学生期 弐 10
…それから数時間後。
「おっと…あと一時間でおやつの時間だ。そろそろ戻ろうか」
最下層を歩きながら腕時計を取り出して見ると既に結構な時間が経っているので俺はお姉さんにそう伝える。
「あ。もうこんな時間なんですね…ダンジョンには朝早くから入ったのに時間が経つのが早いなぁ…」
「ボスまで倒して学校に帰ると夕方ギリギリ…って感じだね。今日はボスと戦わないけど」
お姉さんも腕時計を見て時間を確認すると残念そうに呟くので俺は予想を返して来た道を戻った。
ーーーーーー
「おおー…思ったよりも魔石が集まるもんですね」
「まあ最初に素手である程度倒してから武器を使ってるから」
ダンジョンの扉から少し離れた場所で戦利品を広げるとお姉さんが意外そうに言うので俺は適当な感じで返す。
「…しかし、魔石抜きをしなくても毛皮とか肉は取れるんですね」
「ああ、魔物を倒す時に心臓を一突きで倒せば魔石以外の素材は全部取れるみたいだよ」
「なるほど…」
お姉さんはまたもや素材を見ながら意外そうに聞くので取れる条件を教えると納得したように頷く。
「じゃあ学校に戻る前に…ダンジョンに付き合ってくれたお礼として、この中から好きな物貰っていいよ」
「えっ!?いいんですか!?私、今日はただ見てただけで一切何もしてませんが…」
俺が報酬を支払おうとしたらお姉さんは遠慮するように確認してきた。
「そりゃいざと言う時の保険は大事でしょ。先生がいるから無茶が出来る…ってトコもあるし」
「では、ありがたく…ベオウルフの魔石と、ゴブリンの魔石を2個いただきます!」
「ん。じゃあ学校に戻ろうか」
「はい」
俺の説明にお姉さんが魔石を選択して貰うので残った物は片付けてから馬車に乗り、俺達は学校へと戻る事に。
その夜。
「兄さん、なんか信じられない数の魔石を渡したんだって?」
月に一度の報告で実家に帰っていた弟が寮の部屋に戻って来るや否や事実確認をしてくる。
「ん?ああ…先生が母さんに会いに行くって言ってたからついでに持ってってもらった」
「信じられない数?どのぐらいですの?」
俺が肯定しながら返すと妹が興味を持ったように尋ねた。
「父様が言うには全部で2023個だって」
「2000!?そんな数の魔石が!?」
「まあ一年分だからな」
弟の報告に驚いて包丁を握ってる手を止めながら確認するので俺は軽い感じで理由を教える。
「ん?…よく考えたら魔法協会が今日すぐに買い取りに来てたのか?先生が持って行ったのって昨日だぜ?」
「魔法協会は昨日、魔石が来たと同時に来てたらしいよ。『買取は数分で済んだ』って聞いたから、多分兄さんの家庭教師が事前に手紙とかでやり取りしてたんだと思う」
「へー」
俺が疑問を聞くと弟は父親や母親から聞いたんであろう話をしてきた。
「魔石とは一年でそんなに溜まるものなんですか?」
「さあ?でも兄さんが実際に集めたんだから不可能ではないんじゃないかな…?」
妹の問いに弟は不思議がりながらも俺の実例で判断したように答える。
「塵も積もれば山となる…ってヤツだな。どんなに小さい事からでもコツコツと続けて行けばいずれ大きくなるっていう良い例だ」
「…確かに」
「そうですね」
俺が前世の記憶の知識からのことわざを言って意味を説明すると二人は納得したかのように返した。
「じゃあこの仕込みをさっさと終わらせて今日は少し早めに寝るか…エーデルも疲れてるだろうし」
「うん。そだね」
「分かりました」
俺もダンジョンでの疲れが少しは溜まっているため、早めの就寝を提案すると妹は了承して作業を再開する。
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