第18話 サナの思惑

「ねぇ、アーク」

「どうしたの? サナ」

「アーク、アタイ、アークのことが好きなの」

(サナ、目が¥マークになっているよ)


「だからね。結婚してくれれば、アタイの体、好きにしていいよ」

(金目当てだろ、親父と爺ちゃんがけっこう持っているからな)


「ちょっと、サナさん!」

「あら、キロンどうしたの?」

「サナさん、そんなこと軽々しく言うもんじゃないと思います」

「そうなの? ツバつけておくのは、早い方がいいじゃない? アーク、フリーだし」

「えっ」

「早い者勝ちだし、アークはアタイがもらうわ」


 キロンはアークとの仲が気まずくなるのではないかと思い、好意を伝えられずにいた。でも、サナというライバルが現れて、どうすればいいのかと焦る。


「わ、私……」


 サナは、アークの腕に絡みついて、自分の胸を押し付ける。


「そういうことだから、じゃあね~」

「サナ、そんなことより、次のクエストのミーティングしよう」


 俺はキロンとの仲が気まずくなるのではないか、と思ってずっと好意を伝えられずにいた。サナとのやり取りを聞いて、その場を誤魔化すことしかできなかった。


 ◇


「三日後、遠征するから、必要なものを準備しよう」

(そうか、ルシフのことも考えないといけないな)


「アタイ、ドッグレースの情報集めてくるわ」

(サナ、ギャンブルしに行くわけではないぞ)


 キロンはそのやり取りを聞いたあと、遠征に同行したいと、両親に相談した。

もちろんキロンママは反対、キロンパパも仕事があるので同行できない。


〔どうしよう、遠征先でサナさんと既成事実を作られたら……〕


 キロンの目は潤んでいき、アークに告白しようかどうか、悩んでいた。


 ◆


 遠征の前日、キロンパパから声をかけられた。


「どうだい準備の方は?」

「はい、だいたい大丈夫です」

「パーティーの総合力も考えた?」

「いえ、まったく」

「僕はね、近場でレベルアップした方がいいと思うんだ」

「といいますと」

「遠征するより、日帰りでできるクエストを数をこなした方が連携も深まるし良いと考えているからね」

「それもそうですね」

「それにね、重症など何か緊急事態が起こったときに、僕らが動けるしさ」


 結局、今回の遠征は中止にした。


「パパ、ありがとう!!」


 キロンはキロンパパに抱き着いた。


「なんのこと?」


 キロンパパはそう言って、とぼけた。


「ちっ、既成事実さえ作っちまえば、ギャンブルし放題なのに」

(サナ、思っていることが、口に出てるよ)


 ◆


 サナが言った「ちっ、既成事実さえ作っちまえば、ギャンブルし放題なのに」の言葉に爺ちゃんブチギレ。

 孫やその次の代の為に残しておいた金を、ギャンブルに使って浪費する、その思惑が許せなかったと。

 一週間分の宿屋代を渡して、外に放り出した。


 ◆


 三日後


ドンドンドンドン


「はい」

「今夜、泊めて。ギャンブルでスって、お金無いの」


 今度は親父がブチギレ。首ねっこ掴み、敷地の外へ連れだす。そして、キロンパパが敷地内に入らないよう、サナに魔法をかけた。

 こうして「万馬券」は解散となった。


 ◇


「親父、キロンパパって凄いね」

「あぁ、使える魔法も多彩だし、魔法部隊でも一番強いんじゃないかな」

「えっ、そうなの?」

「俺が出会った中では飛び抜けて強いよ」

「親父より強いの?」

「俺が切りつけても、「イージス大盾」で跳ね返され、距離を取られたら勝ち目は無いからな」

「爺ちゃんよりも?」

「前にインフェルノかまされた時も水魔法で防いだからな。それに」

「??」

「おばさんを上手くコントロールしているしな」

(親父、おばさんは禁句です。後ろにいますよ。鬼の形相になっているキロンママが……)

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