拠点帰還後編
青年期 154
…それから二日後。
俺ら傭兵団は朝早くから城塞を出発し、王都近くの拠点へと帰還する事に。
「…あと三日もすればようやく拠点か…」
「そうですね。ロムニアの王都を出てから今日で35日目なので…もう約一月とちょっとぐらい経ってますよ」
俺が馬車内のベッドの上で座禅を組むように座り直しながら呟くと、お姉さんは今までにかかった日数を教えてくれる。
「うへー…そんなに…?じゃあドードル経由したらロムニアの首都まで急いでも三週間はかかるのか…」
「坊ちゃんなら半日もかからないのでは?」
「…まあ、空から最短距離を高速移動するんならそりゃ、ね」
俺の軽く驚きながらの予想にお姉さんが笑いながら効率的な話をするので俺は肯定するように返した。
…そんなこんな村や町を経由すること、二日後の夜。
流石に団員達みんなも拠点に早く戻りたかったのか…
みんなが急いで進んだおかげで俺ら猟兵隊は予定よりも早く拠点に着いた。
「一日早く着いたか…」
「きっとみんなゆっくりと休みたかったんですよ」
「じゃあ一週間ぐらい休養期間を入れてから活動を再開させようか」
「それが良いと思います」
馬車を降りての俺の呟きにお姉さんが理由を予想し、団員達を休ませる案を出すと賛成する。
「…団員達に言うのは明日で良いかな…今日はもう飯食って早めに寝よう」
「そうですね」
今すぐ指示を出そうか悩んだがみんな疲れてるだろう…と、気を遣って後回しにして俺らは自室へと向かう。
…その翌日。
俺は旅行のお土産を渡すために朝早くから実家へと出向いた。
「!これはリデック様!お帰りなさいませ!」
「お帰りなさいませ!どうぞ!」
実家に着くと門の前に居た兵士達が俺を見ると姿勢を正して挨拶し、門を開ける。
「ああ、うん。警備ご苦労様」
「いえ!仕事ですので!」
「勿体なきお言葉でございます!」
俺が対応に困りながら労いの言葉をかけると兵士達は恐縮するかのように返す。
「…えーと…ただいまー?」
「これは…!リデック様!お帰りなさい!」
「リデック様がお帰りに…!奥様と旦那様をお呼びしないと…!」
「あー、いや…そんな急ぎの用があるわけじゃないから…」
家のドアを開けて入りながら挨拶すると掃除中のメイド達が俺を見てびっくりした様子で挨拶を返して急に慌ただしくなった。
「…リデック様。お部屋へと案内致します」
「あ、うん」
俺がどうしたものか…と、中に勝手に入ろうか否か迷っていると執事長が歩いて来て恭しく頭を下げ、部屋へと通してくれる。
「…リデック、か…?どうしたんだ?こんな早い時間に。というか帰って来ていたのか?」
廊下を歩いていると父親と遭遇し、父親は俺を見て驚きながら駆け寄って来ると不思議そうに聞いてきた。
「あー、うん。昨日帰って来たからお土産を渡しに来た」
「そうか!…色々と話を聞きたいがあいにくと私は今日は仕事でな…」
「だから仕事に行く前の朝早くに来た」
「なるほど!会いに来てくれたのか!」
「いや、そんな喜ぶようなこと…?」
俺の用件に父親は嬉しそうに言った後に若干困ったように呟き…
俺がソレを分かった上でこの時間帯に来た事を告げるとめちゃくちゃ喜びながら笑う。
「普段あまり会わない上に最近はお前の影武者としか会っていなかったからな」
「あ。そう言えば今だから言うけど…何回か入れ替わってたから俺も父さん母さんに肉を直接渡してたよ」
「なっ…!なんだと!?なぜそれをもっと早く言わないんだ!?」
父親は笑って理由を話すので俺が辺境伯に話した追加の設定を話すと父親が足を止めて驚愕する。
「いや、だって俺が帰って来てる事をバレたく無かったし…だからエーデルやリーゼにも口止めしてたんだけど」
「…そうか。エーデルやリーゼがどこか含みのある笑い方をしていたのは…そういう事だったのか…!」
「…旦那様。続きはお部屋の中で座られて、ゆっくりと話された方がよろしいかと」
「…ああ、そうしよう…」
俺が嘘の理由を話して弟や妹を巻き込むように言うと父親は何か心当たりがあるかのように言い、執事長が部屋のドアを開けて中に入るよう促した。
「…しかし本人と入れ替わっていても気づけなかったとは…」
「凄いでしょ?なんせ俺の分身とも言える影武者だからね。見た目や話し方、仕草だけじゃなく強さから料理の技術から全部俺と同じになるよう仕込んだ」
ソファに座った後に父親が思い出すように苦い顔をしながら悔やむように呟き、俺はドヤ顔でフォローするように嘘を吐く。
「ああ…まるで双子だ。全く違和感すら無かった」
「リデック!帰って来てたのね!」
「ん。ただいま」
父親が肯定して笑うとドアをバン!と開けて母親が入って来る。
「いつ帰って来たの?」
「昨日。あ、話が長くなる前に父さんが居る今の内にお土産渡しとく」
母親の問いに答えた後にふと俺はあ、これ長話しになるやつだ…と、察したので先にお土産から渡す事に。
「めちゃくちゃ大量に買って来たから使用人達にもあげられると思う」
俺は前置きしながら空間魔法の施されたポーチからお菓子や食べ物の入った紙箱を取り出してテーブルの上にどんどん積み上げていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます