青年期 252
…その後。
来た時と同じく女の子に目隠しと耳栓をした後に毛布で簀巻きにしてドラゴンに変身し、大公国へと戻る。
「…おーい。着いたぞー」
「…ん?あっ」
海岸の拠点近くに降りて目隠しを外すと女の子は寝ていたので分身の俺は耳栓と簀巻きを外して女の子を起こす。
「…もう着いたの…?ふあぁ~…」
「どうやら寝るほど快適だったようで」
「いやー、目の前真っ暗で何も聞こえずに毛布に包まれているとつい…ね」
女の子があくびをしながら立ち上がり、分身の俺の弄るような言葉に女の子は笑いながら答えた。
「んじゃ、退却の方よろしく」
「ん。絶対に後ろから襲わないでよ」
分身の俺の指示に女の子は了承すると笑いながら弄り返すように言う。
「当たり前じゃん。そんな事する必要も無くなったし」
「それもそうか。じゃあね」
「おう」
分身の俺が肯定して理由を話すと女の子は納得して手を振りながら拠点に向かうので分身の俺も分身のお姉さんや女性の所に戻る事に。
ーーーーー
「…ただいまー。どんな感じ?」
「まだ敵に動きは無いね」
「やっぱり鉄砲を使えないのが痛いんですかね?」
分身の俺は挨拶しながら状況を尋ねると分身の女性が報告し、分身のお姉さんが敵の考えを予想する。
「まあとりあえず帝国との交渉に成功したから直ぐに退却してくれるらしいよ」
「えっ!?」
「やっぱりあのメテオダイブが効いたんでしょうね」
分身の俺の報告に分身の女性が驚くも分身のお姉さんは笑いながら返した。
「…本当に信じられるのかい?」
「皇帝陛下が『帝命』とか言ってたから大丈夫じゃない?」
「は?」「え?」
分身の女性は疑うように尋ね、分身の俺が楽観的に返すと分身の女性とお姉さんの反応が被る。
「流石に皇帝陛下が退却しろ、って命じてんだから逆らうのは無理だと思うよ。元帥や中将もその判断に同意してるし」
「…どういう事なんだ…?」
「…もしかして坊ちゃん、帝国まで直接交渉しに行ったんですか?」
「成り行きでね」
分身の俺が帝国が退却する理由を説明すると分身の女性は困惑したように呟き、分身のお姉さんの確認に分身の俺は肯定した。
「…なるほど。じゃあ帝国が退却するのも時間の問題だね」
「皇帝と直接交渉なんて凄いですね!」
「まあ結構際どかったけど」
分身の女性は少し考えて理解したように言うと分身のお姉さんが褒めて来たが分身の俺はそう簡単では無かった事を告げる。
…その翌日。
昼過ぎに斥候の兵士からの報告で最前線の町に居た兵士達が急いで退却するように町から出て行った…との報告が。
「へえ、本当に退却して行くんだ。罠の可能性も疑ってたけど…」
「これで報告に行けますね」
分身の女性の意外そうな発言に分身のお姉さんが早速首都へと戻ろうとした。
「…いや、一応明日の昼過ぎまで様子を見ようか。可能性は低いけど、気性の荒い部下に反発されて指揮権を奪われて…って展開もあるかもしれないし」
「ああ…確かに。裏を知らないとこんな優勢の状況からの撤退に納得出来ずに暴れるのが居てもおかしくはない」
「なるほど…分かりました」
分身の俺が少し考え、万が一に備えてまだココに留まる事を決めて理由を話すと分身の女性は納得して賛同するように返し、分身のお姉さんも賛同する。
更に翌日。
「報告!帝国の兵が『司令官に会わせろ』などと申しておりますが、いかがいたしましょうか!」
「…帝国の兵が?…通していいよ」
「はっ!」
昼前に味方の兵が意外な報告をしてきて分身の俺は不思議に思いながらも許可を出す。
「おっつー」
「おう、お疲れ。で、何の用だ?」
…5分ぐらいして連れて来られた女の子は笑いながら手を上げて気軽な挨拶をするので分身の俺も手を上げて挨拶を返して用件を問う。
「コレ。魔法協会のトップに渡してくれない?」
「手紙?」
「今回のお詫びとしてお金あげるから手打ちにして、って書いてある」
「へー、魔法協会が断ったらどうすんの?」
「そりゃ金渡さずに終わりでしょ。魔法協会が戦争仕掛けてくるんならあなたは参加しなさそうだし、ソレなら余裕でウチが勝つからね」
女の子が渡して来た手紙を不思議に思いながら受け取ると中身を教えてくれ、単純な疑問として尋ねると女の子はアッサリと言った後に余裕の笑みを浮かべながら告げた。
「ただの脅しじゃねぇか」
「コッチも脅されたんだからこのくらいの仕返しぐらいはしないとね」
「いや、元々お前らが原因で始まった事じゃん」
「う…」
分身の俺の笑いながらのツッコミを入れるような発言に女の子はいかにも当然の権利のように言い、再度ツッコむように指摘すると女の子は言葉に詰まる。
「と、とにかく!渡すもんは渡したからちゃんと届けてよ!私はもう行くから」
「おっとぉ?逃げんのか?」
「はあ!?逃げじゃないし!何言ってんの!?あなたが兵を退却させろって言うからコッチはめっちゃ忙しいんですけど!?あなたのせいでめちゃくちゃ忙しいんですけど!?」
女の子が念を押した後に逃げるように戻ろうとし、分身の俺の弄るような挑発に急に詰め寄って来て言い訳でもするようにキレながら怒鳴り始める。
「分かった分かった。悪かったよ、ご苦労さん」
「…じゃあね」
分身の俺の流すような対応に女の子は冷静になると挨拶をしてそそくさと戻って行った。
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