青年期 258

「…ま、マジ…?」


「マジマジ。ガチなやつよ」


「だ、だって…いくらなんでも見た目おかしくない…?」



少女を指さしながら確認する女の子に分身の俺が肯定しながら真実である事を告げると女の子は少女の見た目に言及する。



「俺も思った。でもまあ若返りの秘術で一回若返ってるみたいだし」


「若返りの秘術!?そんなんあんの!?」


「あるある。じゃないとソッチが言った通り見た目がおかしい事になるだろ。エルフじゃねぇんだから」


「…そりゃそうだけど…」



分身の俺が同意しながら少女の見た目になった理由を話すと女の子が驚愕して確認し、分身の俺は肯定してツッコミを入れるように返すも女の子は少女を見てまだ納得いかないように呟く。



「…私はこのロンゴニア帝国の初代皇帝である『ネロ・アレキサンダウス・ウル・ガイアス』だ」


「存じております」


「…名前長くね?」


「元々は『ネロ・ガイアス』だったんだけど…昔の帝国だった時代の皇帝から名前を取って付けたんだって」


「へー」



青年の威圧的な自己紹介に少女は全く動じず微笑みながら返し、分身の俺が小声で聞くと女の子は小声で教えてくれた。



「それで?魔法協会の代表者殿が何のご用かな?」


「この手紙を拝見し、賠償についての詳細を話し合いたいと思いまして」


「ほう…?それでわざわざ敵地である帝国に単身赴いた、と?」


「いえいえ。何を仰います、自分が居るじゃないですか。先ほど仲介役と護衛と申し上げたでしょう」


「…直接仲介したのは私だけどね」



青年が威圧感を醸し出しながらの笑顔で尋ねると少女は手紙を出して用件を話し、青年の脅すような発言に分身の俺が割って入って否定しながら脅し返すと女の子がボソッと自分の手柄を主張するように呟く。



「ダッソ。あやつを何分足止め出来る?」


「ゼルハイトさんの気分次第ですが…遊んでくれるのなら5分は固いかと。ですので陛下、何卒刺激するのは避けるようお願いいたします」


「十分だ。元帥、中将、この者を捕えるのにどのくらいかかる?」


「陛下」「一分ほどで」「30秒あれば」



青年の問いに男が分身の俺を見ながら困惑したように予想を答え、忠告するように言うも青年は挑発するように女の子やおじさんに尋ね…



男の止めるような言葉と女の子とおじさんの返答が被る。



「ふふっ…あまり私を甘く見ないほうがよろしいですよ?」


「ふっ…これからは精々言葉に気をつける事だな。私の気分次第で…」


「…ん?」


「…な、なんだかお腹空いたなー。朝ごはん食べてないからかなー?」



少女が煽るように挑発的に返すと青年も煽り返すように言い…



女の子はバチバチで一触即発の張り詰めたような危うい雰囲気を変えようと口からグウゥーと腹の音を出すと腹をさすりながら言い訳するように言う。



「そういや朝ごはんまだだっけ?腹が減ると人間気性が荒くなるもんな…」


「そ、そうですね!僕も実はお腹ぺこぺこだったんですよ。陛下の手前言い出せなかったですけど」


「あのパンちょうだい!まだ余ってるでしょ?」



分身の俺が乗っかるように呟くと男も賛同して乗っかり、女の子は昨日あげた食パンを要求してきた。



「ええ…アレ最後の一本だぞ」


「また作ればいいじゃん!…ほら、材料費あげるから」


「お。じゃあしょうがないな」



分身の俺の嫌がるような返事に女の子は大判の金貨を三枚取り出して渡しながら交渉してくるので分身の俺は了承する事に。



「みんなにもお願い。私のおごりって事で」


「はいはい」



女の子が太っ腹な事を言い出し、分身の俺は変化魔法を使って手を綺麗にした後に空間魔法の施されたポーチから紙皿と食パンを一本取り出す。



「「「…これは…!」」」


「やっぱりうまっ」


「…これは…この味…もしや、原料に魔物素材を使用してるのでは?」



切った食パンを一口食べた青年とおじさんと少女が同時に驚き、女の子が喜びながらパクパク食べると男が確認するように予想を尋ねてくる。



「おっ、凄い。たった一口で分かるなんて」


「やはり…!5年前に一度だけ、特殊ダンジョンがある国で食べた事があるんです!」


「「へー」」


「確かその国では数年に一度、選ばれた者しか食べられない『幻のパン』って呼ばれてました」



分身の俺が意外に思いながら褒めるように言うと男は気づいた理由を言い、分身の俺と女の子の反応が被ると男が思い出すように話した。



「まあ植物系の魔物なんて珍しいからな…俺もこの前初めて見たばっかだし」


「私なんて図鑑でしか見た事無いよ。そんな特殊ダンジョンなんてこの国には無いし」



分身の俺の納得するような発言に女の子も賛同するように返す。



「…その幻のパン、というのもこのように柔らかいのですか?」


「いえ、食感は全く違い…普通よりも少々固いパンでした。味は普通のパンと比べたらとても美味しかったですが、このパンと比べたら…」



少女が疑問を尋ねると男は否定して当時の記憶を思い出すように答える。



「…なるほど。材料だけではこのような素晴らしいパンは作れないのですね」


「フライパンと火があればこの食パンを使って小倉トーストとかフレンチトーストとか作れるんだけどねぇ」


「…調理場に行けば作れない?ってかアンコとかまだあるの?」



少女は分身の俺を見ながら納得したように言い、分身の俺がもっと美味しく出来る事を告げると女の子が提案して確認してきた。



「あとボウル二つ分は残ってるけど…俺、一応護衛だから側から離れられないし」



目を離した隙に陛下に何をされるか…と、分身の俺は青年を見ながら警戒するように皮肉と嫌味を言う。

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