青年期 59
…どうやら30分ほどでみんな準備が整ったようなので…
「…よし。じゃあ突撃ー!!」
俺は馬に乗ったまま号令を出し、変化魔法の極技その2でカースホースとスレイプニルの並行変化させた馬を走らせる。
「おおー…流石に魔改造ばりに強化しただけあって速ぇー…いや、『馬改造』か」
…普通よりも5、6倍は出てそうなスピードで走る馬の手綱を握りながら俺は嬉しくなって呟き、誰も聞いていない独り言なのについいつもの癖でボケやジョークを挟む。
「な、なんだあの馬は!?」
「敵襲か!?弓兵!」
「ダメだ!速すぎて狙いが…!」
「やあ。こんにちは」
5km近く離れていた距離も僅か一分ほどで直ぐに埋まり、慌てる敵兵達に馬がそのまま突っ込むので…
俺は余裕をアピールするように手綱から片手を離して振りながら挨拶した。
「ぐわっ!」
「うわっ!」
「うぐっ!」
「うわー!」
「…あーらら…」
…馬改造された馬はもはや魔物みたいなものなので、前方の障害となる敵兵達を跳ね飛ばしながらも全く勢いを衰えさせずにそのまま敵陣を突っ切って行く。
「…普通の馬でもこれか…力強さと持久力は馬車で知ってたけど、頑丈さがここまでとは…」
3、4000人近くがいる場所に突っ込んで100人以上…一体何人跳ね飛ばして何人踏んだか分からないぐらいなのに…
馬はまるで歯牙にも欠けずに無傷のまま普段通りの状態で走り、余裕を持って旋回するその様子を見ながら俺は驚きながら呟く。
「いえーい」
「また来たぞー!盾を構えろ!!」
別の場所からの二度目の突撃には流石に対応されて兵士達が密集して盾を構えて壁になるような陣形を取り始める。
「うぐっ!」
「ぐはっ!」
「ぐあっ!」
「はぐっ!」
「ははは…惜しかったね」
普通の馬ならば兵士の作った壁にぶつかって死んでいただろうが…
コレは馬改造されているので逆に兵士達を勢いよく吹っ飛ばしてなお目の前の敵兵達を弾き飛ばし、踏み越えて掻き分けるように敵陣を突っ切って行く。
「…お」
「かかれー!」
「いくぞー!」
「攻撃開始!」
俺が二度の蹂躙を終えて三度目に移ろうとすると味方の団員達が追いついたらしく、パニック状態の敵部隊を左右から挟み打ちにした。
「…ご苦労さん。戻ろうか」
なので俺は三度目は諦めて旋回はせずに馬の頭を撫でて医療部隊が待機してる本陣へと一時帰還する。
「大丈夫でしたか?」
「うん。予想以上だった。見えてたでしょ?」
「はい。一頭の馬が人の群れをまるで蹂躙するかのごとく暴れ回ってましたね」
俺と同じ馬改造されてる馬に乗り、双眼鏡を片手に持ったお姉さんが近づいて来て確認するので…
俺が検証結果を告げて尋ねるとお姉さんも嬉しそうにヤバイ事を言い出す。
「馬力が桁違いだったね。なんせ馬がただ突っ込むだけで陣形がガタガタになってたから俺なにもしてないし」
「え!?セイレーンの技とか使ってないんですか!?」
「うん。マジで俺はただ乗ってただけで何もしてない」
俺の発言にお姉さんが驚きながら確認してくるが俺は肯定して念を押すように繰り返した。
「…てっきり坊ちゃんが何かしらの技を使ったからあんな蹂躙状態になってると思ってましたが…」
「まあ多分スレイプニルかカースホースの技は使ってたんじゃないかな?馬に聞かないと分からないけど」
「ああー…どっちも突撃系の技がありますもんね…その可能性もありましたか」
お姉さんが微妙な顔で呟くので俺が予想した後にジョークやボケるように返すと笑いながら納得する。
「まあ、でもあの二度の蹂躙のおかげで楽に早く終わりそうで良かったよ」
「…やっぱり坊ちゃんの極技は反則ですって。私達の3倍から4倍も居た敵がああも一方的にやられてるって…」
敵兵と味方の傭兵団の戦ってる様子を見ながら言うとお姉さんは困ったように笑いながら返す。
「多分不意打ちに近かったからじゃない?警戒してる様子ではあったけど、ちゃんとした陣形ってわけじゃなかったし」
「…それもあるかもしれませんね」
「さて、そろそろ終わりそうだから馬車に戻ろっと」
「あ、じゃあ私も」
俺の予想にお姉さんが納得したように言い、俺はもう出番は無いだろうな…と馬の変化魔法を解除して馬車の中へと戻ったらお姉さんも乗ってる馬を車に繋いで中に戻って来た。
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