ロムニア旅行編
青年期 121
それから5日後。
辺境伯から依頼された賊退治が全て完了し、それぞれの部隊ごとにちゃんと報酬を受け取ったようなので…
俺ら傭兵団は朝早くからロムニアに向けて出発した。
「…他の精霊術師と会えるといいんだけど…」
「本当にいるかどうか分からないですけど…楽しみですね」
「うん。願わくば今は味方陣営の状態で会いたいものだ」
「あれから精霊達は出て来ないですもんね…」
俺の期待しながらの呟きにお姉さんはワクワクした様子で返し、俺が肯定して願うとソレで察したように微妙な感じで笑いながら呟く。
「次に精霊達が出て来るのと別の精霊術師に会うの…どっちが早いと思う?」
「…難しいですね…精霊は時間の感覚が人間と違いますし、精霊術師に至ってはそもそも他に本当にいるのかどうかも怪しいですし…」
うーん…と、お姉さんは俺の意地悪な問いに悩んで考えながら自分の予想を話す。
「まあでもどっちにしろ、か。先に精霊術師と会えたとしても先に精霊が来たとしてもどのみち召喚する方法は聞けるんだから」
「そうですね。早いか遅いかの違いだけですし」
「…ただ問題は敵だった場合、拘束して金を積む前に自殺される可能性がある事だよね…覚悟ガンギマリだったらやりかねないでしょ?」
「確かに…それは色んな意味で困ります」
俺が楽観的に言うとお姉さんも賛同し、俺は嫌な顔をしながら最悪の展開を予想して話すとお姉さんはまたしても同意する。
「そういう覚悟の決まった精霊術師が敵として出て来ない事を祈るのみだ」
「…ですね。祈りましょう」
目を瞑って合掌しながら言う俺の真似をするようにお姉さんも両手を合わせて合掌した。
…そうこう話してる内に傭兵団は国境を越えてロムニア国内へと入る。
そして予定通り夕方には国境から一番近い村へと到着した。
そこで一泊し、俺らは朝早くから最初の目的地である町へと向かう。
「…お」
「…着いたみたいですね」
日が沈み始めた頃に馬車が停まるので俺とお姉さんは目的地に着いたんであろうと予想して馬車から降りる。
するとやっぱり町に到着していたようで団員達が門番のような衛兵にライセンスを見せて町の中へと入って行く。
「はい」
「…はい」
「…うむ。荷車の中身も確認させてもらうぞ」
「どうぞどうぞ」
俺とお姉さんがライセンスを見せると確認した衛兵の一人は荷物の確認作業に移った。
「…問題無いな」
「こちらもだ」
「異常は無い」
「お疲れ様」
衛兵達が確認の結果を報告しあって通行を許可し、俺は労いの言葉をかけて馬車の中へと戻る。
「…さーて、着いた着いた…」
「早速宿探しですね」
「うん。とりあえず予定通り一週間ぐらい滞在してから次の行き先を決めようか」
俺が街中で馬車を降りて背筋を伸ばて呟くとお姉さんは促すように返し、俺は肯定しながら周りを見渡しながら宿屋を探した。
「…なんか宿泊施設多くない?」
「本当ですね…観光地なんでしょうか?」
少し歩くと右にも左にも宿屋宿屋宿屋…なので俺は珍しい…と意外に思いながら聞くとお姉さんも不思議そうに返す。
「まあでも宿探しに困らないからいっか」
「明日からの観光が楽しみですね」
俺が適当な宿屋に決めて楽観的に返すとお姉さんはウキウキした様子でついて来る。
「…じゃあ飯でも食いに行こうか」
「はい」
俺は部屋をとった後に夕飯の提案をしてまた外へと出た。
「この国は何が美味しいんだろ?」
「…確かパンを使った料理が有名だったような気がしますが…」
「へー、ガーリックトーストとかバタートーストとかか…」
「ああ…お腹空いてきました…」
俺の問いにお姉さんが思い出すように答え、予想しながら呟くとお姉さんは空腹を訴えてくる。
「…ま、どこでもいっか」
どこか美味しそうな物がありそうな店は…と、探してみたがどうやって見分けるのか分からず面倒になったので俺は諦めて近くの飲食店へと入った。
「…あ」
「あ」
「ん?あ!」
「あ!」
…すると偶然にもこの前辺境伯の令嬢を誘拐しようとした刺客5人を発見し、俺が呟くとお姉さんも気づき…
二人の男が俺に気づいて飯を食ってる最中にも関わらず指を差しながら声を上げる。
「ちょうど良かった。なんかおすすめの料理とかある?」
「…ロムニアと言えばブォルシィチだな」
「あとヒィロシィキ」
「…ボルシチにピロシキって…まあいいや」
俺が尋ねると男の一人が口の中の物を飲み込んで答え、もう一人も教えてくれるので俺は微妙な顔をしながらも一応注文した。
「というかなんでお前らがココに!?」
「そりゃ腹減ったから。たまたま近くを歩いてたらあったから」
「…そんな偶然もあるのか…」
「なぜロムニアに?」
男の問いに俺がボケるように返すと青年が驚いたように呟き、おじさんは笑いながら確認するように尋ねてくる。
「俺らは旅の傭兵団だから特に理由は無いよ。適当に旅行したかっただけ」
「なるほど」
「…俺らの仕事を邪魔した相手とこうも良く会うなんて運が良いのか悪いのか…」
俺が理由を話すとおじさんは納得しながら返し、男の一人が微妙な顔で呟いた。
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