第2話 恵理

 歌舞伎町のアーチをくぐり、コマ劇場の横を進むと目的のホテルがある。

「どの部屋がいい?」

「うーんどこでも」

 だろうと思う、恋人同士でもないのだ。カラオケをするわけでもビデオを見るわけでもない。ベッドとバスルームがあればよかった。


 部屋に入ると、理恵を抱きしめ、唇を重ねる。

 意外なことに理恵は背中にまわした手に力を込めた。

 舌が絡められる。


 キスは嫌、商売の女性はよくそういうと言われるが、亮は女性からそのセリフを聞いたことがない。

 身体はいいけれど唇は好きな人のため、そんなセリフを映画やドラマなどで見たことがあるが、実際にそんなことを思う人はいないのかもしれない。


「脱がそうか?それとも」

「脱ぐ、早くやりたいから。取りあえず一回しようよ。お風呂入れてきてくれませんか」


 風呂のセットをして戻ってきたら、理恵はもう素っ裸になっていた。

 服の上から見るより大きく形のいいおっぱいにちょっと濃いめの乳首。二十六だと言った年齢は、嘘ではなさそうな張りのある胸だ。


「亮さんも脱いでよ、私だけじゃ恥ずかしい」

 スーツを脱いだら、ちゃんとハンガーにかけてくれた。こういうところは小さなことだけど嬉しい。

「お風呂一緒に入ろうか」

「うん、流しっこしよう」


 理恵の身体は思った以上に張りがあり、すべすべしていた。やっぱり半玄人だからだろうか。

 ちなみに亮はピンサロからソープ嬢まで日本中でそこそこの数を知っているけれど、肌があれているというような人にはあったことがなかった。いわゆる立ちんぼですらそうだった。どちらかというと素人の方が肌の手入れはよくないことが多い。


「大きいね」

「ありがと、理恵さんの胸もきれいだよ」

「口でしてあげよっか」

「ベッドで舐めあいがいいな」

「いいの? こんな女だから舐めたくないって人多いんだけど」


「病気のこと?」

「かな?」

「気にしないよ、理恵さんそんなに愚かじゃなさそうだから」

「ほんと、うれしい。ありがとう」


 亮がベッドに横たわると、理恵がまたがって来た。

 理恵が亮のものを咥え舌を使い始めるのに合わせて、亮もクリトリスに舌を付ける。

 それだけで、理恵の身体がピクリと反応する。


「理恵さん上になる?」

「ううん、下がいい」


 何回エッチをしても、初めての女性に入れるときはドキドキする。

 


 「時間はあるの?」

 終わった後で、理恵が聞いた。

「うん、明日休みだから、総武線の最終までは」

「じゃ、まだできるね」


「え?」

「私じゃいや?」

「御一発じゃないの?」

「してくれるなら、何回でもいいよ。その代わりお願いがあるの」

「お金?」

「結果としてはそうだけど、よかったらまた会って」


 亮には、どちらも断る理由がなかった。

「俺のこと気に行ってくれたってこと?」

「うん、やさしいし丁寧だもん」

「普通じゃないか」

「ううん、金払うんだからって人が圧倒的に多い」

 なるほど、亮は女性にというか、人にそういった態度をとる人間の気持ちがわからない。それだけが取り柄かもしれないな、と少しおかしかった。


「じゃあ、今度は上になってくれる?」













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