第10話 ダンジョンデート?


 家に帰るとスマホが鳴る。

「はい」

「ハイじゃない!今日の子はだれなのよ!」

 レイナがいつにもなくドスの効いた声で喋ってくる。

「は?ギルドのおばちゃんの娘さんだけど?」

「何で私より先にパーティー組んでるわけ?」

「いや、新人ひとりじゃ無理だろ?」

「上層でスライム狩ってりゃいいのよ」

「ひっでぇな、知り合いの娘さんだからしかたないだろ?」

「むぅぅぅぅ!じゃ、じゃあ今日は許してあげるわ」

「明日も約束したんだが」

「なーんーでーよー!私が先にパーティー申し込んだでしょ?でしょ?」

「それはそうだけど、別にパーティーくらいいいだろ?」

「わ、わかってるわよ」

 マネージャーがなんか言ってるな?

「わ、わかったわよ、じゃあ、今度は私ともパーティー組んでくれるのよね?」

「それなら良いぞ」

「やったわ!ようやくダーリンと一緒にダンジョンデートよ!」

「ダーリンじゃねぇけどな」

「………」

 またマネージャーと作戦会議か?

「じゃあ、明後日ね!明後日の朝から」

「浅草ダンジョンでいいか?」

「いや!えーと、渋谷ダンジョンで!」

 ちょっと遠いけど良いか。

「分かったよ」

「絶対よ!」

「はいよ」

「じゃ、じゃあおやすみ」

「おやすみ」


 はぁ、まぁ明後日だしいいか。


 次の日も浅草ダンジョンにいる。

 チエリちゃんはレベルを上げるためにバシバシと杖で戦っている。

 攻撃方法がないのが痛いよな。

「またレベリングしようか」

「は、はい!」

 下層まで行ってレベリングしてやると、すぐにヒーラーのユニークをとってツリーを解放すると今度は魔術師に切り替えたらしい。

「ファイヤーボール」

『ぐぎゃあ』

 こんだけあれば中層までは危険がないだろう。


「今日もありがとうございました」

「いいよ、よくがんばったね」

「ウチのチエリをよろしくね」

「残念、明日は予定があるんですよ」

 レイナと言う暗黒神との集いが。

「そっか、残念です」

「あはは、また機会があればね」

「はい!またお願いします」

 チエリちゃんは本当にいい子だな。同い年だけど。


 翌日はあいにくの天気だが、行かないわけにはいかないよな。

電車に乗って一時間、渋谷ダンジョンについたら、囲まれてるレイナを発見。

「着いたけどどうしようか?」

「タクト!見つけたわ!」

「うそ、早くない!?」

 駆け足で寄ってくるモデル体型のレイナはとても絵になるが、写真撮られてるから!

「お待たせしました」

「なんで?いつものタクトでいいよ!」

「写真撮られてんぞ?」

「いいのよ!それくらい、それよりパーティー組んでよ」

「承認したぞ」

「よし!行きましょう」

 腕を組まれて引っ張られる。

「はぁ、これまずいだろ」

 柔らかいのが当たってるし。


 渋谷ダンジョンは迷宮方のダンジョンで、よくあるゲームの様な構造だ。

「まずはギルドに行くわよ?」

「なんで?」

「タクトのSランクの手続き」

「は?俺はこの前Aランクに上がったばかりだぞ?」

 そんなすぐに上がれるわけないだろ。

「もう上の方には通してあるから受け取るだけになってるわ」

「なにが?」

「これまでの功績を考えてみなさい?モンパレは止めるし、深層のモンスターは倒してるし」

「それは別に報告…もしかして」

「全部報告済みよ」

「はぁ?!」

 終わった、俺の平穏な日々。

「はーい!頼んでたの出来てる?」

「はい!これで藍沢様もSランクです」

「はい、これをこーして、カードは?はい、これが新しいカードね」

 ドッグタグを着け変えられ、カードを交換して俺はSランクへと上がってしまった。


「さてと、放心してないで早く行きましょう!」

「あぁ」

 ロッカールームに入るとしょうがないから鎧をつける。

「タクトはまだその鎧なの?」

「あぁ、これは別に変えなくてもいいかなって」

「ダメよ!Sランクなんだからもっといいのを持って!」

 レイナが言うのも一理あるな。

「んじゃちょっと待って」

 ショップを展開して黒の革鎧を探すと出てくるのでそれと、黒の袖なしローブとブーツを買う。計六百ゴールド。

「何それ!私のも何か買ってよ!」

「あ?んー、どれがいいんだよ」

 断るとめんどくさそうなので買ってやることにした。

「あー、指輪がいいけど、ネックレスでもいいなぁ、あ、これなんかいいんじゃない?」

 小ぶりのダイヤのネックレス。力と速が上がる。百万ゴールド。

「分かった」

「つけて!」

「はいはい」

 ネックレスをつけてやると嬉しそうにしている。

「俺はロッカールームにもう一度行ってくるぞ」

「はい」

 黒で纏めたから厨二っぽいが、戦い方がそうだからしょうがない。


「さあ、行こうか」

「うん、似合ってるよ」

「ありがとう」

「私のは!?」

「似合ってるに決まってるだろ?」

「ちゃんと言って欲しいの!」

「似合ってる」

 にへらと笑うレイナは可愛いんだが、メンヘラなのがなぁ。


 渋谷ダンジョン上層から始めるが、道案内はレイナだ。

「私深層までの道は覚えてるのよ」

「凄いな」

 中層、下層と降りて行くが途中で宝箱探知が反応した。

「ちょい待って」

 ここらへんになにか、あった。

 俺はスイッチを押すとブロックが崩れて宝箱が出てきた。

「え?!凄い!」

「だろ?」

 罠を解除して鍵を開けるとそこにはカードとスキルオーブが入っていた。鑑定してカードは二百万ゴールド、スキルオーブはインベントリだった。

「レイナはインベントリはとってないよな?」

「持ってない」

「ならこれで取れるぞ」

 スキルオーブを渡してやる。

「いいの?」

「俺は持ってるからな」

「やったぁ!使うね」

 レイナはスキルオーブを使ってインベントリを取得した。


「これは俺がもらうぞ」

「いいよー!それなに?」

「さっきのショップで使えるカードだ」

「私それ持ってるから今度あげるね」

「いや、自分の好きなの買えよ。ショップは使ってやるから」

「んー、分かった」

 カードをインベントリに放り込んで、レイナも自分の荷物をインベントリに入れる。


「便利ね!」

「だろ?時間経過もないからこんなふうに」

 バーガーを取り出すと一つ渡す。

「いいね!こんな使い方ができるんだ!」

「そう、腹ごしらえしたら深層に行こう」

「うん!」

 バーガー一個じゃなんだからセットで渡して俺も二個目のバーガーを食べる。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る