青年期 126
「ではお喋りはこれくらいにしてそろそろ始めましょうか」
「いつでもいいよ」
おじさんが戦闘を始めるかのように言い、分身の俺は余裕を見せながら先手を譲る。
「ふ…ならばお言葉に甘えて」
おじさんはこの前のようにステッキのような杖を回して野球ボールほどの火球を時計周りに出していく。
そして杖を分身の俺に向けて火球を射出した。
「おっと…」
「ふふふ、逃げてるだけでは勝てませんよ」
横ステップで避ける分身の俺に照準を合わせるように杖を向け、火球を射出し続けながらおじさんは煽るように笑う。
「…すげぇな…まるでマシンガンだ…」
一定の間隔でピッチングマシンのようにドンドン放たれる火球を避け、おじさんに近づく隙を探して周りを時計回りで移動しながら呟く。
「…ぬおっ!?っとぉ!」
「!?今のを避けますか…!」
火球を避けながらの移動中にこれから足を着けようとした場所から急に火柱が上がり…
分身の俺がなんとか身体を捻って横に転がるように避けるとおじさんは驚きながら呟いた。
「うっ…!」
と、同時に横に転がった分身の俺におじさんの射出し続けてる火球が一発当たって次々に命中する。
…火球自体でのダメージは全く無いものの、分身の俺はこのままではやられっぱなしになってマズい…!と思いながら体勢を立て直そうとした。
するとさっきのように地面から火柱が上がり、体勢を立て直し切れていない分身の俺に直撃する。
「おや。もしかしてもうお終いですか?」
「…なるほどねぇ…なるほど、なるほど…」
おじさんが呆気に取られたかのように尋ねるので分身の俺はおじさんの戦い方の分析を済まして呟きながら立ち上がった。
「いやはや素晴らしいね。このレベルの使い手だったとは」
「期待通り…というか、期待以上ですね、これは。もう少し苦戦しているかと思っていましたが…まさか魔法が直撃してなお、余裕の態度すら崩せないとは」
「ははは、これでも日頃から鍛えてるもんでね」
分身の俺の火球や火柱を受け続けながらの称賛におじさんが驚嘆したかのように返して嬉しそうに言い、俺は笑って返す。
「ははは。その余裕がいつまで続きますかな!」
「…一度ハマったら抜け出すのは俺でも素の状態じゃ難しそうだ…あのお姉さんは強化魔法での身体能力を活かして強引に突破したんだろうけど…さて、どうするか…」
おじさんが楽しそうに笑いながら声を上げ、分身の俺は無駄な抵抗を止めてその場で突っ立ったまま女性の取った策と手段を予想して呟く。
「…うーん…」
…火球が無詠唱でずっと止む事なく射出され続け、分身の俺に当たり続けてる今の状況から脱出する方法を考えていると…
「コレで最後です」
「あ、ヤベっ」
おじさんは決めるような事を言って背後に作った大玉みたいな火球を分身の俺に向けて飛ばしてくる。
「ははは。無駄な足掻きを」
分身の俺が横に転がるようにしてその場を離れるも範囲内からは逃げられず…
結局大玉のような火球の爆発が直撃した。
「…おーいてて…いやすっげーわ…あの攻撃で殺さないよう手加減してギリギリの威力を見極める、ってんだから魔力の精密操作技術がハンパねぇぜ…」
「…ふ、ふふふ…!ははは!ははははは!素晴らしい!なんたる幸運か!ここまでとは!」
分身の俺がちょっと痛がりながら呟いて立ち上がると…
おじさんは高笑いしてテンションハイになったかのように嬉しがる。
「これならば私が全力を出しても問題無さそうだ!ああ…人間相手に全力を尽くすのはいつ振りか…」
おじさんが両手を広げるとその全身が一瞬で炎に包まれ、悦に浸るような感じで呟いた。
「…え!?」
「…あまり長くは保ちませんが…死なないようお願いしますよ」
…炎が消えるとおじさんの見た目が急にイケメンの青年の姿へと若返っていて…
分身の俺が驚くと青年は自分の手を見ながら呟いた後に分身の俺にニコッと笑いかけて懇願するような事を言う。
「では行きますよ」
青年は合図をするとえらい早い速度で分身の俺との距離を詰めて懐に入り込み掌底を打ってくる。
「…おっと、っと…んー?どういう事だ…?細胞の活性化…?」
「素晴らしい…!なんという反応!」
分身の俺が身体を捻って避け…力士の張り手だか突っ張りのように連続で突いてくるのも避けながら若返った原理を予想して呟くと、青年は驚嘆しながら分身の俺の動きを褒めてきた。
「…先生のと同じ原理か…?あ」
「ふっ…!甘い!」
分身の俺は少し考え込んだがために反応がほんの少し遅れ、青年に腕を掴まれると同時に全身が炎に包まれる。
「…うーん…」
「…!ま、まさかここまでとは…!」
…炎に包まれながらも余裕の態度で顎に手を当てて考える分身の俺を見て青年が一歩後退りながら驚愕した。
「…やっぱそれ以外無いよなぁ…身体能力もかなり向上してるみたいだし…」
他に思いつかないので『おじさんから青年に若返った現象は炎属性の魔法による細胞の活性化である』と、分身の俺が一旦結論付けるように呟くと…
「は、ははは!そうでなくてはな!私の最後の技をも耐えられたら認めてあげましょう!」
「あ、ごめん。隙あり」
「ぐっ…!」
青年が笑って距離を取るように少し下がり大技を繰り出そうと目の前で詠唱を始めるので、分身の俺はその一瞬の隙を見逃さずに距離を詰めて謝りながら胸を殴って気絶させる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます