第2部 継承編 そしてハードモードに

第15話 アークと幼馴染のキロン

 俺の名前はアーク。冒険者をしている。今日は適性の儀とか何たらを受けにきた。


「アーク、緊張するね」


 そう僕に問いかけたのは幼馴染のキロンだ。彼女はキロンママ(おばさんって言うと滅茶苦茶怒られる)の方針で学園に通っている。


「そうか? 全然緊張しないんだけど」

「えっ、そうなの? 学園でゼミ決めるのにジョブが参考になるから、ドキドキしてるんだけど」

「正直この時間、クエストをして稼ぎたい。パパはお布施したんだろ?」


 昨日、キロンパパは神官様にお布施をしたらしいが、爺ちゃん曰く「ウラガネ」だと。


「えっ! 知らないよ、私」

「まあ、そうだろうな」


 そんなことを喋っていると俺達の番がきた。


「キロン、先行っていいぞ」

「わー、緊張するー」


 キロンが前に行き、神託を受ける。


「キロン、あなたは治癒師です」

「やったー! 治癒師だぁ!」

(キロン、抱き着くと大きい胸が当たる、やめろって。嬉しいけど)


「よかったじゃん! キロン」

「うん! 次はアークだね」


 今度は俺が前に行き、神託を受ける。


「アーク、あなたは剣聖です」

(ん? ケンセイ?)


 俺はキロンのところに行き、


「キロン、ケンセイってわかる?」

「わかんない」

「だよなぁ、親父に聞いてみるか」


 ◆


「ただいま」「ただいまー」

「おう、おかえり、どうだった?」

「爺ちゃん、ケンセイって言われた。なんだか知ってる?」

「知らん。ん? お前、左腕どうしたんだ?」

「昨日、油断してやられた」

「「ハイヒール!」、おめぇよう、早く言えよ」

「かすり傷だから、大丈夫だって」

「膿んだらどうすんだよ、まったく」


 俺の爺ちゃんは、小さい頃からこうやって(妹のアイやキロンのことも)傷を治してくれる。

(酒を呑んだら、どうしようもないけど)


「親父」

「おう、おかえり、どうだった?」

「ケンセイって言われた」

「ん? 騎士じゃなくて?」

「うん、ケンセイって。親父、何だか知ってる?」

「あぁ、知ってる。俺もそうだから。剣士系列のジョブだよ」

「ふーん。そうなんだ」

「ま、わからないなら、剣士って言っておけば、皆に伝わる」

「剣士ね。わかった」

(剣と槍をたくさん訓練してきたし、まぁいいか)


 ◆


 翌日


「親父、俺、武者修行に行こうと思うんだ」

「いいぞ、行ってきな」

(即答か、理由くらい聞けよ。親父)


 気を取り直して、爺ちゃんのとこへ、


「爺ちゃん、俺、武者修行に行こうと思うんだ」

「おう、好きにしな」

(即答か、放任主義だな、爺ちゃん)


 こうして、俺は王都を離れ、武者修行の旅に出た。


 ◆


 とある街のギルドで、運命? の出会いがあった。クエストが終わり、ギルドの食堂で休んでいると。


「あのー、お時間よろしいでしょうか?」


 見るとそこには魔女の恰好の子ががいた。


「大丈夫だよ。どうしたの?」

「ボク、新人の冒険者なんですが、パーティー組んでもらってもいいですか?」

(そうか、前衛いないと、討伐系クエスト、キツイもんな)


「いいよ。俺はアーク、ジョブは剣士だ」

「ボクはヒロ、ジョブは商人です」

(やらかした。即答するんじゃなかった。親父から聞いてたのに)


「そもそも、商人でどうして冒険者なんかに?」

「僕、お金稼ぎたいんです」

(うーん、冒険者の方がリスクが高いような)


「それなら商人やった方がいいんじゃね?」

「商人だと、いろいろしがらみがあって、政略結婚もありえるんです」

(なるほどね)


「でも、何で魔女の恰好してるの?」

「後衛のほうが需要があると思ったからです」

(そんなに頭回転するなら、冒険者じゃなくても大丈夫だよ)


「ギルドカードは? 作った?」

「いいえ、まだです」

「じゃあ、作りに行こう」


 受付に行き、俺はギルドカードの更新、ヒロはギルドカードを作成をした。


 ◆


 翌日


 ギルドに行くと、女に声をかけられた。


「ちょっと、あなたたち」


 よく見ると、昨日お世話になった受付嬢だった。

(何してるんだ? この人?)


「アタイを、あなた達のパーティーに入れてくれないかしら?」

「ん? なんだって?」

「パーティーに入れてよって言ったの!」

「うーん。ここじゃ、なんだから、奥のテーブル席に行こう」


 ヒロと共にテーブル席に向かい、腰をかける。


「アタイはサナ、ジョブは魔女よ」

(何故? ヒロが魔女の恰好なのに来るんだよ)


「アタイの方が、そこのちびっ子より役に立つと思うけど」


 ヒロは本物の魔女が来て、自分が見捨てられるのではないかと不安になっていた。


「どうしてそんなことが言えるの?」

「アタイ、あなたを毎晩癒してあげる、ベッドの上でね」

(それパーティーに入れる意味あんの?)


「それはいいから、どんなレベルの魔法が使えるの?」

「魔法? まったく使えないわ」

(入れる理由が皆無だ)


「帰ろう。ヒロ」

「ちょっと、待ってよ」


 サナに腕を掴まれる。


「そもそも、なんで俺達に声かけたの?」

「昨日、クビになって、困っているのよ。あなたお金持ってるでしょ?」

(ギルドカード見て、判断したな。個人情報だぞ)


「ちなみに、何でクビになったの?」

「ギャンブルでスッて、ギルドのお金で補填したのよ」

(ヤベーな、横領だな。そりゃあクビになるわ)


「まぁ、もうパーティー申請の手続きしてあるからね」

(もう、こいつに関わりたくない)


「勝手に、俺とヒロを入れてパーティー申請したのか?」

「そうよ。パーティー名も決めてある」

「は? どんな風な名前で?」

「『立てばパチンコ、座れば麻雀、歩く姿は馬券買い』ってね」

(こいつ、生粋のギャンブラーじゃん)


 結局、パーティー名が長すぎるので変えることに。

 ヒロはお金持ちになりたい、サナはギャンブル好きなので、パーティー名は「万馬券」となった。

 

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