青年期 199
…そして二日後。
国から領地の名前の変更許可と、俺が自己判断で勝手に取り決めした二つの領地の範囲の変更許可を貰った。
「…おー…いけたんだ」
「どうかしました?」
分身解除による記憶共有した後に分身の俺が意外に思いながら呟くと本を読んでいたお姉さんが不思議そうに尋ねる。
「国から許可を貰ったから今日からココとウィロー領の半分は『クライン領』になって、もう半分は『ラグィーズ領』なった」
「え!本当に坊ちゃんの意見がそのまま通ったんですか!?」
分身の俺の返答にお姉さんは驚きながら確認してきた。
「みたいだね」
「…まさか自領とはいえ、国から授けられた領地の範囲を変える事が出来るなんて…坊ちゃんも影響力を持つようになって来たんですかね?」
「だと良いんだけどねぇ…」
分身の俺が適当に肯定するとお姉さんは驚きながらも意外そうな…不思議そうな感じで返し、分身の俺はまたしても適当な感じで呟く。
「まあでもコレで俺は正式に大きな領地を手に入れたって事になるから…」
「やるんですか?」
「うん。作業が終わったら隊長達のみんなを一旦集めようか」
分身の俺の笑いながらの呟きにお姉さんも笑って確認し、分身の俺は肯定して予定を告げる。
…その夜。
「…やあ、みんなお疲れ。作業の進捗状況はどんな感じ?」
「順調に進んでいる」
「こっちもだ。今のペースなら予定よりもだいぶ早く完了するだろう」
「僕の所も今のところ順調だよ」
「あたしの所もだね」
猟兵隊の隊長達を集めて報告を確認すると作業の方は思った以上に順調に進んでいるようだ。
「そう?それは良かった。今日ようやく国から返事が来てね、ライツから奪ったこの領土と取り返したウィロー領が正式に俺のものになって名前も変わる事になった」
「本当か!?」
「それは朗報だな!」
「僕らも頑張った甲斐があったよ!」
分身の俺が軽く流して報告すると隊長達はみんなまるで自分の事のように喜び始めた。
「まあそれで。俺にもようやく立場ってのが手に入ったから…ココに居る隊長達には今まで猟兵隊の隊長として俺に尽くしてくれた報酬…褒美として『騎士』の称号と、この領内のどこか好きな町や村を一つをあげる」
要らなければ断ってくれても全然構わないけど。と、分身の俺は説明した後に軽い感じで一応逃げ道を用意した。
「…ん?」
「ど、どういう事…?」
「…俺の聞き間違いか?騎士の称号と町や村をくれると聞いたが…!」
「!やはり本当なのか!?」
「本当に!?」
「嘘じゃないんだよね!?」
…隊長達は最初呆然としたように呟くも少しして後から実感が湧いて来たのか驚きながら喜んで確認してくる。
「団員達全員にも頑張った褒美としてこの領内のどこかの土地をあげる予定だし、ローズナーとかから来た兵達には褒賞金を出す予定だから遠慮せずに受け取ってよ」
「やった!」
「本当か!?」
「夢じゃないよな!?」
「確かに!俺を叩いてみてくれ!」
隊長達が団員達を気遣って断らないように分身の俺が団員や兵達にも褒美を出す事を告げると、隊長達はお姉さんと女性を除いて珍しく喜び合って騒ぎ始めた。
「とりあえず他のみんなには明日、集めて話す予定だから…はい。この地図の枠内の二つの領地の中から町や村を選んで」
「あれ?都市はダメなんですか?」
「そういえば…なんで町や村だけなんだい?」
分身の俺の地図を広げながらの発言にお姉さんが疑問を尋ね、女性も理由を確認してくる。
「数が足りないし、発展度合いっていうか…やっぱり都市の場所によって色々と違ったりするじゃん?だから公平性が保証できなくて早いもの勝ちになって不満が出そうだからやめた」
「「なるほど…」」
「あとやっぱり都市の統治や管理権を褒美にすると、ソレ目当てで成果を求める無茶や無理して仲間を顧みなくなってくると困る」
「「「「…確かに…」」」」
分身の俺が理由を話すとお姉さんと女性が同時に納得して呟き、更に不安要素を告げると今度は隊長達を含めたみんなが同意して呟いた。
「まあ期間は決めないし、時間はいっぱいあるからみんなで喧嘩しないように話し合ってから決めてね。どこでも変わらないと思うけど」
「…俺はこの町が良い。昔滞在していた事がある」
「じゃあ僕はこの町。実は生まれた所なんだ、育ったのは違う町だけど」
「…ではこの町は俺が貰おう」
…分身の俺は『時間はいっぱいある』と言ったはずなのに隊長達はその場で集まって話し合いながら地図上の町に印を付けて選んでいく。
「あたしらには何も無いのかい?」
「うーん…そうだな…じゃあ領地の代行でもする?」
「…それはつまり私達二人には都市ではなく領地を任せてくれるんですか?」
「やりたいならやっていいよ。どうせ俺は魔法協会から推薦されてきた代行に任せるだけだし」
女性の意地悪するような笑みからの問いに分身の俺が領地そのものを提案するとお姉さんが驚きながら確認するので分身の俺は肯定的に返す。
「…いや、流石に領地の統治、管理はあたしの手に余るよ…というか無理だ」
「私も…では代わりに美味しい物をいっぱい作って下さい!食べ切れないぐらい、坊ちゃんが作れる料理を20種類ほど!」
「お!それはいいね!あたし達の褒美はそれにしておくれよ!」
女性が微妙な感じで笑いながら拒否するとお姉さんも賛同するように呟き、閃いたように代案を言うと女性もその案に乗っかってくる。
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