青年期 198
…その後、姫や指揮官達にライツの兵を率いさせて国境まで移動させる。
「な…!?」
「どういう事だ!」
途中、分身の俺が撒いたライツの騎兵達と遭遇したが降伏して投降した兵達を見てついに観念したのか防具や武器を捨てて投降した。
…それから三日後。
ようやくライツとの国境に到着し、人質以外の兵達を全員国境の向こうへと解放して行く。
「…いいのか?」
「今は手薄だろうからそのまま攻め込んだ方が良いと思うが…」
非武装の兵達が続々と国境の向こう側まで我先に、と走っていく様子を見て隊長達が確認してくる。
「大丈夫大丈夫、人質交換の時に領土と身代金の交渉をするから。決裂したらそのまま侵攻に移るからみんな近くの町で待機しとこうか」
「分かった」
「了解」
分身の俺が考えを話して指示を出すと隊長達は了承して団員達や兵に指示を伝えに行く。
…更に三日後。
ライツからの返事が来て『身代金は払うが領土の割譲は認められない』との事なので…
俺ら猟兵隊と領内から集めた兵達は予め決めていた国境の防衛に有利な場所までを侵攻して奪う事に。
すると流石にこの前の大負けが効いたのか…敵の抵抗はほとんど無く、一週間ほどで簡単に小さい領地ぐらいの領土を奪えた。
これならもっと深く侵攻して更に領土を奪えるんじゃ…?と、欲を出した矢先の数日後にラスタがライツとの一時休戦の協定を結んだようだ。
…上の余計な判断のせいで俺らはこれ以上の侵攻は不可能になってしまったので、しょうがなく断念して新しい国境の守りを固めるのに専念する事に。
その一週間後。
俺は城に呼び出され、ライツの大軍勢を追い払った事とライツの領土を奪った功績を評価され…
事前の約束通り元ウィロー領の全てとライツから奪った領土である新しい領地が授けられる。
…ついでに辺境伯の爵位を貰い、なんか知らんが元ウィロー領と新しく奪った領土の名称変更の許可まで押し付け…貰えた。
「…うーん…」
「どうしたんですか?」
…国境付近の町の宿屋で分身の俺が地図を見て領地の名前を考えながら呟くとお姉さんが不思議そうに尋ねてくる。
「いやー、さっき約束通り領地を貰えたんだけど…名前も変えていいよ、って言われてね」
「えっ…!?そんな事があるんですか!?」
「あと辺境伯の爵位も貰えたから、多分ここら辺は『辺境伯領』って事になると思う」
「ええっ!?」
分身の俺の返答にお姉さんが驚き、ついでのように話して予想すると更に驚愕された。
「って事は…坊ちゃんはもう『辺境伯』に…?」
「そういう事になるね」
「凄いじゃないですか!襲名じゃなく自力の功績で辺境伯まで成り上がるなんて…!」
「ありがと」
お姉さんが確認するように聞くので肯定すると褒めてきたが、分身の俺は適当に流すようにお礼を言う。
「それで領地の名前をどうしようか考えてて…」
「ああ…なるほど。後ろに『辺境伯』って付くからセンスの良い名称にしたいですね」
「ハードル上げるのやめて」
分身の俺の説明にお姉さんが納得するように返して素で笑いながらプレッシャーをかけるような事を言い、分身の俺は嫌な顔をしながらツッコむように返す。
「え?…あ…だ、大丈夫ですって!坊ちゃんなら」
「…『ゼルハイト領』にするのもなぁ…既にある領地と名前が被るとややこしいし」
「じゃあ少し変えてみるとかはどうです?」
お姉さんは不思議そうな顔をした後に察したように強引に分身の俺に振るので、少し考えて呟くとお姉さんが提案する。
「それもそれでややこしくならない?例えば『エルハイド』とかにしたら『ゼルハイト』との発音とか被って聞き取りづらくなるし」
「…確かに。『ゼルロイド』とか『メルベイト』とか少しもじった感じだと勘違いが起きたりして面倒な事態が起きそうですね…」
「まあでも名前か…あ!」
分身の俺が微妙な顔で問題点を指摘するとお姉さんも賛同して考え直すように呟き、そこで分身の俺はふと閃いた。
「何か思いつきました?」
「先生の名前から取って『クライン』とかどう?」
「えっ!?私の名前からですか!?」
お姉さんの問いに分身の俺が確認するように聞くとお姉さんは驚愕する。
「…というか今の私は坊ちゃんと同じゼルハイト姓じゃ…」
「まあ。でも公式の書類ではまだ旧姓でしょ?あと一つの領地の名前はあのお姉さんから取ろう」
「ヘレネーから?という事は…『ラグィーズ』ですか?」
お姉さんは少し間を空けて軽くツッコむように呟き、分身の俺が笑いながら返してもう一つの領地の名前の候補を挙げるとお姉さんが不思議そうに尋ねた。
「…許可を得るのは後からやるとして…領土も半々に分けよう」
「勝手に分割して取り決めて良いんですか?」
分身の俺が勝手に地図に領域を決めるように線を引くとお姉さんが驚いたように確認してくる。
「大丈夫じゃない?一応名称を国に提出する時に確認してみるけど」
「…ダメだった場合はどうするんですか?」
「そりゃもう従うしかないんじゃない?その時は諦めるよ」
分身の俺の楽観的な返答にお姉さんは若干不安そうに尋ね、分身の俺は適当な感じで笑って返す。
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