学生期 参 5

…そして数ヶ月後。



「えー、みなさん。学校生活も残り半年となりました…進路の方は決まっていますか?」


「俺はやっぱ騎士だな。でもどこの騎士団に行こうか…」


「…正規兵でいいかな。騎士団って厳しそうなイメージあるし」


「正規兵も規律とか厳しいんじゃないか?最近治安が悪化してるらしくて治安維持部隊の人手が足りないとか言われてるから俺はソコに行こうかな…家族とか心配だし」



帰りのホームルームでの担任の問いに男子生徒達が将来を考えながら話し合う。



「俺も騎士だな。いざという時は頼ってくれよ!」


「俺は…騎士か正規兵かで迷ってんだよな~…やっぱどっちも国を守るのは変わらないけど内容がなー…」


「私は警護の方が楽そうだから正規兵かなー」


「私も」


「私は家族が心配だから治安維持部隊…かな」



男子生徒達が就職先を話すと女子生徒達も流れに乗って卒業後の進路を話し始めた。



「リデックはハンターだろ?」


「おう」


「お前ソッチ方面にも顔が広いからなー」


「ダンジョン行く度になんかハンター達と話してんじゃん?やっぱ貴族って交友関係が広いのな」



男子生徒の問いに俺が返答すると同じくハンター志望の男子生徒達が弄るかのように羨ましそうに笑いながら言う。



「いや、貴族だからってわけじゃねぇぞ。選民思想のある奴とかは基本騎士以外は見下す感じだからハンターを蔑んだりしてるし」



逆にハンターと交流ある貴族の方が珍しいしな。と、俺は男子生徒達の誤解を解くように訂正する。



「ふーん…じゃあお前が変わり者って事か」


「いやソレは流石に一線越えてねぇか?いくらリデックが寛大だからって馬鹿にするのはダメだろ」


「おっと、そういう意味じゃなかったんだが…ごめん。言い方が悪かった」



男子生徒がどうでも良さそうに言うと他の男子生徒が注意し、直ぐに謝った。



「みなさん喧嘩はしないようにお願いしますよ。あと、特待生以外は卒業試験もありますので、それに向けた準備も進めておくように」


「いや俺たちが喧嘩なんて、するわけないじゃないですかー」


「それより特待生は卒業試験無いなんて羨ましいな!」


「でもなんでわざわざ特待生の事を言ったんですか?私達には関係ないハズじゃ?」



担任のホームルームを締めるような発言に男子生徒達が笑いながら返すと女子生徒の一人が不思議そうに聞く。



「…確かリデック君が特待生だったはずですが…ですよね?」


「「「「え!!??」」」」


「はい」


「私の勘違いでなくて良かった…ではみなさん、良い週末を」



担任が不安そうに確認するとクラス中が俺を見ながら驚き、俺が返事をすると担任はホッとしたように呟いて教室から出て行く。



「…お前特待生だったの!?」


「本当か!?いや、いつから!?」


「二学年に上がってすぐぐらいから」


「…特待生って学費無料で特別クラスだろ?じゃあなんで一般クラスに?」


「『貴族の坊ちゃん達と一緒は嫌だ』って言ったら『じゃあそのままで』って一般クラスのまま」


「…ぷ…!ははは!いかにもお前らしい返答だな!」



驚くクラスメイト達の疑問に答えていくと男子生徒の一人が笑い…



それを皮切りにクラスメイト達が笑っていって教室中が笑いに包まれる。



「…いやー、でもなんで特待生に?」


「多分クラス対抗戦で優勝したからじゃねぇかな?」


「あー、なるほどね…」


「確か一学年が優勝したのも俺らが初って言ってたっけ…ははっ」



男子生徒の笑いながらの問いに俺は本当の事を話すわけにもいかないので、適当にでっち上げた予想を話すと他の男子生徒達は納得した。



「でもなんで今まで黙ってたんだよ?」


「聞かれなかったから。自分から言ったら自慢してるみたいにならないか?」


「まー確かに…いきなり『俺特待生なったから』なんて言われたら『なに自慢してんだよ!』ってなるしな」



男子生徒が疑問を聞いてくるので理由を話すと他の男子生徒が納得したように返す。



「ん?だったらなんで自炊してんだ?レストランでの食事も無料のはずだろ?」


「なに、卒業した後の事を見据えてな。高級な料理に舌が慣れて生活レベルを落とせなくなったら大変だろ?」


「お前のその合理的な考えすげーな。嫌味とかじゃなくて本気で見習いたいもんだ」


「な。俺らだったらそんな事考えもしねぇで毎日『美味い美味い』ってレストランで飯食ってると思うぜ」



別の男子生徒の疑問に俺が笑いながら返すと他の男子生徒達は感心したように言う。



「ははは、今からでも遅くはないと思うがな。じゃ、頑張って合理的で効率的な生活を目指せよ」


「おう」


「…努力する」


「一応やってはみるけど…上手くいくかぁ…?」


「じゃあな」



俺が笑いながら席を立ってそう告げると男子生徒達が微妙な顔で返事するので、俺は手を上げて挨拶して自室へと戻った。

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