青年期 257

「…ご馳走様。美味しかった」


「そりゃ良かった」


「…で、そういや何の用で来たの?」



食パンを食べ終わった女の子が手を合わせて食事が終わった挨拶を言い、分身の俺が生肉やスライスチーズを片付けると女の子はふと思いついたように尋ねてくる。



「ああ、そうそう。明日帝国に連れてくからもう一度皇帝陛下に取り次いでくれね?」


「えっ!?皇帝陛下に!?」


「直接が無理なら元帥に頼むとかでもいいから」


「…努力はしてみる…けど、じゃあ今日の内に帝国に連れてってくれない?明日の朝イチに謁見できるよう一応交渉してみるから」



分身の俺のお願いに女の子は驚いたように聞き返し、分身の俺が妥協案を話すと女の子が少し考えて条件を提示して理由を告げた。



「オッケー。じゃあ行くか」


「待って!10分時間ちょうだい!みんなに私が離れてる間の指示を出さないといけないし」


「あー…じゃあ10分といわず準備が終わってからにしよう。別にそんな急ぐ事でもないし」


「さっすが!助かる!みんな、話は聞いたでしょ?」



分身の俺は了承して直ぐに行動に移そうとするも女の子に制止され、気を遣って準備の完了を待つ事にすると女の子が喜んで直ぐに会議を始める。



…その後、女の子を帝国へと送り…魔法協会の代表者である少女に杖を返しての翌日。



「おはよう」


「おはようございます」



まだ日が昇る前に少女の居る部屋を訪ね、ドアをノックして挨拶すると既に出かける格好をしている少女が出て来て挨拶を返す。



「んじゃ、行こうか」


「よろしくお願いします」



分身の俺が移動を促すと女の子は軽く頭を下げて礼儀正しく返すので…



あの女の子と同様に目隠しと耳栓をしてもらい、毛布で簀巻きにして帝国まで運んだ。






ーーーーー






「いやー、偉い人なのにこんな手荒な真似をして済まないね」


「構いません。ゼルハイト様ならば秘匿事項に価する技術をどれほど有しているのか分かりませんので。中には人には見られたくない…秘密にしておきたいモノもあるでしょう」


「…そう言ってくれると助かるよ」



帝都の近くで少女を解放して謝ると、気にしてないかのように返した後に理解を示している事を告げ…



分身の俺はなんか過大評価されてね…?と思いながら微妙な顔で返す。



「とりあえずコッチ」


「分かりました」



また何か言われる前にさっさと案内するかのごとく分身の俺は帝都を指差して移動する。



「ん?お前は…」


「やーやー、ご苦労さん」


「…昨日、連れが一人居ると言っていたな…ソイツか?」


「…まあいい。中将から通すよう言われてるんだ、とっとと入れ」



帝都の門の前に居た守兵に手を上げながら挨拶代わりに労いの言葉をかけると兵の一人が少女を不思議そうに見るが、もう一人の兵が面倒くさそうに通行許可を出した。



「…ゼルハイト様ともなると帝国の中心部にもこうも簡単に入れるのですね」


「ははは、まあね」


「あ、もう来たの?」



少女の驚きながらの発言に分身の俺が笑って返すと、女の子が目の前から歩いて来て若干驚いたように声をかけてくる。



「お。はよー、どうだった?」


「なんとかオッケーもらった。その子が?」



分身の俺が挨拶して確認すると女の子はオーケーポーズを取りながら返し、少女を見ながら確認し返してきた。



「そうそう。なんでも皇帝陛下に用があるんだとか」


「ふーん…じゃあ行こうか。待たせると面倒だし」



分身の肯定に女の子は珍しいそうに呟くも少女の素性について特に言及や追及はせずに案内するように先を歩き始める。



「…ゼルハイト様、彼女はご友人ですか?」


「んー…多分。つい先日知り合ったばっかだけど」


「流石の人望ですね」


「…まあね」



少女の小声での問いに分身の俺が若干困りながら返すと少女が褒めてくるので分身の俺は微妙な気分になりながら流すように返す。



…そんなこんな歩く事、20分後。



宮殿のような建物に着き、女の子が許可を貰って皇帝陛下の居るであろう最上階の奥の部屋へと向かう。



「…陛下。客人をお連れしました」


「入れ」


「失礼します」


「「失礼します」」



女の子がドアをノックして用件を告げると入室許可が下り、中に入ると…



部屋の外には近衛兵が二人居るにも関わらず、青年の両隣には元帥のおじさんとマスタークラスのハンターである男が控えるように立っていた。



「…突然何用だ?ゼルハイト殿」


「えーと…」


「…お初お目にかかります。私は魔法協会の当代代表者の座に就いております『アンネリーゼ・マーリン』と申します。以後お見知り置きを」


「「「なっ…!!?」」」「えっ!!??」



青年の問いに分身の俺が少女を見ながら呟くと少女が軽く頭を下げて自己紹介を始め、その場に居た帝国側のみんなが驚愕する。



「と、まあそういうわけでして…今回自分は仲介役や護衛として陛下に謁見を申し出た次第であります」


「よろしくお願いします」



みんなが固まる中、分身の俺は軽い感じで現状を説明するように話すと少女がそう言いながら青年の対面の椅子に座った。

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