青年期 235

「…さて。これで鉄砲の脅威については理解出来たんじゃない?そしてなぜ俺らが帝国とまともに交戦せずに逃げ続けたのかも」


「…そうですね。防具でも防げない…というゼルハイト様の言葉が正しければ、交戦したとしても犠牲は大きかったと思います」



分身の俺は話を纏めた後に確認するように聞くと少女は肯定した後に若干疑うような言い方をした。



「コレの威力を知りたいなら木人に防具でも着けて試してみる?」


「…では、お願いします」


「あたしも見てみたいな」


「じゃあ移動しようか」



分身の俺の提案に少女は少し考えて受け入れ、分身の女性も気になるようなので…



流石に部屋の中じゃマズイので中庭とか広い場所へと移動する事に。



…中庭に移動する際に訓練用の木人三体とそこらの兵士が着けている鎧と兜を三つ頂戴し、中庭に設置する。



「じゃあいくよ」


「はい」



鎧兜を着せた木人三体を距離を空けずに並べた後に分身の俺が銃を構えて合図をすると少女が返事し、引き金を引くとパン!という爆発音がなって弾が狙ったのとは違う木人の鎧に命中した。



「…うわ、本当に鎧を貫通して木の中にまでめり込んでる…」


「この程度の銃なら質の高い鎧ならまだ防げるけど…兵士全員に銃弾に耐えられるだけの鎧を用意するなんて金がかかり過ぎて非現実的だし」


「…確かに…この威力ともなれば…ゼルハイト様の判断は誤りではなかった…」



分身の女性が鎧と木人を確認して呟き、分身の俺が不可能に近い対策を一応伝えると少女も穴の空いた鎧と弾のめり込んだ木人を見ながら驚いたように呟く。



「帝国がどれくらい揃えてきてるか正確には分からないけど…最低でも3000丁はあるとみて良いと思う」


「…つまり、この武器を使う兵士が3000人いるという事か…」


「でも、例え5000人ぐらい居たとしても人数の差で押し切れたんじゃないですか?」



分身の俺の予想に分身の女性が難しい顔をしながら考えるように呟くと分身のお姉さんは疑問を尋ねてくる。



「一時的に勝つだけならいけただろうね。短期決戦で終わるんなら」


「…帝国側の強みは戦力の増強が容易い事だ。あたし達が最初に勝って海岸の拠点を奪ったとしても半壊は免れない…おそらく敵一人倒すのにコッチは二人から三人、もしかしたら状況次第ではもっと死傷者が増えるだろう」


「あ、なるほど…帝国が波状攻撃のように何度も攻めて来て持久戦になれば物量で結局押し込まれるって事かぁ…」



分身の俺が条件を限定して肯定すると分身の女性が少女にも分かるようわざわざ解説するように説明し、分身のお姉さんは理解した後に微妙な顔で呟いた。



「だから俺は兵を温存するために逃げたんだよ。反転攻勢に出た時に兵の数が少ないと色々と面倒で困るからね」


「…反転攻勢って…この武器を揃えて快進撃を続ける帝国にどうやって今の最終防衛線から攻勢に移るつもりだい?」


「ふっふっふ…この武器に欠点や問題点が多い事は既に教えた通り。だからソコを突く」


「「…どうやってですか?」」



分身の俺の話を聞いて分身の女性が微妙そうな顔で疑うように確認するので得意気に笑いながらヒントを出すと、分身のお姉さんと少女の不思議そうな反応と言葉が被る。



「まず最初に最終防衛線を陵丘地帯にしたのは敵の銃の対策のためでね。俺らが陣取ってる高台側からは弓矢の射程が長く、敵が銃を持っていたとしても簡単には攻めて来れないから」


「…それだけじゃ対策としては不十分だと思うけど…」



分身の俺が順を追って対策の内容を話そうとすると結論を急ぐように分身の女性は早合点しながら呟く。



「最終防衛線なだけあって兵站線はもう狙えないだろうし…動員してる兵も全てアッチに居るから夜襲ももう難しいと思う」


「…それは…鉄砲とは関係ないんじゃ?あの武器をどうにかしないと作戦や戦術での対策も焼け石に水、だっけ?だと思うんだけど…」



それに構わずに話を続けるとやはり分身の女性は不安そうに言う。



「そうなるね。銃は戦争や集団戦において反則的な強さを誇るけど…ソレは魔法の存在しない世界だったら、の話で」


「…という事は…鉄砲の対策は『魔法』って事ですか?」


「その通り。銃には命中率が低い、っていう欠点…問題点がある。どんなに強い攻撃も当たらなければ意味が無いじゃん?」



分身の俺は肯定しながら仮定の話をすると分身のお姉さんが察したように確認し、それにも肯定して鉄砲のデメリットを教えた。



「「「確かに…」」」


「だから運用する時は数を揃えて横に整列させて面で制圧するような射撃でその問題点をカバーするんだけど…」


「なるほど。それなら命中率の低さなんて関係無くなるからね」


「んで、弓矢と同じで風に弱い。まあ弓矢の場合は魔法強化したら風を切り裂く事が出来るから影響を最小限に減らせるけど」



納得する三人に運用法を軽く説明すると分身の女性が理解したように返し、分身の俺は更に銃の問題点を話す。



「…つまり、風の魔法で強風を起こせば敵は鉄砲を使えなくなる…って事かい?」


「使えはするけど、弾が当たらず無駄になるだけだから…『使用不能』ではなく『使用不可』の方が適切かな?」


「…なるほど…鉄砲という武器が脅威ならば、その武器を使えない状況を作り出して使わせなくすれば良い…と」


「その通り」



分身の女性の確認に分身の俺がちょっと揚げ足を取るように訂正すると…



分身のお姉さんは意外そうに軽く驚きながら今説明した対策の概要を呟くので、分身の俺は肯定する。

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