学生期 弐 11

…翌日。



朝早くから起きて修行場所で鍛錬してるとお姉さんがコッチにやって来るのが見えたので…



俺は変化魔法の極技を見せるついでにイタズラを仕掛けようと全ての分身を解いた後にまた分身して本体の俺が隠れた。



「こんな休みの日にもやってるんですか?」


「少しね。朝の数時間だけ」


「へぇ~…相変わらず熱心ですね」



お姉さんの問いに分身の俺が答えるとお姉さんは感心したように返す。



「努力は大事でしょ?なんせ今は変化魔法の極技を鍛えないといけないし」


「変化魔法の、極技…?」



分身の俺がちょっと無理矢理な話題転換をするもお姉さんは特に気にならなかったらしく不思議そうに聞いてくる。



「見たい?」


「はい!ぜひ!」



分身の確認にお姉さんは喜びながら肯定するので本体の俺がそーっとお姉さんの後ろに立つ。



「…ん?えっ!?坊ちゃん!?え!?」



俺が肩を叩くと振り向いた後に驚き、目の前の分身の俺を見て更に驚く。



「「ドッキリ大成功~。コレが変化魔法の極技」」


「え?え?なんで坊ちゃんが二人も!?」



お姉さんを前後に挟むように同時に笑って教えるとお姉さんは本体と分身を交互に見ながら慌てたように聞いてきた。



「もっと」「増やす」「事も」「出来るよ」


「増えた!?ええっ!?もしかして夢?これは夢なの…?…痛いけど…」



俺が4体に増えながら言葉を繋いでいくとお姉さんはパニックになるように現実逃避を始めて自分の頬を引っ張りながら呟く。



「ややこしくなるから戻るけど」


「…一人になった……どういう事なんですか?今のは残像?残像が残るほど速く動いたんですか?」



…そのままじゃ全員が同じ事を喋って混乱させそうなので元の一人に戻るとお姉さんが首を傾げながら尋ねる。



「ふっふっふ…実は全員実体があるんだなー。これぞ変化魔法の極技『分身』!」


「ええっ!?分身!?」


「今は最高15体まで増やせる。でもそうすると魔力の量が平均の6割ほどまで減るけど」


「…分身だから1/16って事ですか?」



俺が得意げに笑ってドヤ顔で告げるとお姉さんは良いリアクションで驚き、俺の補足に少し考えて確認した。



「そゆこと。今んとこ使う場面は無いし、必要になった事も無いけど…あると便利だよ」


「…『便利』とかそういう次元とかレベルじゃないような気がしますが…とにかく凄いですね!」



俺の肯定にお姉さんは微妙な感じで呟くもすぐに褒める。



「ちなみに最近…先週かな?に、また新しい極技に成功した」


「まだあるんですか!?」



あと一つの新技を教えるとお姉さんが意表をつかれたかのように驚愕した。



「これはねぇ凄く難しかった。まあかかった時間は分身に比べたらまだ早い方なんだけど」


「どういう技なんですか?」



俺が成功までの苦難を語るとお姉さんはワクワクしながら聞いてくるので…



「…その前に。今の極技『分身』もそうだけど…これからやる事は絶対秘密にしてね?俺の家族にも誰にも『絶対に言わない』って約束できる?」



俺はその新技を披露する前に一旦口止めを図って確認する。



「はい。例えこの身が千切れようとも墓場まで持って行きます」



するとお姉さんは迷う事なく即覚悟を決めたような顔で頷いた。



「約束だよ?」


「はい。約束します」


「先生の口が滑って他人に情報が漏れたら老師とかをビックリさせたり驚かせる事が出来なくなるんだから気をつけてね?」



俺が真面目な顔で確認するとお姉さんも真剣な顔で再度頷くので理由を話すと…



「…はい。気をつけます」



お姉さんは気が抜けたかのように笑いながら了承する。



「それで…どんな技なんですか?新しい極技というのは?」


「それが…技名はまだなんだ。なんせ習得したばっかだからね」



お姉さんの興奮しながらの質問に俺は若干困りながら言い訳のように返した。



「なるほど、技名はまた後々考えるんですね。それで?どのような技なんですか?」


「ふふふ…はい」


「「……えっ!!??」」



興味津々といった様子で早口で確認してくるお姉さんに俺は笑いながら変化魔法をかけ…



スライム化からの分身をさせた後に変化魔法を解除すると、お姉さんは不思議そうにお互いを見合った後に二人同時に驚愕する。



「変化魔法の極技その2。他人に変化魔法をかけて強制的に分身させる技」


「「そんな事が出来るんですか!!??」」



俺がドヤ顔でピースしながら説明するとお姉さんは二人同時に俺との距離を詰めてきて驚きながら確認した。



「凄いでしょ?ちなみに右側が本体ね。あと今の状態だと魔力が半分に分かれてるからさ」



俺から見た方向で指差して説明した後に注意をすると…



「私が本体で…」「私が分身って事ですか?」



お姉さんはお互いを見ながら言葉を繋げて二人同時に俺を見ながら確認するように尋ねる。



「そうそう。例えば…先生、座ってみて」


「私?分かりました」


「で、先生は後ろから肩揉んで」


「肩揉み?分かりました」



俺が左側のお姉さんを座らせて本体のお姉さんに分身のマッサージを指示すると不思議がりながらも実行した。



「…ああ~…流石私。分かってるぅ…」


「ココの方とか」


「そう!そこそこ!」


「じゃあ戻すよ」



分身のお姉さんが気持ち良さそうな顔で気持ち良さそうな声を出すと本体が更に攻めるので…



俺は事前に声をかけてから変化魔法を解除して分身を解く。



「え?…え?」


「どう?分身の記憶や経験…体験とかは本体に共有されるみたいで、逆に痛みや疲労…精神的な苦痛とかの負の経験は切り捨てられるようになってるんだけど」


「…自分で自分の肩を揉む、そして自分に揉まれてる体験なんて初めてです……す、凄い…!」



困惑してるお姉さんに俺が説明や解説をしながら聞くと呆然としたように体験談を話し、興奮したように呟く。



「どうやったらこんな事を思いつくんですか!?坊ちゃんの頭の中は一体どうなって…!」


「分身が変化魔法を使ってる時にちょっと思いついてね。他人に分身をかけられたら面白いだろうなー…って」



ただ物凄く難しいけど。と、驚きながらも興奮した様子で聞いてくるお姉さんに軽く経緯を話し、俺は注意点を告げる。



「ちなみに…分身が魔物化すると完全に魔物扱いらしく、その魔物から魔石や素材が取れるよ。…まあ自分が魔物化していく様なんて二度と見たくないから金輪際やる事は無いけど」


「ああ……でも、一応…試したんですね…」



俺がおまけで分身で試した事を話すとお姉さんは微妙な顔で納得し、同情するかのように呟いた。

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