青年期 58
…そして二時間後。
「では出発いたします」
馬の見張り番をしていた部隊も昼飯と休憩をとらせたので案内役の人と一緒に依頼主の下へと移動する事に。
ーーーーー
…俺がベッドの上で座禅を組んで瞑想をしていると何かあったのか馬車が止まった。
「団長、賊の襲撃だ」
「…賊?…よくもまあこんな傭兵団相手に襲いかかろうと思ったな」
「ホントですね。荷車を狙ってるんでしょうか?」
団員が馬車のドアを開けて報告するので俺が呆れながら言うとお姉さんも賛同しながら敵の目的を予想する。
「…確かに大きな荷車で目立つと思うけど…中身は簡易テントとか非常食だけで金目の物なんて無いというのに…まあいいや」
俺はため息混じりで呟いて一旦現状を把握するために馬車から降りた。
「うわああ!」
「くそっ、なんだこいつら…!強すぎる…!」
「ただの護衛じゃねぇ!逃げろ!」
…流石にただの賊ごときではみんなの相手にはならないらしく俺が馬車の屋根に上がって周りを見ると戦いは既に終わりかけている。
「逃すな!全員ひっ捕らえろ!」
「ここで逃せばまたどこかで襲って来るかもしれん!」
「賊の退路を断て!」
隊長達が団員の指揮を執って部隊を動かし、襲いかかってきた賊がどんどん捕らえられていく。
「…素晴らしいですな。賊の襲撃もわずか10分足らずで撃退するとは」
「まあウチの団員達はみんな有能揃いだからね」
馬車の屋根から降りると案内役の人が褒めて来るので俺も褒めるように返して馬車の中に戻った。
「どうでした?」
「たった20数名でこの傭兵団に襲いかかってくるなんて良い度胸してるよね」
「そんなに少なかったんですか?」
お姉さんの問いに俺が笑いながら返すと驚いたように確認する。
「うん。多分人数が多い分俺らの動きが鈍いと思ってさっさと盗むだけ盗んで逃げようとしたんじゃない?」
「あはは。荷物は私達が守ってるんですから坊ちゃんをすり抜けて盗むのは不可能なのに…」
俺が肯定して予想を話すとお姉さんは笑って呟く。
…それから近くの村に寄って賊を引き渡してから一旦休憩し、俺らはまた移動を再開した。
その翌日。
「…団長!面倒な事になった!」
朝早くからの移動中にまたしても何かあったらしく、馬車が止まって団員がドアを開けて報告してくる。
「…また何かあったのか?」
「この先で軍が展開しているみたいなんだが、案内役の話ではどうやら敵対派閥側の兵だそうだ」
瞑想をやめて尋ねると団員は面倒な事の内容を話した。
「迂回は?」
「出来ない事はないが迂回をすると予定よりも4日ほど遅れる事になるらしい」
「4日か…それは辛いな。敵の数はどれぐらいだと思う?」
「斥候に出た部隊からの報告では3000から4000。案内役の話では約3000の別働隊だと」
俺の問いに団員が案内役から聞いたんであろう情報を話し、とりあえず敵の情報を尋ねると既に部隊が出て調べに行ったらしい事を告げる。
「うーん…案内役の人を呼んできて」
「分かった」
「どうするんですか?」
俺が指示を出すと団員が走って行ってお姉さんが判断を聞いてきた。
「金が貰えるんならそのまま倒す。貰えないんなら無視して突破する」
「じゃあ私は医療部隊の所に行きますね」
「ん。お願い」
俺の返答を聞くとお姉さんは本をしまって馬車から降り、自分の指揮する部隊の下へと歩いて行く。
「…団長。連れてきた」
「ありがと。…もし俺らがあの別働隊とやらを撃退したら追加報酬とか貰えるの?」
すると団員がすぐに案内役の男を連れて来たので俺はお礼を言って確認する。
「追加報酬…だと?」
「貰えないならそのまま無視して横を突破して行くけど」
男の不思議そうな顔での確認に俺は金で行動を判断する旨を告げた。
「…分かった。ここで奴らを撃退する事が出来れば将軍に掛け合ってみよう」
ただし逃げられた場合は報酬の話は無しだ。と、男は交渉するように条件を提示しながら了承する。
「それで良いよ。…総員戦闘準備にかかれ!奴らを倒せば追加報酬だ!」
「「「おおー!!」」」
俺は条件を呑んだ後に馬車の屋根に上がってみんなに聞こえるよう声を張って命令を下すとみんなやる気になったように返事をした。
「隊長達は集まって!作戦会議だ!」
「呼んだか?」
「作戦会議だなんて珍しいね」
「…いつも通りではない、という事だろう」
俺が集合をかけて屋根から降りると隊長達は直ぐに集まって来る。
「今回はとりあえず俺が最初に突っ込んで敵を撹乱させるから、みんなは両側から挟み込むように動いて欲しい」
「「「分かった」」」
「了解」
「逃したら報酬は無いらしいけど…もし敵が逃げ出すようならそのまま逃して。深追いするとコッチが損するし」
「ああ」
「了解だ」
俺の指示に隊長達が了承するので一応注意事項も告げる事に。
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