青年期 12

「…ぐっ…!」


「なんだアイツ…!化物か…!」


「…おっとそろそろか…じゃあ武器は頂いてくよ」


「逃げるぞ!逃すな!」



鉄の棒で頭を叩いて気絶させながら数十人の兵士を倒し、余裕があれば武器を拾っていると…



奥の国境付近の敵本陣の方から敵援軍が近づいて来てるので俺は一旦その場から離脱して部隊と合流した。



「よし、一旦後退しながら合流して突撃準備」


「一旦左よりに後退する!」


「左よりに後退だ!」



部隊と合流して直ぐに指示を出すと知り合いのハンター達も指示を出してあと一つの部隊と合流するようにジリジリと下がる。



「…意外と時間が無さげ…10分ほど休憩させてから突撃しようか」


「分かった」


「突撃準備!」


「突撃用意!」



知り合いのハンターに肩車して貰って後ろの迫って来ている敵援軍を見ながら告げると、とりあえずみんなに準備を指示した。




「…よし。突撃ー!!」


「突撃開始!」


「突撃だ!遅れるな!」



後方の敵をギリギリまで引きつけてから俺は号令をかけて真っ先に突っ込む。



「…よし突破!みんなを逃せ!」


「もう少しだ!足を止めるな!」


「走れ!」



俺は反対側の兵士達が空けてくれた脱出口から突破した後に反転して戻り…



傭兵部隊のみんなを逃すために味方の兵士達に協力し、穴を埋めようとする敵兵を抑えながら指示を出す。



「…よし、みんな逃げ切れたな。ご苦労さん、ありがとう」



なんとか全員脱出できたようなので周りの兵にお礼を言って武器を拾いながら後退する。



「みんなお疲れー。まだ戦える余裕がある人もいるだろうけど、一旦町まで戻って休息をとろうか」



俺は傭兵部隊のみんなに労いの言葉をかけてから一時撤退するよう指示を出した。




「…負傷者はどんな感じ?」


「ほとんどは軽傷で済んでいるが…やはりハンターではない奴らは怪我人ばかりだ」


「こっちもだ。重傷まではいかないが軽傷とも言えん」



町の近くの陣営に戻った後に俺が確認をするの知り合いのハンター達が傭兵達の状態を報告してくれる。



「へー、一応重傷者は居ないんだ?」


「ああ。命にかかわるような怪我をしている奴はいない」


「だが明日明後日の出陣は無理だろうな…無理をすれば出せるが」


「…そこまで無理をする状況では無いと思うが、な」



俺の確認に知り合いのハンター達は負傷者達の状況を説明した。



「ヒーラーを呼べれば良いんだけど…アッチの兵士達の世話で手一杯みたいだしなぁ…」


「傭兵の中で回復魔法を使える奴は戦場で魔力を使い切っているから無理だ」


「…そのおかげで部隊の死者とか重傷者が出てないんだからありがたい話だよね。ホント」



俺が負傷者の事について考えながら呟くと知り合いハンターが部隊に居る魔法使いについて言及するので、俺は腕を組み目を瞑って感謝しながら返す。



「とりあえず明日まで休ませてどれだけの人数動かせるかな…」


「今のところ200人は確実だと思う」


「今日出撃せずに休んでる奴が何人復帰出来るか、だな」


「うーん…まあいいか。とりあえず午後の出撃後に考えよう」



明日の事を考えてハンター達と話し合うも俺は考えるのが面倒になったので、会話を切り上げて早めの昼飯を食べるため宿屋に向かう。



「ただいま」


「あ、お帰りなさい。早かったですね?」


「またこれから行くけどね。午後の出撃の前に昼飯食べとこうと思って」


「なるほど」



部屋に戻ると本を読んでいたお姉さんが挨拶して確認してくるので、俺はまだ仕事が終わってない事を返して昼飯の準備を始める。



「お昼は何にするんですか?」


「餃子でも焼こうと思ってる」


「ギョウザですか!良いですね!」



お姉さんの問いに俺がポーチからボウルを取り出して答えると嬉しそうに賛成した。



「ところで防衛線の方はどんな感じですか?」


「俺ら傭兵部隊の働きでガンガン押し戻せてるよ」


「おー!凄いですね!さすが坊ちゃん!」


「ははは。今は敵が油断してる隙を突いてるんだけど…上手くいくのは今日までで、明日辺りからは敵も対策に乗り出すだろうね」



お姉さんが仕事の確認をするので状況を教えると驚きながら褒めてくれ、俺は笑いながら上手くいってる理由を話して餃子を焼く。



「じゃあ今日の内に出来るだけ押し返した方が良いですね」


「そうなんだけど…あまり押し戻し過ぎると敵の本陣が近くなって背後を取った時に挟み撃ちや包囲の危険性が高まるからなぁ…っと」



俺はお姉さんの発言に微妙に否定的な感じで返しながらフライパンに水を入れて蓋をする。



「…はい」


「うわー、美味しそう…!いただきます!」



羽根つき餃子を皿に盛って白米と一緒にテーブルの上に置くとお姉さんは喜びながらフォークを持って合掌した。



「あと野菜スープだね」


「ありがとうございます!」



小さな鍋にタッパーに入ってる野菜スープを入れて温め、お椀に入れて渡すと喜んで受け取る。



「…うーん…中華最高」


「美味しいですね。『バイスォン』の肉汁の甘さと野菜が良い感じで…野菜スープのアッサリした味も、また」



俺は醤油かラー油が欲しいな…と思いつつも餃子単体での美味さにしみじみと呟いたらお姉さんも絶賛してくる。



「本当は醤油とかラー油とかのタレがあるともっと美味しいんだけど…流石に調味料の作り方までは分からないからなぁ…似たようなのでも料理の本とかには載ってないし」


「タレ、ですか…?」


「うん。…もしかしたら他の大陸とかの料理の本とかには載ってるかも」


「楽しみですね!」



俺が残念がりながら言うとお姉さんは不思議そうに聞き、俺のふとした予想に何故かお姉さんは俺がソレを作る前提で喜ぶ。

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