青年期 155
「…ね、ねえリデック…ちょっと待って」
「ん?」
俺がテーブルに乗り切れない分を床に置いていると母親が困惑したように一旦動きを止めるような事を言う。
「…なんでこんなに買ってきちゃったの?」
「いや、ドードルとかロムニアとか次にいつ行くか分からないから今の内に飽きるぐらい食べられる量を買っとこうかな…って」
「…それにしても…買い過ぎじゃないか?」
母親の困惑しながらの問いに俺が理由を話すと父親は困ったように笑いながら返した。
「え?まだまだあるよ?だってあとエーデルやリーゼ…侯爵のトコに行った時に渡す分もあるし」
「ええっ!?」「なっ…!?」
俺が購入したお土産の量について話すと両親共に驚き…
「一応辺境伯にも同じぐらいの量を渡したから父さん達にあげて半分まで減る計算だし」
「え…」「な…」
更にちゃんとそれぞれに渡す量を考えて買った事を話すと両親は絶句する。
「…そんな量だと購入にかかった金額もバカにならないんじゃないか…?」
「大丈夫大丈夫。魔石一個分にもならないから」
「…魔石の値段と比べられても、ねぇ…」
父親の心配するような呟きに俺が楽観的に返すと母親はやっぱり困惑したように呟く。
「ま、まあせっかくのお土産だ。自分達で食べ切れない量は使用人や周りに分けてやれば良い。ありがたく頂こう」
「そ、そうですね。ありがとう、リデック」
「どういたしまして。じゃあ残り置いとくよ?」
「あ、ああ…」
父親が微妙な感じで受け取る事を決めると母親も賛同してお礼を言い、俺がまだ出し切れてないお土産を取り出すとやっぱり父親は微妙な顔のまま返す。
ーーーー
「…旦那様、そろそろ支度の方を。お仕事の時間に間に合わなくなります」
「ああ。分かった」
30分ぐらい話していると執事長がドアをノックした後に顔を覗かせながら言い、父親は返事をして立ち上がる。
「…今日は私もあまりゆっくりしていられないの。リデックがせっかく来てくれたのに…」
「まあまた来るよ。距離は近いんだからいつでも来れるし」
「そうね。今度ゆっくり聞かせてね」
「ん。じゃ」
なんか母親も用事があって忙しいようなので俺は『お土産を渡す』という目的は達成したので拠点へと戻る事にした。
「…はぁ…俺もそろそろ遊んでばかりもいられないかもなぁ…」
…拠点への帰り道、俺は父親の事を思い出しながら若干憂鬱に感じてため息を吐き、ポツリと呟く。
「ん?」
「あ」
…俺が拠点に戻ると外の入口の所で女性が塀を見ながら歩いている。
「そんなトコでなにしてんの?」
「あ、いや…この拠点がどのくらいの広さかを確かめておこうかと思ってね」
俺の不思議に思いながらの問いに女性は塀を触りながら答えた。
「一応案内図とかの地図があるよ?」
「自分の目で確かめてみたいんだ。その方が襲撃があった時に迅速に動けるから」
「…なるほど、確かに。じゃ、頑張って」
「ああ」
俺はわざわざなんで?と思いながら言うと女性が防衛を見据えたプロ意識のような返答をするので納得させられ、労いの言葉をかけて拠点内に入る。
「あ。お帰りなさい」
…自室のある本部に行くと丁度お姉さんが建物から出て来て俺を見ると挨拶して来た。
「ただいま。これから支部に?」
「はい」
俺も挨拶を返して行き先を予想して尋ねるとお姉さんは肯定し、そのまま別れて俺は自室へと戻る。
…そして自室で領地に関する報告書を読んでいると昼食の時間になり、お姉さんがやって来た。
「…そう言えば、侯爵のところはもう行かれたんですか?」
「あ。忘れてた……午後行くかぁ…」
昼飯を食べながらのお姉さんの世間話でもするかのような確認に俺は今思い出して面倒くせぇ…と思いながら呟く。
「分身に行かせたらどうです?」
「あー…いや、空間魔法のあるポーチを持って行かせたら結局往復しないといけなくなるからそのまま俺が行った方が早い」
お姉さんがそう提案して俺は受け入れそうになるも、少し考えて結局かかる手間が同じである事に気づいて却下する。
「あ、なるほど」
「別にココを離れられない何かがあるわけじゃないし、変化魔法を使えば直ぐに行けるからね」
「一時間もかからないですもんね…」
理由を聞いて納得するお姉さんに俺が笑いながら言うと微妙な感じで笑いながら賛同するように呟く。
「急げば十分ぐらいで着くんじゃないかな?今回は急ぐ用も無いけど」
「音速を軽く超えられるんなら十分もかからないのでは?」
「そうだね。本気出せば多分5分ぐらいでは着くかも」
俺の予想にお姉さんが笑いながら確認するように返し、俺は賛同した後に軽くボケるみたいに言う。
「…でも受け取りますかね?お土産。辺境伯の時は喜んで受け取ってましたけど…」
「流石に少しは受け取るんじゃない?まあ別に一つも貰わなかったとしても一応気持ちは伝わるわけだから、残りはエーデル達にあげるか自分達で食べればいいわけだし」
「…なるほど。それもそうですね」
お姉さんの心配そうな呟きに俺がどっちでも構わない事を告げると少し考えて納得するように返した。
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