子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても大丈夫！

青年期 234

「…でもそんなに詳しいあんたでも作れないような物を帝国側はどうやって作ったんだい？」

「さあ？知識のある奴が職人達に構造を伝えてパーツを作らせて、そこから試行錯誤したとかじゃない？」

「「なるほど…」」

分身の女性がふとしたような疑問を尋ね、分身の俺は『転生者』や『転移者』、『チート』に『前世の記憶』が…とかは言えないので適当に濁して予想を言うと分身のお姉さんと少女の呟きが被る。

「一応銃にも欠点はある。火薬の力で弾を撃ち出している分、弓矢のように魔法強化が出来なくて曲射とかも出来ずに故障…パーツが上手く動かずに使えなくなったり弾数を用意するのにコストがかかる、とか」

「へぇ…お手軽に戦力を増強出来る割には制約も多いのか…」

分身の俺の解説に分身の女性はテーブルの上の鉄砲を手に取って意外そうに呟く。

「…坊ちゃんのいう火薬っていうのは簡単に作れないんですよね？」

「ん。硝石と硫黄と…なんだっけ？炭？を混ぜると作れるっては言われてる」

「…なんだい？そのしょう…ってのは？」

分身のお姉さんもふとした疑問を尋ね、分身の俺が肯定しながら曖昧な情報を話すと分身の女性は不思議そうな顔で聞いて来た。

「うーん…人間や動物の排泄物が溜まった場所や死体から採れるらしいけど…とりあえず俺の領地には『肥溜め』ってのがあるじゃん？」

「…ああ、あの糞尿を溜める場所か」

「アッチの近くは爆発するから火を使うな、って注意を出してるのはガスとかその硝石に引火して危ないから」

「…なるほど。引火して爆発するから、ソレが火薬の原料になるんですね」

分身の俺はどう説明したものか…と、少し考えて身近な物に置き換えて説明したら分身のお姉さんが理解したように返す。

「へー…糞や尿からそういうのが採れるのか…」

「難しい言葉を使うなら『化学反応』ってやつだね。硫黄は火山とかから採れるらしい」

「…そこまでの詳しい知識があってもなお、ゼルハイト様にもこの鉄砲や火薬はお作りになられないのですか？」

意外そうに呟く分身の女性に分身の俺が笑って弄るように返し、補足を告げると少女は再度確認するように尋ねる。

「知識と経験はまた別だから。例えばめちゃくちゃ威力のある古代の攻撃魔法の知識があったとしても、その魔法が使えるかどうかはまた別になってくるでしょ？」

「…なるほど。確かにそうですね」

分身の俺は魔法使いなら誰にでも分かるような例えで説明すると少女は理解して納得した。

「…そんな物を調達するのはとても大変だと思いますが…」

「そう。俺も昔に銃を作ろうかと思った事はあるけど、まあ今の話を聞いて分かる通り直ぐに断念した」

「でも帝国側はソレを量産して実用化させているんだろう？それってとんでもない技術力を持ってる、って事だと思うんだけど…」

分身のお姉さんの微妙な顔をしながらの呟きに分身の俺が肯定して子供の頃の話をすると分身の女性が帝国の脅威を感じ取るかのように言う。

「…実は俺も昔考えたんだよ、火薬を作るのは大変だから代わりになるものは無いか…って」

「…あるんですか？そんなのが？」

「無い事はなかった。魔法協会でお馴染みの魔偽石や魔石を使った魔道具を応用すれば」

「…！！なるほど！火薬の力で爆発し、その力を利用して弾を飛ばすのであれば、火属性の攻撃魔法を応用すれば良い…！」

分身の俺がニヤリと笑ってそう告げると分身のお姉さんは意外そうに驚きながら尋ね、少し意地悪してヒントを出すと少女はそれだけで察したのが直ぐに理解したように代用の方法を話し出す。

「どうやら知識のある俺が思いつく程度の事なんて相手もとっくに思いついていたらしくてね…まあ問題点は結構あるんだけど…とりあえず火薬の代用品として魔偽石を利用していた」

分身の俺は答えを説明しながら空間魔法の施されたポーチからビーズのような大きさの黒い石をいくつか取り出してテーブルの上に置く。

「…火属性の攻撃魔法が入った魔偽石製の魔道具を利用していたなんて…！」

「コレ多分…ってか完全に魔法協会の技術でしょ？もしかして狙いは世界征服の前に、この技術が広まる前に独占しようとしてたんじゃない？」

「…ありうるね。魔法協会を真っ先に潰さないと他の国にも鉄砲の技術が流れる事になる」

「…一番の難題である火薬を作らなくても、この代用品があれば簡単に真似できますもんね…」

少女の憤るような反応をしながらの呟きに分身の俺が魔道具の事を確認し、新たに思いついた帝国の狙いを告げると分身の女性とお姉さんが同意するように返す。

「おそらく、帝国は魔法使いには魔偽石を使わせて魔力の無い人に火薬を使わせる…っていう使い分けをしてるんだと思う」

「確かにそれなら火薬の必要量は少なくて済む…」

「しかしこの魔道具を調達するのにもかなりの資金が必要になるのでは？」

「まあコストは結構かかってるだろうね。そこが銃の欠点になるんだし」

分身の俺が予想を話すと分身の女性が納得して分身のお姉さんは確認するように尋ね、分身の俺は肯定する。