青年期 61
…そして翌日。
そろそろ昼飯の時間になりそうな頃に目的地である城塞都市に到着した。
「おおー…高い壁だなー…」
「約15メートルある」
「へー…」
俺が馬車から降りて城壁を見上げながら呟くと案内役の男が答え、俺は左右に広がる壁を見る。
「この都市はこのドードルの中でも特に栄えていて『第二の王都』と呼ばれるほどでもある」
「へー、そうなんだ」
俺らは案内役の男の自慢するような説明を聞きながら城塞都市の中へと入った。
「うへー…壁の厚み凄いな…5m?6m?作るの大変だっただろうなー…」
「ふふふ…それだけでは無い、この壁は対魔法用の加工も施してあるのだ。街一つ焦土に変えられるレベルの魔法使いで無ければこの城壁は破る事は叶わぬ」
トンネルのようになってる壁の中を通過しながら俺が呟くと男は得意げに聞いてもない情報を話し始める。
「この都市を陥落させるのはとても難しそうですね」
「うん。普通の方法じゃ無理かも」
お姉さんの感想に俺も変化魔法使わないと無理だな…と思いながら同意した。
「…お。また壁だ」
案内役の男について行く事、約10分ぐらいで前方にまた城壁のような物が見えてくる。
「…都市の中にまた壁とは珍しい」
「でもさっきの壁よりは少し低くない?」
「この都市には他の都市には無い特徴としての『三つの壁』がある」
「三つも壁があるの?」
隊長達が意外そうに言うと案内役の男は三本の指を立てて返すので俺は不思議に思いながら尋ねた。
「一つは城を守る壁だ。元々はその城が先に建てられ、そこから城下町が広がり二つ目の壁が作られたと聞いている」
「へー…じゃあココも元は何も無いところから栄えてこんな広がっていったんだ」
男はこの都市の起源を軽く説明するので俺らはソレで三つも壁がある理由を悟る。
「先程『第二の王都』と言ったが…2、300年ほど前の小国だった時代は実際にココが王都だったとも言われ、その名残りとも言われている」
「ふーん…そんな歴史のある由緒正しい所なんだ」
「…しかしこのような堅牢な城塞都市を攻められるとは思えないが…」
「我々に防衛を依頼せずとも問題など無さそうに思えるのだがな…」
男の説明に俺が周りを見ながら意外そうに返すと隊長達も周りを見ながら不思議そうに呟く。
「まあ流石に中に入れたんだから罠って事は無いでしょ。こんな所で俺らに暴れられたんじゃあ被害がとんでもない事になるだろうし」
「ですね。罠にかけるつもりならわざわざこんな暴れられたら困る場所には案内しないでしょうし」
「…確かに」
「それもそうか…」
「考え過ぎか…」
俺が最悪の事態をちょっと否定するように言うとお姉さんも賛同し、隊長達は納得したように返すが警戒は解いてないようだ。
「…この壁は10メートルぐらい?」
「そうだ」
目の前の壁を見ながら俺が確認すると男は短く答えて門を警備してる兵と話して門が開く。
「…街中の門の向こうにまた街があるなんて面白いなぁ…」
「ここより先は富裕層や兵士達の区域となっている」
「…富裕層はともかく、兵士も居るのか?」
俺の呟きに男が説明すると隊長の一人が不思議そうに尋ねた。
「そうだ。もしも万が一…最悪の事態に陥って外の区域を放棄せねばならなくなった時、外に兵舎があると兵士の士気が落ちてしまう」
「ふーん…そんなあるかも分からない事態に備えるなんて偉いもんだ。普通なら富裕層の囲い込みを優先しそうなものだけど」
男は中々に予想外の理由を話し、俺は意外に思いつつ感心しながら返す。
「…先ずは安全を第一に優先して確保せねば富裕層どもを囲い込む事は難しい。奴らは取るに足らない事で直ぐに喚き出す…」
「そりゃそうだ」
「おお…!無事に連れて来れたか!ご苦労だった!」
男のため息を吐きながらの呟きに俺が相槌を打つと前から歩いて来た男性が嬉しそうに話しかけてくる。
「あ」
「久しぶりですな、ローズナー男爵。それともガウ男爵とお呼びした方がよろしいか?」
この前の西の国境で敵軍の大将だった男性を見て俺が思い出すように呟くと男性は笑いながら確認してきた。
「自分は呼び方に拘りは無いのでお好きなように」
「…では『団長殿』とお呼びしましょう」
「その方が堅苦しくないので自分にとってもありがたいです」
俺の返答に男性は配慮したような呼び方を選んでくれるのでお礼を言うように返す。
「ところで団長殿。ココに来る最中に軍事行動中の兵達を見かけなかったか?」
「居た居た。なんか別働隊とか聞いたけど…」
「やはり…!おそらく敵対している我々への牽制と、その援軍である傭兵団の足止めや撃退が目的だったのでしょうな。よくぞご無事で」
男性が話を変えるように尋ねるので肯定しながら返すと男性は怒ったような顔で敵の目的を話して俺らの身を案じるかのように言う。
「なるほど…足止め目的だったのか…道理で。…不甲斐ない、敵の目論見通り二時間ほど足止めを食らいまして…」
「いや、二時間で済んだのは幸いでした。あの別働隊は数こそ少ないものの敵対派閥の中では屈指の実力を誇る部隊…まともに戦えば万の軍勢すら打ち破るほど」
「え。そうなの?」
「…はい」
俺は敵の策にまんまとハメられた事を知って反省しながら謝るように言うと、男性が予想外で意外な情報を話すので案内役の男に確認すると…何故か目を逸らしながら肯定する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます