青年期 156
…昼食後。
俺は拠点から一旦出た後に変化魔法を使ってドラゴンに変身し、侯爵の居るであろう町へと向かう。
「…居ると良いんだけどな…」
…30分ぐらいで町に着き、俺は入口で不在じゃない事を祈りながら町に入る。
「…ん?貴方は…」
「えーと…コンテスティ侯爵は居られますか?」
「少々お待ち下さい」
屋敷に行くと門の前に立っていた兵達が俺に気づき、そう確認すると兵の一人が持ち場を離れた。
「…ただいま執務中ではあられますが、ローズナー男爵の来訪を伝えたら『通してよい』と。中へお入り下さい」
「あ、ありがとうございます」
5分もしない内に戻って来た兵の返答に俺はお礼を言って敷地内へと入る。
そして建物のドアの前にいたメイドに案内されて侯爵のいる部屋へと向かった。
「…旦那様、客人をお連れいたしました」
「入れ」
…メイドが部屋のドアをノックして用件を告げると中から入室許可の返事が。
「失礼します」
「ご苦労だったな」
「では失礼致します」
俺が部屋の中に入ると侯爵のおっさんがメイドに労いの言葉をかけ、メイドは頭を下げて部屋から出て行く。
「さて…突然来るとは珍しいな。何用だ?ゼルハイト卿」
「お土産を渡しに参りました」
「お土産?…お土産、だと?」
相変わらずおっさんは書類作業をしながら俺に話しかけて来るので俺が用件を告げると不思議そうに聞き返し、手を止めて顔を上げながら確認するように聞いてくる。
「ロムニアやドードルといった旅行先で買ったお土産です」
「…そう言えば『猟兵隊が帰って来た』という報告は受けていたが…わざわざそのために?」
俺の説明におっさんは思い出すように言うと不思議そうに尋ねた。
「はい。猟兵隊が遠征中のため、この前の防衛戦に不参加になってしまったお詫びも兼ねてまして…」
「その件なら自領内の兵を派遣させてくれただけで十分助けられた。元々こちらが無理を承知で頼んだのだ」
俺が肯定して一応別の理由も含んでる的な事を言うとソレは拒否るように返される。
「分かりました。ではただのお気持ちという事で…このテーブルの上に置いてもよろしいですか?」
「ああ。わざわざすまんな。ありがたく受け取ろう」
俺は話を長引かせないように了承して確認するとおっさんは笑ってお礼を言う。
「…ちょっと待て」
「どうかしました?」
俺がテーブルの上にお土産の入った箱を置いて行くとおっさんが書類から目を離して止めてきた。
「量がおかしいのではないか?お土産と言う量ではない気がするが…」
「一応辺境伯や両親には既に渡してありますので、大丈夫です」
「そういう事を言ってるのでは…」
あまりに大量のお土産にはやはり侯爵も気になるらしく確認して来たので俺が笑って返すもなんとも言えない顔で呟く。
「やっぱり多すぎると迷惑ですか?辺境伯や両親は喜んでいたんですけど…」
「…あのヴォードル辺境伯が、素直に受け取ったのか?この量を?」
「はい。家族や使用人にも回せて余れば騎士団の面々にもあげられると大喜びでした」
「…なるほど……うむ。では私もありがたく頂戴しよう。このような機会を無駄にするわけにはいかんからな」
俺の確認しながらの呟きにおっさんは驚いたように確認し返し、辺境伯の時の様子を伝えると納得したように全部貰う発言をする。
…その後、お土産を渡した後に30分ほど世間話のように土産話をしてから俺は拠点へと戻った。
それから二日後。
「…団長。若とお嬢が来てるぞ」
俺が自室で領地の報告書を読んでいるとドアがノックされ、返事する前に団員がドアを開けて報告してくる。
「あ、ホント。ご苦労さん」
「お兄様お帰りなさい」
「兄さんお帰り」
俺の労いの言葉を聞いて団員が居なくなると妹と弟が部屋に入って来た。
「おう、久しぶりだな。いや、久しぶりって感じは全くしないが」
「僕らは兄さんの分身と会ってたからね」
「団員のみなさんとは久しぶりでしたわ。中には初めて見る人達も増えてましたけど」
俺が書類を置いて立ち上がりながら言うと弟と妹は笑いながら返す。
「それより、お母様からお聞きしましたが…お土産を大量に買って来てくれたとか」
「ああ。でも流石に普通に持ち運び出来る量じゃないからな…お前らを送った後に部屋の中で渡すよ」
「やったー!ありがとうございます!楽しみにしてます!」
妹の早速のお土産についての言及に俺がそう返すと嬉しそうに喜びながらはしゃぐ。
「家にも大量に渡して他のところにも同じぐらいの量を渡したんでしょ?なのにまだそんなに残ってるの?」
「まあお前らと親に渡す分を先に確保した後に辺境伯や侯爵に渡す分まで買えたから買ったようなもんだからな」
「流石お兄様!周りの羨むような視線と悔しがる表情が目に浮かびますわ…!」
「リーゼ、みんなに配るのはいいけど態度には気をつけないと。調子に乗り過ぎると不要な敵を増やす事になるからね」
「大丈夫です。態度には出しませんから」
弟が不思議そうに聞くので俺が理由を話すと妹は俺を褒めるように学校内でマウントを取る事を想像しながら笑い、弟の呆れたような注意にニヤリと悪い笑みを浮かべながら返した。
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