青年期 85

…翌日。



アダマンタイタンとの戦いで疲れが出たのか…起きたらまさかの夕方だった。



しかも辺りは暗くなり始めているのでもはや夜に近い。



「あ。起きました?ご飯作ります?」


「…ん。お願い…」


「まだ眠そうですね」



お姉さんのありがたい提案を俺が受け入れると笑いながら返す。



「…あんなに苦戦したのは厄災の龍以来だからね…ただ、あの状態の俺でも倒せたから厄災の龍と同格だとしてもちょっとは劣るかも…ふあ~…」


「いや、それは坊ちゃんがおかしいというか…多分相性の問題だと思います。だって黒か紫のスライムを先に倒していないと攻撃通りませんよね?」



俺の睡魔に襲われながらの発言にお姉さんは困ったように笑いながら否定…訂正するかのように確認する。



「…確かに…強化魔法と強歌弱歌を併用するには最低でも今の魔力が半分の状態じゃないと長くは持たないし」


「そもそもあの厄災の龍でさえ一撃で倒せるほどの攻撃すらも傷一つ付かないというのは…坊ちゃん以外の人達にとっては物理無効という意味合いになりますよ」


「まあだから未討伐だったんだろうね」



俺が肯定しながら返すとお姉さんは魔物の硬さについて触れ、俺は今まで誰も倒せなかった理由について納得した。



「…でもこれで未討伐ではなくなりましたが…どうしましょう…やっぱり秘匿事項での報告になる、かな…?」


「その方がいいと思う。ハンター達が勘違いして挑みに行くと犠牲者が増えるだろうし」



お姉さんの困ったような考えながらの呟きを聞いて俺もその意見に賛成する。



「…俺だってただ勝つだけなら確実に勝てるけど、魔石を手に入れようとするなら厄災の龍と同じく一か八かの賭けだからな…」


「…坊ちゃん。やっぱりだいぶおかしいですって…」



俺がため息を吐きながら言うとお姉さんは微妙な顔をしながら微妙な感じで呟いた。




その翌日。




魔物達の姿が見えなくなっていたので、どうやら約一週間近くに及んでいた時期が過ぎ去ったようだ。



「…もう時期も終わりか…ま、今回も収穫は大量だったし、いっか」


「…また来年ですね」



俺が残念がりながら言うとお姉さんは何か言いたそうな顔をするが…



流石に毎年のように言ってるから自重したのか呑み込んだように当たり障りの無い事を返す。



「とりあえず明日、王都に向けて出発しようか」


「はい」



…今日は団員達の報酬受け取りや休養にあてる事にしたので…



俺は隊長達を集めて予定を告げ、団員達に伝えるよう指示を出す。



そして翌朝。



「じゃあ行こうか」


「ああ」


「分かった」


「了解だ」



団員達の準備も完了したようなので俺ら傭兵団は王都に向けて出発した。



「…順調にいけば明後日には王都に着くね」


「何も無ければいいんですけど…」



俺が椅子に座って予定を話すとお姉さんはベッドに腰掛けて呟く。



「何も無いでしょ。せいぜい盗賊とかの襲撃ぐらいで、戦闘地域は避けてるんだから兵士達に勘違いで襲われる事もないだろうし」


「…ですよね」



俺の否定にお姉さんが少し考えた後に笑いながら賛同する。



…そんなこんな特に何事も無く予定通り夜になったぐらいで村に着き…



翌日の朝早くから出発すると夕方には王都に到着した。



そして王都の入口で門番の兵二人が俺ら傭兵団の身分の確認のために一人一人ハンターのライセンスを見て行くので…



「…はい」


「はい」


「…確かに」



俺とお姉さんも馬車から降りてライセンスを見せる。



「…荷車の荷物も全て確認させてもらう」


「どうぞどうぞ」



団員達全員のライセンスを確認して回った後に積み荷の確認もしてくるので俺は素直に中身を見せた。



「…よし。変な物は無いな」


「コッチもだ」


「では通っていいぞ」


「ありがとう。ご苦労様」



全ての検査が終わって通行許可が降り、俺はお礼と労いの言葉をかけて馬車に乗り込む。



「団長、これからどうする?」



王都の中に入ると団員の一人が馬車の隣に来て馬を並走させながら確認してくる。



「…うーん…とりあえず広場とか探して一旦そこに行こうか」


「了解だ」



俺が少し考えて指示を出すと了承して馬を走らせて行った。



それから約15分後、広場というよりも公園に着き、団員達が馬車の周りに集まって来る。



「とりあえずこれから一週間はココに滞在する!以上!解散!」


「「「おおー!!」」」



俺の指示に団員達は一斉に声を上げて返事をすると一部の団員達を残してバラバラに散っていく。



「…馬や荷物の預け先は明日考えようか」


「そうですね。今日はもう遅いですし」



俺は見張りのために残った団員達に感謝しつつお姉さんや隊長達と共に宿屋を探す事に。



「…流石に王都だけあって今の時間でも賑わってるな…」


「ホントだね。この前のトコと同じぐらい賑やかだ」


「美味しい物もいっぱいありそう!」


「宿を確保したらご飯食べに行こうか」


「「賛成!」」



街中の様子を見ながら隊長の一人が呟き、他の隊長が賛同すると別の隊長が嬉しそうに言い…



俺が提案すると二人の隊長の返事が被った。

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