青年期 13
「…ごちそうさま」
「美味しかったです」
「…さて、午後の出撃までの約一時間なにしようか…」
洗い物や片付けはお姉さんに任せて俺はベッドに座りながら呟く。
「時間までココで休んでたらどうですか?」
「…そだね。30分ぐらい休んでいこうかな」
お姉さんの提案に俺は全然疲れてないけど…と思いながらも他にやる事が無いのでベッドに寝っ転がって時間を潰す事にした。
…10分後。
「…ん?」
「何かあったのでは?」
部屋のドアがノックされたので俺が上半身を起こすとお姉さんは良くない事態を予想する。
「はーい。…何かありました?」
「ココにアーシェ・クライン大魔導師が居ると聞いたが…」
「なんか先生に用があるらしいよ」
俺が返事をしてドアを開けると騎士が居たので用件を尋ねると、どうやらお姉さんに用があるらしいので俺はお姉さんに声をかけた。
「私、ですか…?」
「部屋の中に入ってもよろしいか?」
「入れても良い?」
「はい」
「じゃあどうぞ」
お姉さんが不思議そうに返すと騎士が確認を取るので俺はお姉さんに聞いてから部屋の中へと招き入れる。
「…大魔導師ともあろうお方がこんな狭い宿屋に泊まっているなんて…私の屋敷にでも招待いたしましょうか?」
…てっきり騎士が入って来るのかと思いきやなんか偉そうなおばさんが入って来ると、部屋の中を見ながら呆れたように呟きながら提案した。
「あ、いえ…お気持ちだけで十分ありがたいです」
「わざわざこんな所まで来た用件は一つ。貴女なら分かっているでしょう?」
お姉さんがやんわりと断るとおばさんはお姉さんを見ながら確認するように尋ねる。
「若返りの依頼ですね?名前をお伺いしても?」
「『イザベル・ラウル・コンテスティ』よ」
「…イザベル…ああ。コンテスティ侯爵夫人でしたか」
お姉さんの問いにおばさんが自己紹介するのでお姉さんはメモ帳を開いて確認すると納得しながら呟く。
「…コンテスティ侯爵って…へぇ…あの人の奥さんか…」
「多分旦那さんについて来たんでしょうね…」
俺が書類で忙しそうだったおっさんを思い出しながら小声で呟くと、お姉さんはおばさんがこんな前線に近い町にいる理由を予想して小声で返す。
「それにしても貴女がこんな所に居るなんて幸運だったわ。王都まで出向く手間が省けたもの」
「では、若返りの秘法を使う前にいくつか確認がありますが…よろしいですか?」
「ええ」
おほほ…と口元を隠して上品に笑うおばさんにお姉さんが確認すると笑いながら了承した。
「まず金額の確認ですが、一歳につき500万になります」
「500…!?」
「ええ、事前に聞いてますもの。それでよろしくてよ」
お姉さんの金額の確認に俺が驚くもおばさんは余裕の様子で了承する。
「次に注意事項ですが…若返りの年齢の単位は20歳以上からは5歳刻みになり、必ずしもご希望の年齢丁度の歳に若返る事が出来るわけではございません。多少前後しますので、ご了承下さい」
「…その前後というのはどれくらいなの?」
「1~2歳ですね。25歳を希望する場合は23から27の範囲になります」
「分かりました」
お姉さんが不測の事態に備えて前もって説明するとおばさんは少し確認して了承した。
「そして最後に…若返りの秘法を試した後の後遺症として、今の年齢に戻るまで老化の速度が二倍になります」
「二倍…!?」
「…二倍っていうと…40から20に若返った場合は10年で元に戻るって事?」
「はい。元の年齢に戻った後は老化の速度も通常通りに戻ります」
お姉さんはまさかのデメリットについての説明を始め、おばさんが驚くので俺が例えを出して確認すると笑顔で肯定してその後の事についての説明もする。
「…それって元の年齢は加齢後?それとも若返りの秘法を使った時点の年齢?」
「使った時点ですね。40歳で使った場合は40歳に戻ってからが通常の老化速度になります」
「へー。そう考えたら元に戻ってもその時点で他の人に比べて10年分若返ってる事になるのか…そりゃ凄い…!」
「…なるほど…後遺症についても了承しましたわ」
俺の確認とお姉さんの返答、説明を聞いておばさんは納得して了承した。
「ではご希望の年齢の方を」
「もちろん10代に決まっているでしょう!18歳まで若返らせてちょうだい!」
お姉さんが最終確認のように問うとおばさんは興奮したように答える。
「分かりました。では…」
お姉さんはおそらくゴブリンの物であろう魔石を取り出すと魔法の詠唱を始め…
「……おお…!!」
「…わーお…」
詠唱が終わって魔法を発動させると魔石が粒子状になって消え、おばさんの姿がどんどん若返っていく。
「…ふう…良かった。成功しました」
「…何歳若返らせたの?」
「えーと…『25歳分』ですね」
「じゃあ……1億2500万か…すっげ…」
俺の疑問にお姉さんがメモ帳を見ながら答えるので俺は値段を計算して驚きながら呟いた。
「お金を持って来て!」
「はっ!」
侯爵夫人は廊下で待機している騎士に料金を用意するよう指示を出す。
「…確認をお願いするわ」
「ありがとうございます。…えーと…」
騎士がトランクケースのような箱を持って来ると侯爵夫人は金貨をテーブルの上に置いていってお姉さんは枚数を確認する。
「…料金の方、確かに受け取りました。ありがとうございます」
「お礼を言うのは私の方でしてよ!若い身体とはかくも素晴らしい…!早速仕立て屋を呼んで服を用意させないと!」
料金の清算が終わってお姉さんが頭を下げてお礼を言うと侯爵夫人は嬉しそうに自分の手や腕を見ながら返し、騎士と共に急いで帰って行った。
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