学生期 参 6
…その二ヶ月後。
「えー、みなさん。来週からは職業体験実習があります」
「ついに来たか…!」
「なんかドキドキするな!」
「まあ俺には関係ないから頑張って来いよ」
「特待生は羨ましいもんだな!…いや、体験実習を経験出来ないってのは逆に可哀想か…?」
帰りのホームルームでの担任の報告に教室中がザワザワと騒がしくなる中、俺が適当に応援の言葉をかけると転入生が嫉妬したように言った後に一転して哀れみの目を向けて来る。
「いや、ハンターだから野外学習で既に体験実習をやってるようなものだしな」
「それもそうか。…いや、待てよ?他のハンター志望は実習しに行くぞ?」
「俺はハンターの事に詳しいから実習なんてしなくても良いし」
「…それもそうか」
俺の反論に一旦は納得するもやっぱり疑問に思ったのか転入生は不思議そうに聞くので理由を告げると今度こそ納得した。
ーーーーー
「…坊ちゃんは来週から始まる職業体験実習に行かないんですね」
「そりゃあね。現役ハンターの俺がハンターの体験実習するなんて周りに笑われちゃうでしょ」
…翌朝に俺が修行場所でいつものように鍛錬してるとお姉さんがやって来て確認するので俺は笑いながら返す。
「まあマスターランクの坊ちゃんがハンター見習いみたいな扱いで来たらまず間違いなく受付の人達は混乱すると思いますよ」
「多分冗談だと思われるよね。『笑ってはいけないまるまる』…みたいな」
「うーん…乾いた笑いは出るんじゃ…?他のクラスメイト達と一緒だったら指摘するかどうかも難しくなりますし…」
お姉さんの発言に俺が某バラエティ番組を例えに挙げるとお姉さんはありえない状況を想像しながら呟く。
「でも職業体験実習に行かないのなら一月の間予定が空くのでは?」
「授業が自習になるだけで俺のやる事は変わらないよ」
「…それもそうですね」
「むしろ鍛錬や修行の時間が午後の分も増えたと思えば有意義な方だし」
お姉さんが疑問を聞いてくるが普段から授業受けてない俺には特に関係のない事を告げた。
「まあ坊ちゃんの場合は毎週ダンジョンに行ってるわけですから、ソレが体験実習って言えなくもないような…」
「『体験』もなにも既に現役で本職なんだけどね」
「確かに」
お姉さんの笑いながらの言葉に俺も笑いながら返すと同意する。
「…でも良く考えたら『職業体験』ってのは一般クラスだけ?特待生の俺は免除されてるけど」
「多分特別クラスにもあるとは思いますよ。実家の手伝いとか、騎士団に入る前の調整とかになりそうですが」
「あー…なるほど」
俺がふと思いついた疑問を聞くとお姉さんは予想を答え、俺は納得しながら呟く。
…そして昼食時。
「兄さんは体験実習はどこに行くの?」
焚き火を点けて昼飯の準備をしているといつものように弟が妹を連れてやって来た。
「ああ、俺は卒業後はそのままハンター続けるつもりだからどこにも行かんぞ。唯一の居残りだ」
「あ、そうなんだ」
「お兄様は既にハンターのライセンスを所持してますものね」
俺の返答に弟が意外そうに返すと妹は納得したように言う。
「そうか…だったらもうハンター歴も結構なるんじゃない?」
「そうだな。多分今で8年とちょっとぐらいになるかも」
「…もう完全にベテランじゃん…」
「…10歳にして既にハンターとして働いているなんて…昔は実感がありませんでしたが、この歳になると流石にお兄様の凄さを実感しますわ…」
弟がふと思い出したように聞くので俺も思い出しながら答えると弟が驚きながら呟き、妹も驚きながら呟く。
「まあでも試験を突破した最年少記録が7歳だからな。10歳ぐらいでハンターになる奴は世界的に見ればそこそこ居るんじゃないか?」
「「7歳!?」」
「そうそう。確かその前の記録が8歳だった。三年で塗り替えられたみたいだけど」
と言ってもソレからもう20年以上も経つが未だに最年少記録は更新されてねぇみたいだが。と、俺はギルドで見た記録を説明する。
「…う、上には、上がいるんだね…当時の兄さんよりも年下でハンターになってた子が既に居たなんて…」
「だな。7歳って言ったら俺は変化魔法を学び始めた時期ぐらいだな」
「…そんな歳から…!世界は、広いんですね…」
驚きながら言う弟に賛同しながら同じ歳の頃を思い出しながら返すと妹も驚きながら呟いた。
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