青年期 253
…そして昼食後。
流石にもう大丈夫だろう…と、魔法協会のトップである少女へと報告しに行く事に。
「…報告は既に聞いております。帝国の軍が退却している、と」
「お。話が早くて助かるなぁ…じゃあコレ、その帝国からの手紙」
分身の俺らが案内役の男と一緒に少女の部屋に入ると少女は俺らが報告するよりも先に告げて来るので分身の俺は手紙を渡す。
「…手紙、ですか?分かりました。では後で拝見いたします」
「さて、これで用も済んだし観光してから帰ろうか」
「そうだね」
「はい」
少女が手紙を受け取り、分身の俺は用が済んだので部屋から出ながら予定を告げると分身の女性とお姉さんが賛同する。
ーーーーー
「…あの…」
「ん?」
夕方、あともう少しで帰る時間だなー…と考えながら観光していると魔法協会のトップである少女が街中で話しかけてきた。
「帝国からのお手紙の件なのですが…」
「…何かあった?」
「あ、いえ、賠償の事が書かれておりましたのでどのように『交渉』したのか後学のためにお教えしてもらえませんか?」
少女の話の切り出し方に分身の俺が若干不安に思いつつ聞くも少女は疑問を解消したいかのように尋ねる。
「うーん…話すと少し時間かかるよ?」
「構いません」
「そういやあたしも気になるね」
「坊ちゃんの事だからどうせ『そのまま続けて全滅するか、兵力温存して無駄な犠牲を無くすために退却するか…為政者として賢明な判断をしろ』とでも言ったんじゃないですか?」
分身の俺が少し考えて確認すると少女は了承し、分身の女性も興味が湧いたように聞くと分身のお姉さんが笑いながら弄るように予想を話した。
「おお、流石は先生。よく分かってる」
「いつもの坊ちゃんの常套句ですからね」
「…いや、ソレ交渉じゃなくて脅しだと思うんだけど…」
「ある意味で『説得』のようにも思えますが…本来なら到底受け入れてもらえない内容を、どのように信じさせたのですか?」
分身の俺の肯定しながらの褒め言葉に分身のお姉さんは得意気に笑って返し、分身の女性が微妙な顔で呟くと少女が疑問を尋ねてくる。
「まあ相手の察しが良かった、ってのもある。俺が本気なのを見抜けるぐらいだし」
「へぇ、鉄砲頼りのただの恥知らず…ってわけじゃなかったんだ」
「そもそも中継地点を三つ破壊して町を一つ奪い返した時点で根拠として成立しますからね」
「…なるほど…」
分身の俺は詳細を話すのが面倒になって敵を評価して褒めるように言うと分身の女性が意外そうに言い、分身のお姉さんの説明に少女が納得したように呟いた。
「でもどうやって帝国の皇帝に会えたんだい?」
「現場の司令官に交渉に行ったら『自分一人の判断じゃ無理だから上の方に言って』って言われて帝国に連れてったらその上の人が『皇帝陛下に会わせてやるから直接言え』ってなって」
「…帝国の、皇帝陛下に直接交渉したんですか…!?」
「そうそう。だから手紙には賠償金とか書かれてたでしょ?」
分身の女性の質問に分身の俺が簡単に経緯を話すと少女が驚愕し、分身の俺は軽い感じで確認する。
「で、ですが、帝国までは飛行船で急いだとしても往復に4日はかかるはず…報告と照らし合わせるとゼルハイト様が複数人居る事になりますが…」
「…往復には確か二時間ぐらいだったはず…多分」
「二時間!?しかも往復でですか!?」
少女が矛盾を指摘するように言うので分身のお姉さんと女性が微妙な顔をする中、分身の俺が移動時間を大体の予想で告げると少女は驚愕しながら確認して来た。
「まあ信じる信じないは任せるけど」
「…それは……では、私を今帝国に連れて行く事も可能ですか?」
「…出来るけど…今魔法協会のトップが帝国に行くなんて飛んで火に入る夏の虫とか、空腹の猛獣の檻に生肉を投げ入れるがごとしだよ?めちゃくちゃ危険だと思うけど」
「「確かに」」
分身の俺の適当な返事に少女は困惑しながら確認して来たが内容が内容なので…
分身の俺が止めるようにことわざや例えを挙げると分身のお姉さんと女性も同意する。
「構いません。今の状態ならば少しは腕に覚えがありますので自分の身ぐらいは守れると思います」
「…腕に覚えがあるってんなら余計に危ないんじゃないかな?アッチには俺と同じマスタークラスのハンターが控えてるし」
「「えっ!?」」
少女は自衛出来る程度の実力はあるらしいが分身の俺が更に止めるように帝国側の情報を話すと分身の二人が驚いた。
「って事は一騎打ちを?」
「する予定ではあったんだけど、相手が辞退したから結局はやらなかった。俺としては是非とも戦ってみたかったけど…やる気の無い奴と戦ってもしょうがないから諦めた」
「…まあ同じマスタークラスなら坊ちゃんの強さを正確に理解しているでしょうし…ある程度戦いにはなったとしても、結局勝てない事を察して戦いを避けるでしょうね」
分身の女性の問いに分身の俺が答えると分身のお姉さんは相手の判断を納得したように返す。
「あたしでも流石にマスタークラスのハンターには戦いを挑む気にはなれないなぁ…避けられない戦いならともかく」
すると分身の女性も微妙な感じで笑いながら分身のお姉さんに賛同するかのような事を言う。
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