青年期 64

「…あー、はいはい…うわー!!強盗だー!誰かー!」


「!?」



一瞬何が起きてるか分からなかったが、俺は状況を理解して直ぐに周りに気づかせるために悲鳴を上げる。



「強盗だと!?」


「アイツだ!刃物を持ってるぞ!」


「取り抑えろ!」


「なっ…!?くっ…ぐっ!!」



周りの人達が俺の方を見ると近くにいた人達がサッと離れ、逃げ出そうとした工作員を勇敢な一般人が4人がかりで取り抑えてくれた。



「危ないから女性は下がって!」


「誰か治安部隊を!」


「ありがとうございます。助かりました」



工作員を取り抑えている男性達は慣れたように周りに指示を出すので俺はお礼を言いながらロープでソイツを拘束する。



「全く…こんな往来で強盗を働くとは…」


「…後は自分が治安部隊に引き渡しますので…本当に助かりました」


「いや、いいって事よ」


「それより本当に大丈夫か?」



一般男性が呆れたように拘束された人を見ながら呟くので俺は犯人を連行する旨を告げて再度お礼を言うと…



犯人確保に協力してくれた一般男性の一人が不安そうに確認してきた。



「この状態で暴れたり逃げたりは出来ないと思います」


「…それもそうか。じゃあ頼んだぞ」


「はい」



俺の返答に一般男性はロープでぐるぐる巻きに拘束されてる工作員を見て納得する。



「…はぁ…まさか俺が最初に襲われるとは…」


「運が良いのか悪いのか分かりませんね」



俺が工作員を引っ張って兵舎まで連れて行きながら呟くとお姉さんは微妙な感じで笑いながら返す。



「お、団長が戻ってきた」


「ただいまー」


「ん?ソイツは?」



滞在先のエリア内に戻ると団員の一人が声をかけて来て、他の団員が拘束されてる工作員を見て尋ねてきた。



「多分内通者か工作員の一人。さっき大通りで後ろから襲われた」


「はあ!?」


「なんだって!?」



俺の返答に周りにいた団員達も驚く。



「確か牢とか独房っぽい地下室があったでしょ?誰かソコに収容してきてくれない?」


「分かった」


「了解だ」


「…あ。後から聞きたい事があるからあんまり手荒には扱わないようにね」



俺が指示を出すと二人の団員が了承してくれるので俺は団員に引き渡した後に一応釘を刺すように注意する。



「尋問するんですか?」


「一応聞くだけ聞いて何も答えないんなら将軍が帰って来た時に引き渡すよ」


「何も喋らないと思いますけどね…」



お姉さんの確認に俺がそう返すとお姉さんは無駄である事を予想しながら呟く。




…翌朝。




「団長!団長!」



まだ日が昇る前の暗い時間に団員が慌てた様子でドアを叩きながら呼びかけてきた。



「…なんかあった?」


「地下室に捕らえていた奴が…」


「逃げた?」


「いや、死んだ」



俺がドアを開けながら尋ねると団員が焦りながら報告してきて先を予想して聞くと、団員は否定した後に予想外の返答をする。



「死んだ?なんで?」


「見張りの奴がさっき様子を見に行ったら既に死んでたらしい」


「…とりあえず見に行こうか」



俺の問いに団員は曖昧な事を言うので俺は直接現場に見に行く事に。



「あ」


「…遺体に外傷は無い。出血は口からだけ…おそらく自害だろう」



工作員を収容していた地下室に行くと既に数名の隊長が集まっていて…



俺が何か聞く前に先に隊長の一人が報告してきた。



「自害って…舌を噛んで?」


「いや、おそらく毒だろう」


「隠し持っていた毒を飲んだ可能性が高い」



俺の予想に隊長の一人が否定し、他の隊長が予想を告げる。



「うへー…覚悟決まってんなぁ…そこまでするか」


「この遺体はどうする?」



俺が困惑しながら呟くと別の隊長が確認してきた。



「とりあえず死因の特定をしないといけないから医療機関に引き渡そうか。誰か治安維持部隊の人を呼んで来て」


「分かった」



俺の指示にその場にいた団員達の内の一人が走って地下室から出て行く。



「…担架はある?一応建物の外まで運ぼうか」


「そうだな」


「すぐに用意しよう」



俺は治安維持部隊の人達に引き渡しやすくするために遺体を外まで運ぶ事に。



「…しかし服毒自殺とは…裏にいる奴はそこまでの大物という事か…」


「情報を抜かれるよりも味方に始末される事を恐れたのかもしれんな」


「もしくは家族が人質に取られていて、『情報を話すと殺す』と脅されていたか…」



…遺体を治安維持部隊に引き渡すと隊長達が工作員が自害を選んだ理由を予想し始める。



「こういうのは後味が悪くなるからやめて欲しいんだけどね。まるで自衛してる俺らが殺した加害者みたいに思われるじゃん?」


「そうか…!嫌がらせ目的、という可能性もあるか…いや、しかし…それが本人の意思とは考えにくい…」


「…はぁ…とりあえず解散で」



俺が相手の取った方法に嫌悪感や拒否感を隠さずに言うと隊長の一人が何かを思いついたように予想して呟き…



俺は気分を変えるために二度寝する事にしてみんなに指示を出し、自室へと戻った。

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