第6話 モンパレ
浅草ダンジョン、深層。
「バックアタック」
『グギッ』
ゴブリンキングを倒すと、今度はオーガが出てくる。
「はぁ、クローキング」
オーガは俺を見失ったらしい。
「バックアタック」
「ウゴォッ」
ドロップ品を集めつつ思う。ようやく深層でも動けるようになってきたな。
最初のうちは緊張してなかなか身体がうまいこと動かなかった。やはりトラウマには身体が反応してしまう。がようやく慣れてきた。
暗殺者のクローキングはとても便利だ、一瞬で認識出来なくする。今の所、百発百中だが気をつけている。
浅草ダンジョン深層のボスは氷竜らしい、ドラゴンキラーがあるからいけると思うがとりあえず様子見でまだ深層を徘徊しよう。
あれから随分とモンスターを倒したのでそろそろ上がろうかと思ったところで、氷竜を見かける。クローキングで逃げると気付かれたっぽいけどなんとか逃げ切ることに成功した。
「やっばかったな、まだ戦いたくないからな」
せめてレベルが150くらいになってから挑みたい。
ギルドでおばちゃんに買い取りを頼むが娘のことばかり話すから時間が伸びる。
「でね。その」
「また今度聞きますから手を動かしてくださいよ」
「あら、そう?」
「はぁ」
いつもこんな調子だから慣れて来たけど、しつこいな。
換金が終わったらそのまま銭湯に直行して汗を流す。
「広い風呂はやっぱりいいな」
着替えて出るとちょうど夕方でゆっくりと歩きながら家に帰る。
急にスマホの
俺は走り、浅草ダンジョンに向かうとちょうど冒険者達が戦っているところだった。
俺は装備をして、モンスターを倒しながら中に入っていくと、そこはモンスターパレード真っ只中だ。
モンスターを斬り崩しながら大穴に近づいて行くと、氷竜が中層まで上がって来ていた。すぐにクローキングをし、大穴からダイブ。
「ウオオオオォォォォ」
氷竜の頭に踵落としを決める。
『ゴアァァァァァ』
もう一度クローキングを使い、バックアタックで氷竜の逆鱗を狙う。
『ゴアッ』
氷竜は動かなくなりドロップ品に姿を変える。ドロップ品を回収してモンスターパレードを処理して行く。
大量のモンスターを中層から上に向かって倒して行く。ドロップ品はインベントリの中に放り込んでいくがモンスターがとにかく多い。ようやくおさまったのが一時間後だった。
「なかなかハードだったな」
せっかく風呂まで入ったのに、今日はもうシャワーでいいや。
外に出るとそこら中怪我人だらけだ。
今日に限って氷竜を倒しとけば良かったのにと悔やむ事になるなんて。
俺にできることを探すが、酷い怪我の人にポーションを渡すくらいだ。
「ありがとう」
言われると心が痛む。
死亡者ゼロだったからよかったものの、これでも大惨事だな。
あとは瓦礫の撤去を手伝って、家に帰る。
「はあ。あのときビビらずに倒しておけば良かった」
心の奥底から煮えたぎるような感情が湧いてくる。
「クソっ」
たらればを言ってもしょうがないが、あの時の俺でも倒せたはずだ。
出来るだけ災害が起きないように立ち回ろう。
今回は氷竜に目をつけられたのかも知れないし、今度同じことがあったら倒すしかないよな。
「ふぅ、いまさらか」
グツグツと煮えたぎったものは急に氷のように冷たくなる。
「はぁ、上手いこと行かないなぁ」
次の日浅草ダンジョンに行くと瓦礫の撤去作業を業者がやっていた。ギルドはテントを張って対応しているらしい。
「おばちゃん大丈夫だった?」
「平気よ、それに助けて回ってたでしょ?ありがとうね」
「普通のことだよ」
「そうね、さて。仕事仕事!」
「頑張ってね」
「あいよ!」
おばちゃんも腕に包帯を巻いていたな。
怪我したんだろう。
「さて、俺も頑張ろうかな」
浅草ダンジョンに潜って行く。
昨日のモンパレが嘘のように静かだ。
深層まで行くともう氷竜の子供がいた。
『キャアァァァァァ』
「やっぱり殺すしかないよな」
炎龍の豪剣でトドメを刺すとドロップ品を落として消えていった。
氷竜の牙に鱗、あと指輪が落ちた。
昨日のドロップの確認もしてなかったので確認する。氷竜の牙に鱗、肉に魔石、と氷竜の短剣がドロップしていた。
氷属性の短剣はとても使い心地がいい、暗殺者と相性もピッタリだ。
それにしてもダンジョンの生物はドンとそのままで出てくると思ったが違ったんだな。そういえば卵があったしな。ここにも卵があるのか?
探してみると小さな横穴があり、そこに卵があった。念の為倒しておくとまた声が聞こえる。
『特殊モンスター討伐を確認、スキルツリーの解放、ステータス更新』
あれ?あの時より少ないな。熱くもならないし痛くもない。
ステータスを見てみるが、変わったところはない。スキルツリーの解放って言ってたから他のスキルツリーが出てるんだろうけどそれはまた今度確認するか。
俺はそれから深層でレベル上げをしている。
浅草ダンジョンから出ると簡易浅草ギルドにて半分ほど魔石を取り出して買い取りしてもらう。
「あら、やっぱり私の思ったとおり深層まで行けるようになってるじゃない。私の娘をもらってよ」
「いや、間に合ってますから」
「もう、そんなこと言わずに」
「はやく仕事して下さい」
「もう、はいはい」
おばちゃんごめんね。
それより深層まで行けることを知るなんておばちゃんやるなぁ。
これなら全部出せば良かった。
まぁ、いまさらか。
「ランクアップはしないの?」
「今はまだCランクでいいですよ」
「そうね、まだなったばかりだものね」
「はい」
換金したお金はカードに入れてもらう。
冒険者は登録した際ドッグタグとカードを発行してもらう。そのカードはキャッシュカードの役割も果たしている。
「はい、それじゃ」
「あぁ、私の娘」
「また聞きますねー」
「もう!」
おばちゃんも仕事だけしてくれれば良いんだけどな。
銭湯に行き、外に出ると夕焼けが眩しい。
「もうすぐ秋かなぁ」
まだ暑いがゆっくりとした時間が流れる。
家に帰り着くと流れでテレビをつける。
やはり冒険者特集なんかやっていて昨日のモンパレのこともやっていた。
「うお、少しだけ俺も映ってるじゃん」
ほんの少しだけどテレビに映っているのは俺だった。
多分誰も気づく人は居ないだろうけど、何故かちょっと嬉しくなった。
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