第14話 枕
「レイナ行くぞ」
「あ、はい」
レイナは放心状態から立ち直りまた深層の敵を葬っているが、魔法の援護があるだけで今までと違うのだろう。
「レイナさん!」
「はい!」
コンビネーションもバッチリだな。
上層まで上がってくると一息ついて、外に出る。
浅草ギルドに入ると、真っ先にチエリがおばちゃんに寄って行って、
「お母さん!攻略したよ!」
「まぁ!今日はお赤飯ね!」
赤飯は違う気がするが良かったね。
「タクト、魔法はすごいね」
「あぁ、チエリはあれで回復魔法も使えるからな」
「嘘!本当?」
「あぁ、最初はヒーラーになるとおもってたんだがな」
「そうなんだ」
「なんだ?魔法使いたいのか?」
「いや、魔法はチエリに任せる」
「そっか」
なんだかんだで上手く行きそうだな。
「レイナさん」
「レイナでいい」
「え?」
「私もチエリって呼んでるからレイナで構わない」
「は、はい」
「俺もタクトでいいからな」
「はい!」
これでパーティーとして続けていけるだろ。魔石や素材を換金して三つのカードに分ける。
「あの装備は貰っても?」
「あぁ、俺からのプレゼントだよ」
「やったぁ!」
チエリは嬉しそうに飛び跳ねる。
「そういえばチエリはマップはいるか?」
「え?」
「スキルオーブがあるんだが、いるならやるぞ?」
「入ります!」
「ならほい!」
「わっ、投げたら危ないですよ」
「悪い悪い」
チエリはオーブを胸に当てると吸い込まれて行く。
「覚えました!」
「ならよし、今日はここまでだな!」
「えー、私とデートしようよ!」
「なら私と」
「いや、汗もかいてるし銭湯に行くんだが」
「いいですね!」
「おっきいお風呂!あのアパートお風呂狭すぎるんだもん」
結局は三人で銭湯に行くことに。二人ともインベントリを持っているから着替えくらい大丈夫らしい。
湯船に浸かりながらあのメンヘラだったレイナも普通になってきたし、チエリも入ってパーティーらしくなったなぁ。
銭湯から出ると二人とも出てきた。
「タクト!いいお風呂だったね」
「もう、レイナはタクトから離れてください」
「いやよ!なんでチエリの言うこと聞かないといけないのよ」
「じゃあ反対側は私です」
「あの、動きづらいんだが」
「いいじゃない!」
「そうですよ」
「はぁ、まぁ、いいけど」
秋も半ばかな、少し肌寒いが二人のおかげで今度は暑くてしょうがない。
まぁ、二人が満足してるならしょうがないか。
帰りに寄りたいというので部屋にあげる。
「こら、何をしている?」
「あ。ここらへんにエッチな本が」
「ねえよ!」
「あ、インベントリの中か!」
「うっせ!」
レイナが急に来てビックリしたがどうしたんだ?
「パーティーハウスが欲しいと思いませんか?」
「思わないけど」
「思いませんか?」
「いやまったく」
何を急に言い出すんだ?
「この部屋狭いよ!だから引っ越しする!だからルームシェアしよう?」
「俺はこれくらいがちょうどいいけどなぁ」
ワンルームで居心地はいいし。
「お風呂!狭いでしょ?」
「まぁな。でも銭湯行ってるし」
「むー!タクトの寝顔とか見たいし、夜這いとかしたいの」
「それでハイと言えるやつがいるかよ」
「バフッ、フスー、フスー」
「やめろ!布団の匂いを嗅ぐな」
「落ち着く為なの!やーめーてー!」
このやろう!部屋にあげれば好き勝手しやがって。
とりあえず引っ張ってソファーに座らせる。
「んじゃどうしたらいいの!また監視するぞ!」
「するな!…まぁ、引っ越しは考えなくはないけど」
「じゃあ!」
「ルームシェアはしないぞ?」
「なんでよ!こんな可愛いレイナちゃんがついてくるのに!」
「プライベートがなくなるだろ!」
「もうないよ」
「あるっつーの!」
「………」
「ないのかよ!」
どっかに隠しカメラとかついてないのか?
探し出してやる。
「バフッ、フスー、フスー!フフスー」
「やめろっつーの!」
頭を叩く、
「叩くならこっち」
「尻を突き出すな!」
この居住空間が安全でない可能性がでてきて、本当に引っ越しを考える。
まぁ浅草ダンジョンも飽きてきたし、本当に引っ越してもいいかな。
「引っ越しは考える。だがルームシェアはしない!そして隠しカメラかなんか知らんが全部取り外せ!」
「………そんなのないよ」
「その間はなんだよ!」
「私帰るね」
「枕を持って行くな!」
「後で返すから」
「後でならっていいわけないだろ」
「あれもダメこれもダメ!ならなんならいいの!」
「全部ダメだ!」
「………じゃ」
「あっ!あいつ枕持って行きやがった」
はぁ、最近普通だと思ってたのにな。
くそっ、枕ないと眠れないじゃねーかよ。
あとで買いに行こうとしたら新品の枕が玄関脇に置いてあった。
「あいつ、このためだけにきやがったな」
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