第19話 ハイキング

 朝、リビングに行くと、俺は冷や汗をかく。そこに鬼がいたからだ。


「し、し、し、師匠!」

「やぁ、元気だったかい? アーク。槍の訓練の方は?」

(ヤバい、ヤバい、ヤバい、正直に言うしかない)


「やってません」

「そうか、じゃあ、特訓だな」

(やめてください。師匠。死にます)


 そう思っていると親父は師匠を呼び、キロンママと何やら計画を立てている様だ。


「ルートはこれでいいか?」

「代わり映えないわね、もっとキツイルートとかにしないの?」

「おまえな、家族全員だぞ」


「ボクはこのルートでいいと思います」

「出発時間どうする?」

「棲み処の近くで、ご飯食べるんですよね。四時半で良いとボクは思います」

(師匠、その時間はやめてください。あの時の記憶がよみがえります)


「親父、何を話しているの?」

「あぁ、二家族合同のハイキング計画を話してた」

(よかった、師匠は呼ばないんだ)


「それと、師匠も連れて楽しくやるぞ」

(親父、俺にとっては精神的苦痛です)


 ◆


 ハイキング当日


 家族みんなで借りた馬車に乗り麓まで行く、ここから先は歩きだ。先頭は俺、その後に親父と師匠、キロンママ。みんながいて、殿はキロンパパ。空にはルシフが飛んでいる。


「親父、俺先頭でいいの?」

「そうだ」

「まるで陣形組んでいるみたいだけど」

「言ってなかったっけ?」

「??」

「魔獣が出るんだよ」

(親父、それハイキングじゃなくてクエストです)


 そして魔獣、魔獣、魔獣。武者修行よりも超ハードモード。

(「万馬券」もハードモードだったけど)


 取り逃がした、魔獣は親父と師匠で潰し、遠距離はキロンママがしとめる。


 ようやく目的地付近まで辿り着いた。そして、ドラゴンがいた。

(親父、超ウルトラハードモードじゃん)



『誰、この領域に踏み入れ……って、あなたなのね。ようこそいらっしゃい』

『お母ちゃん、精霊使いいるよ。怖いよぅ』

『大丈夫、あの人達は戦わないから』


「久しぶり。ところで、旦那と子供は?」

『子供は巣立っていったわ。ミスリル鉱山に』

「へぇ、そうなんだ」

『この前、お嫁さん連れてきてビックリしたわ、あの子がロリコンだったなんて』

「ロリコン? どのくらい年下?」

『二千歳よ』

(ドラゴン半端ねぇ。っていうか親父、このドラゴンと知り合いなのか?)


『ところで、あなた達に旦那を診てもらいたいの』

「何があったの?」

『ずっと苦しんで、衰弱しているのよ』


 親父と師匠とキロンパパがドラゴンの棲み処へと向かう、何故か俺まで。棲み処に着くと、苦しそうに倒れているドラゴンがいた。


「わかるか?」

「呪いだね、たぶん戦って、やられたのだろう」

「解呪でできるか?」

「一応できるけど、ルシフにやってもらいたい。どのくらいできるか見てみたいからね」


 そう言ってキロンパパがルシフにお願いして、ルシフは笑顔でこたえた。ドラゴンが光輝き、目を覚ました。


『儂は……』


 涙目になっているドラゴンが、


『よかった~』

『あぁ、生きているのか』

『そう、あの人達が助けてくれたの』


 ドラゴンはこちらを向き、


『お主らか、ありがとう』


「あぁ、ところで」

『この前みたいに持っていってくれ、あと人間どもから装備品も奪ったから、それもだな』


 キロンパパがガンガン袋に入れてゆく。

(その袋、どうなっているんですか? 明らかに容量小さいでしょ)


 その後、レジャーシートを敷いて、みんなでお昼ご飯。

(なにげに、凄いんですけど。ドラゴンいるのに、のんきにお昼だなんて)


「楽しかったな、じゃあ帰るか」


『また、来るがよい』

『また、いらしてね』


 下りも魔獣、魔獣、魔獣。おかげでレベルがかなり上がった。


 ◇


「アーク、帰ったら槍の特訓な。先ずは走り込み」

(師匠、勘弁してください。マジで死にます)

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