青年期 113

『ふ、はは!』

『すごーい!』

『これは…!』

『なんと濃密な…!』

『凄い…!』


『はは!ははは!想像以上に素晴らしいではないか!根気強く我慢した甲斐があるというものだ!』


『うん!これほど上質な魔力はどれくらい振りだろう?1000年?1200年?1500年?』


「契約の延長は済んだんだからもう用は無いでしょ。バイバイ」



ハイテンションで興奮しながら喜ぶ精霊達に俺はサッサと帰るよう促して手を振った。



『うむ、さらばだ』


『またねー』


『次に会う時を楽しみにしておるぞ』



鬼が挨拶をして消えると少女が手を振って消え、女性がニヤリと笑いながら消えると他の精霊達は何も言わずに一体だけを残して次々と消えて行く。



「…なんで残った?」


『妾の勝手であろう。そちの魔力は使っておらぬ』


「頼むから帰ってくれ。口を開けば貶してくる精霊とは一緒に居たくないんだよ」



俺の問いに美女が理由も告げずに素っ気なく返すので俺はため息を吐きながら再度促して理由を話した。



『とても契約主とは思えん言い草じゃな。ならばなぜ妾に契約を持ちかけ、契約を結んだ?』


「ただ単に敵に回したくなかったから。精霊と戦ったら厄介だし面倒だ、って実感したから先手を打って強い精霊を味方にしただけで…別に戦力としては一ミリも期待してないし」


『…ふん、変わった人間もおるものだ。無知ではあるが阿呆では無いということか』



不愉快そうに尋ねた美女に俺が本心からの理由を話したら納得はするも気に入らなそうに鼻を鳴らし、まるで珍獣を見るような目で見ながら呟く。



「そもそもなんでみんな帰ってったのに一人残った?」


『知れた事。そちの持つ『魔石』とやらを献上させるためよ』


「じゃあコレをあげれば帰ってくれるわけね」



俺の問いに美女はさっき見せた魔石が欲しいらしく俺は呆れながらゴブリンの魔石を取り出して差し出す。



『阿呆。そのような物を何もせずに貰えるわけなかろうが。何か妾に命令を下せ』



すると美女は呆れたように罵倒すると理由を話して逆に命令してくる。



「命令ったってなぁ…」


「…坊ちゃん、この人…人?は何の精霊なんですか?」



俺が頭を掻いて困りながら呟くと今がチャンス!とばかりにお姉さんが尋ねてきた。



「確か闇の精霊だったはず」


「『闇の精霊』!?…もしかしてあの神話とかに出てくるやつですか…!?」


「多分」



俺の思い出すような返答にお姉さんが驚愕しながら確認し、俺は曖昧な感じで肯定する。



『いかにも。妾は闇を司る、上位精霊の一体じゃ』


「『闇を司る』っていっても闇の力で何が出来るの?」



美女が得意気に自己紹介をするので俺は疑問を聞いてみる事に。



『目の光を奪う事も精神を闇に沈める事も歴史を闇に葬る事も出来るぞ』


「「歴史を闇に葬る?」」



美女の自慢するようなアピールに俺のお姉さんの言葉が被った。



『うむ。最近でいえば100年ほど前になるか…当時の人間が500人ほどの魔力を対価に変化魔法とやらの技術を消したいと頼まれ、闇に葬ってやった事があった』


「え、ええー…」


「…記録が不自然に消えてたり残って無かったのって精霊の仕業だったんですね…」



美女が思い出すように例を挙げて説明してくれ、その内容に俺がドン引きしながら呟くとお姉さんも同じように呟く。



「っていうか最後に契約したのって1300年ぐらい前って言ってなかった?」


『ソレは精霊王の話であろう。妾は今より600年ほど前に当時の人間と契約しておったし、未契約の状態ならば対価と引き換えに頼みを聞いてやるぐらいの度量はある』


「うへー…600年て…まあ今の俺の100倍だか200倍だかの魔力がある人間と考えればそれぐらいの年月は経つよな…」



俺の確認に美女は訂正した後にちゃんと説明してくれ、俺は気が遠くなるな…と思いながらも納得しながら呟くと…



お姉さんは驚愕した様子で絶句している。



「まあでもいいこと聞かせて貰ったし、その話の対価としてならちょうど良いんじゃない?本来なら俺らには絶対に知り得ない情報だったわけだし」


『…ふーむ……うむ。妾に対する数々の無礼の迷惑料も含めればなんとか釣り合わなくもない、か…よかろう』



俺がさっさと追い返すために情報料としての話に持って行くと美女は少し考えて帳尻を合わすように呟き、了承した。



すると俺の持っていた魔石が粒子状になって消える。



『ふふ…予想通り小腹を満たす分には十分過ぎる質じゃな…』


「…情報料で通るのなら精霊に召喚の方法や精霊術の方法などを聞いた方が良かったのでは?」


「あ」『む』



美女が喜びながら笑うとお姉さんがふと思いついたように確認してきて、目から鱗の俺の声と美女の声が被る。



「…確かに…」


『妾はもう満足したから戻るぞ。また次の機会にせい』


「んじゃ戻るついでにみんなに『精霊術とかの知識を教えてくれたら魔石あげる』って伝えといてくれない?」


『…よかろう。妾だけが知るには不公平じゃからな』



美女は嫌そうな顔で拒否るので俺が伝言をお願いすると不愉快そうな顔をするも受け入れて姿が消えた。

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