根に持ってるかのような事を言う。



「…おっと。次は俺の番か」



するとまた魔物を発見したので分身の俺は女の子に今度は自分が相手をする事を告げて魔物に近づく。



「ギー!ギー!…ギッ…!」


「…ほぼ棒立ちじゃん…なんでソレでかすり傷一つ付かないの…?」



いつも通りゴブリンの攻撃をある程度受けた後にいつもと違って首じゃなく頭を掴み、握力で握り潰して倒すと女の子がドン引きしたように呟いた。



「ってかゴブリンの頭握り潰すとか倒し方えぐっ。そんなん出来るんなら攻撃受ける必要なく無い?」


「部位鍛錬だからな。攻撃を受けずに速攻で倒したら意味無いだろ」


「…マジで良くこんなんで今まで五体満足で生きてけたね…いや、コレで生き残れたからこそ強くなったとか…?」



女の子の確認に分身の俺が反論するように返すと微妙な顔で呟き、前言撤回するような感じで逆説的っぽい事を考え始める。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る