青年期 127
「…いやー…強かっ…っ!」
「くっ…!」
分身の俺が感想を呟いてる最中にボソボソと凄い小さい声が聞こえて来て…
咄嗟に倒れてる青年の顔を蹴り飛ばすも腕でガードされ、直ぐに体勢を立て直された。
「…なるほど。その状態だと気絶からの覚醒も早いのか…」
「ふふふ…不意打ちはさせてもらえませんか…」
分身の俺が分析するような呟くと青年も面白そうに笑って呟く。
「しかし仕込みは済みました」
「おっと…お?」
青年の手が燃え、目の前で十字を切るようなポーズをすると分身の俺の足下が青く光るのでその場から離れると青い光が追尾するように動き出す。
「ふふふ…」
「げ、またか」
青年はまたしても杖を回して野球ボールのような大きさの火球を出すと杖を俺に向け、火球を飛ばしてくる。
「うーん…これは辛い…」
火球を避けながら地面の追尾してくる青い光も避けないといけないので分身の俺はちょっと面倒になって呟く。
「あいた。…なんだ?げっ…」
青年の周りを時計回りに動いて隙を探しながら逃げていると急に上から何かが降って来たのか頭に当たり、上を向いて呟くとそのせいで一瞬の隙が生まれたらしく…
分身の俺に火球が一発当たり、動きが一瞬止まった後にまたしても連続して火球が当たって動きが拘束された。
「ははは!流石に上からの攻撃は意識外だったようですねぇ!」
「…マジか…足下と正面に意識を割いてからの山なりで飛ばして上からの攻撃ってえぐいよ…」
青年の笑い声を上げながらのネタバレに分身の俺はそんなん避けられんわ…と思いながら呟くと青い光に追いつかれ、分身の俺の足下から青い火柱が上がる。
「では、これでお終いです!」
青年が分身の俺に指を差した瞬間、青い火柱が大爆発を起こした。
「……はぁ…はぁ…」
すると青年はおじさんの姿に戻り地面にうずくまるようにして息を切らしていて…
「いやー、凄かったね今の。俺じゃなきゃ死んでたよ」
「…ふ、ふふ…私の、最大の…魔法で、さえ…」
分身の俺が服の埃を払って近づきながら褒めるとおじさんは諦めたように笑いながら呟く。
「危うくちょっと火傷するとこだった。さっきのよりもまあまあ痛かったし」
「…私の、負け…ですな。もはや、私は…疲労で、動く事…すら…」
「じゃあ俺の勝ちって事で。はい」
余裕の態度で最後の大技を褒めるとおじさんが息を切らしたまま負けを認め、分身の俺は自分が勝者である事を告げておじさんに回復薬を渡す。
「…心遣い、痛み入ります…ふう」
おじさんはお礼を言うように受け取ると一気飲みしてから立ち上がる。
「いやしかしお強い。私の全力の尽くした攻撃をまともに受けてなお無傷とは…」
「ははは、無傷のように見えるけど案外痛かったよ」
「『多少の痛みがある』程度ならば無傷と大差無いのでは…?」
驚嘆するように褒めてくるおじさんに分身の俺が笑いながら返すと不思議そうに呟いた。
「今回みたいな一騎打ちだったらそうだね。連戦の場合なら少しでもダメージが残っていればそれだけ不利になるし」
「確かにそうですな。しかし貴方にはその程度ならばあまり問題無いように思えますが」
「それは流石に褒め過ぎ。あまり過大評価が過ぎると次の機会の時に自分の実力を発揮出来なくなるかもよ?」
分身の俺の肯定におじさんが笑って弄るように言うので分身の俺も笑いながら返して、軽いノリで注意する。
「ふふふ…ご忠告ありがとうございます。ですが私にはまだ使いたかった技がいくつかあるので大丈夫でございます」
「へぇ?全力と言いながら出し惜しみしてたんだ」
「まさか!出し惜しみだなんてとんでもない!余力の関係で使えなかっただけですよ」
おじさんはニヤリと笑ってまだ実力の底や技術の全てを見せてない的な事を言うので…
分身の俺が言い訳か?と、思いながら返すも結構強めに否定された。
「って事は…うっそ、他にも戦法があんの?」
「ふふ…次の機会でのお楽しみでございます」
「うへー…流石に老獪と言うべきか…アレだけでも十分なのに他にもまだ引き出しがあるなんて…」
分身の俺の予想しながらの問いにおじさんは余裕の態度ではぐらかす感じで返し、分身の俺は感心して呟く。
「一つの戦法をいかに洗練させたとて、人には、戦いには相性があるでしょう?」
「確かに」
「この前戦ったお嬢さんにも強引に突破されて流れを作られ、そのまま押し切られてしまいましたし、貴方にも全ての攻撃を耐えられてしまった」
アレでは強化魔法を極めた者には効果が薄い…と、おじさんは女性に負けた事にも言及しながら話す。
「…うーん…そう言われると…」
「自分の得意とする戦法と相性の悪い相手に勝つためには早々と他の戦法に切り替えて不利を有利に変えなければなりません」
「…なるほど」
分身の俺が考えながら呟くとおじさんは老獪な事を言い出して納得させられる。
「…少々お喋りが過ぎましたか…そういう事ですので、次の機会にはお覚悟を。では」
「あ」
おじさんはボソッと呟くと急に話を纏め、頭を軽く下げながら別れの挨拶を告げて急ぐように町へと戻って行った。
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